Windows よもやまばなし

富士ソフトABC株式会社
技術調査室 テクニカル・アナリスト
金井 健
mgicho@fsi.co.jp


 Windowsにまつわる話は、業界に入ってたった7年になる私でも数多く存在する。
 この業界で、Windows 3.0、3.1の開発セミナの講師を担当し、データベースと接続するミドルウエア、C/Sソリューション、プロバイダの営業と短いながらもいろいろなことをやらせてもらっている。その中でWindows以外のOSも使ってきたことも多々あるが、今振り返るとWindows一色であったようにも思える。
 今回はこの記事を書くにあたり、ホームページ作成とモバイルについてお話していこうと思う。

友人のホームページ作成

 先日この業界に入る前からの友人が、突然ホームページが持ちたいと連絡をしてきた。
 得てしてこの業界に勤めると、この辺のリクエストは良くくるものだろう。実際いろんなことは知っていたつもりではあったが、いざホームページを作るとなるとなかなか難しく、生む苦しみというものを実感してしまった。お恥ずかしい限りである。

 素人に簡単で味のあるホームページを作成させて維持させていくことを考えると、何のツールを使わせれば良いか。素人に直接タグを書かせるわけにも行かず、友人宅へ訪れるための準備に1週間もかかってしまった。そして友人宅で実際に行ったことは、なんとWindows 95自体のトラブルシュートであった。トラブルシュートの作業は、友人宅にいる時間のほとんどを費やすほどのもので、ユーザーが使うWindowsの難しさを実感してしまった。自分では簡単で使いやすいものであると思っていたがなかなかそうではないようだ。

 このインターネットブームにWindowsのシステムを買い込んだユーザーは、ホームページを見るまで最短で数日が現状だろう。その友人は2週間以上もかかり、結局自分では接続できなかったという。

 こんな状態でホームページを作るとなると、どれだけの時間がかかるのか想像もつかない状況だった。友人宅へ入り浸ること数日、ようやくホームページはオープンした。友人にホームページの設計からホームページ作成ツール使い方、ファイルのアップの仕方など、教えなければならないことは無数にある。それらの中で最低限必要なものだけを教えてきた。

 ホームページをオープンして2日後、友人からホームページの容量が8MBを超えていると連絡を受けた。作成の際に大きなBITMAPがあったのが気になり、チェックしてみたところ、不要な3MBもあるBITMAPとそれを含んだディレクトリがネストしていた。予測はしていたが友人はディレクトリ、フォルダといった概念がまだつかめておらず、FTPツールではエクスプローラのようにディレクトリ構造が見えないため、このような事態が発生していたようだ。

 本コラムを読まれている皆さまの中でも、このようなことは経験したことはないだろうか。Windowsは使いやすくなったとはいえ、まだまだ難しさは随所にあるように思う。

 「Windows = インターネット」というようなイメージさえもたれている今日この頃、大変なシステムをユーザーは使いこなしていかなければいけない状況をこの友人から学んだようにも思う。一般のユーザーがWindowsとは限らないと思うがインターネットのさまざまなサービスを利用することがどれだけ大変か。今回のホームページ作成の依頼を受けてひしひしと感じた次第だ。

 昨今、Windowsに限らずさまざまなインターネット端末が売られているが、その根本はリモートアクセスの世界であり、数年前ではかなり高度な技術であった。その上インターネットでのデータ転送量は、BBSなどをはるかに凌ぐ。これらをカバーするため、通信速度は高速となり接続環境としてもシビアとなっていく。

 ホームページをオープンすることを考えれば、これらリモート接続した端末からファイルをアップロードする技術が必要となる。さらに、ほとんどのプロバイダがFTPでの接続サービスを提供しているため、いくらツールが普及しているとはいえ、接続してファイルをアップすることはたいへんな作業である。こんなことを言っていては、本当のインターネットの楽しみが遠ざかってしまう気もする。

