Windows よもやまばなし

富士ソフトABC株式会社
厚木事業所技術調査グループ
課長 原田 哲夫
tharada@fsi.co.jp


Windowsに期待すること



 私はこれまでにさまざまなパソコンを使用してきました。約20年前にワンボードマイコンを購入したのが最初のパソコンになります。当時は4Kのメモリを拡張す為にアルバイトを行って資金を調達しなければなりませんでした。作成したプログラムを保存するにも家庭用のオーディオテープを使用して保存したものです。雑誌についているBasic(現在ではCDで配布していますが、当時はソノシートでの配布でした)をテープにダビングし読み込ませ、マシンコードを直接入力してBasicやTiny Fortranを稼動させていました。

 入社した当時には、カラーディスプレイを接続しBasicがROMで標準搭載されたものが出ています。本体購入が精一杯でディスプレイはオンボードマイコンに接続していたグリーン表示のものを接続して使用しています。当時接続したFDDは5インチ片面のもので、カセットテープからFDに変わった時には高速で、取り扱いもやさしく重宝しました。

 約20年の間に、10数台のパソコンを使用した勘定になります。1〜2年程度での買い替えの頻度です。機能の多少の変化では新規購入をしていないので、1年程度の間に、新しい周辺機器の