 最近テレビでインターネットを紹介しているところも多くなってきているので、できればドキュメンタリか何かで、パソコンを買ってからホームページを持つまでの奮闘記なんかをどしどしやって欲しいものだ。

私のモバイル生活

 私がモバイルを始めたのは、ここ数年、プロバイダの営業を始めたころ、PDA (Color ZAURUS)を買い込んで始めたのがきっかけだった。いまではLibretto 70がその後を担っているが、営業マンがモバイルを使いこなすことの優劣感と勉強することでどこでも接続できるテクニックが、営業に最大の効果をもたらすことを確信した。
 客先で接続、必要なデータを取りこみ表示する。この効果は、技術的にご理解いただいているお客さまでも目の前で必要な情報を取り込み表示されると驚きを隠せないようだ。客先で突然出た案件にも即座に必要なデータを取り込み表示できることはその場を盛り上げ、効果も十分といったところだった。

 私が営業マン時代のモバイルキットをご紹介しよう。
   Color ZAURUS + 携帯電話用ケーブル
   Libretto 70
   モデムカード
   PHSカード
   携帯電話カード
   ISDNカード
   LANカード
   10BASE-T(ストレートおよびクロスケーブル)
   COMクロスケーブル

 以上を用意していた。今思えば、万が一を考えPHS用のホームアンテナも良いアイデアと思う。これでほとんどの場合モバイルが可能だろう。COMのクロスケーブルは、私の営業先に設置したルータなどがトラブルを発生しても、いつでも対応できるように用意していたアイテムである。技術的には、技術スタッフの電話リモート作業が多かったが、このお陰でいくつも案件を取ることができた。
 モバイルでの接続実績は、携帯電話を使って新幹線の時速250km以上の区間から、メールの送受信を行ったこともある。こんなに急いでどうすると思われるが、良い営業ネタとなった。ここで私が考えたどこでも接続できる携帯端末を使ったモバイルでのコツをお教えしよう。
 端末はどんなに感度がよくても立てて使う。PHSでは数センチの移動が接続不可を招くことがある。ひどい場合は話をしている相手の動作や側を通る人影でも接続が切れることがあった。こんなことに注意しながらモバイルすれば、思いのほかいろんなところで接続が出来ると思う。些細なことで接続性が向上できたので皆さんも是非試してみてはいかがだろう。

 ホームページ作成に関してこの業界にいるといろんな知識は豊富に入ってくると思うが、それを活かしてまずホームページをオープンすることをお勧めする。どんなページでもその人の味が出てくると思うし、ユーザーの大変さも実感できると思う。
 携帯電話やPHSでモバイルをされる方は、毎月の電話代のお知らせとともに送られる通話エリアを確認されてはいかがか。最近地下街や高速道路のトンネルなどもサポートされてきているので、思わぬところでモバイルできるかもしれない。寒い季節が始まったが、こんなことを知っていると暖かい地下街や喫茶店でもメールチェックができるかもしれない。


今月のトピックス

富士ソフトABC株式会社
技術調査室 室長 山本 淳
yamamoto@fsi.co.jp



 11月中旬から相次いでキーテクノロジーのカンファレンスが開催された。11月24・25日の「Microsoft Windows NT Deployment Conference」、11月30日の「Microsoft Exchange Conference 98」、12月1〜3日には「Windows DNA Conference 98」、12月2・3日は「Visual C++ Developer Conference Japan II」といったところである。さらに全国各地で「Microsoft Community 1998 Winter」が開催されているし、12月16・17日には「Oracle Open World 1998 Japan」も予定されている。

 これらに共通しているのは、来る1999年に向けた各社のコアテクノロジーを紹介し、SQL Server 7.0、Oracle 8i、Office 2000、そしてWindows 2000の製品出荷と同時に、これらに対応したアプリケーションやソリューションを数多く登場させたい思惑が隠されている。ほかにもAOL社のNetscape社買収にサン・マイクロシステムズが一枚かんでいると言われているし、JDK 1.2と呼ばれていたJava 2も発表された。99年1月中旬には米国で「Lotusphere 1999」が開催され、Lotus Notes/Domino R5.0への準備を促すことになる。日本でも3月には「Business Applications Conference 1999 Japan」の開催も予定され、まさに最新技術が百花乱舞の状態である。

 一部の企業ユーザー向け雑誌に「バージョンアップの必要性」について疑問を投げかける記事が掲載されていたが、まったくもってこうした新しい技術への対応や製品のバージョンアップには大きな労力を必要とする。アプリケーション開発者にとっても、最新テクノロジーに対する対応の必要性に疑問を持ちながらも、仕方なく列に連なっている場合が多い。

 業界を見回してみても、2000年問題に対する対応から新しいハードウェアの購入意欲が高まっていることもあり、ソフトウェアの改修などのサービスを提供するプロバイダーの業績は好調に推移している。有料セミナーの受講者も徐々にではあるが底を打った感があり、必要な情報化投資には費用を惜しまない姿勢が見られるようになってきた。

 こうした状況の中で新しい年に向けて、さまざまなコア製品の登場を睨みながら、準備を進め始めているユーザーや開発ベンダーの中には、その情報量の多さに閉口している場合が増えてきている気がする。馬車馬のように尻を叩かれながらシステム構築や開発を進めるものの、本当に必要な技術に対する対応の必要性を見出せないがある。

 最近の流行として、インターネット技術に対する対応やその派生技術の応用に見られる技術のトレンドは、各社それほど差がないと思える。例えばWebブラウザとアプリケーションサーバー、データベースといった3階層構造のシステム構築については、表面上のアプローチに違いがあるものの、マイクロソフトのWindows DNAアーキテクチャの専売特許ではなく、IBM/ロータスもオラクルもサン・マイクロシステムズも同じような構想を描いている。それらを使うユーザーにとってはどうでもいい話で、期待する動きをしてくれるシステムが、安定性があり、安い費用で構築でき、メンテナンス性に優れていれば、中身を気にする必要はないといえる。

 最近急に注目を浴びているLinuxなどのオープン・ソースについては、Javaが同じようなアプローチを取ると表明したことから見ても、一つのトレンドとなってきている。ただしユーザーサポートに対するサービスの問題など、クリアしなければいけない課題も多く、今後の流れの中でどこまで市場を獲得するか、あるいはそこから売上や収益を上げることができるか注目していかなければならない。

 1999年のWindowsを取り巻く状況を予測すると、マイクロソフト的に考えればSQL Server 7.0、Office 2000といった企業ユーザー向けの戦略製品を投入しながら、Windows 2000導入に向けた地ならしを固めていくことになるだろう。ユーザーサイドから見れば、すでに情報的には十分すぎるほどアナウンスされていると思われるが、まだまだその実態はベータ版のレベルから考えても出荷時期がはっきりせず、導入予定企業も二の足を踏まざるを得ない状況ではある。

 PCの2000年問題に関して、最新OSだから大丈夫と見られていたWindows 98ですら「些細な問題」が10数件報告され、日本語版の対応モジュールは99年1月末までに投入される予定になっている。最新OSですらこの調子では、Windows 3.xやNT 3.51/4.0はもちろん、Officeアプリケーションや開発ツールなど、さまざまなレベルで検証を進めていかなければならないと考えられている。こうした状況も新しいOSやソフトウェアを導入するきっかけになる反面、その作業量に追いまくられてWindows 2000への準備が進まない可能性が高い。実際のところいくつかのアンケート調査では、Windows 2000の本格導入のピークは2000年になってからと予想が多い。

 こうしたさまざまな要素を噛み締めならが、1998年は暮れていこうとしている。きっと1999年も忙しい一年になることだろう。膨大な情報を整理し、的確に対応していく判断力を高めることがますます重要になってくると考えられる。



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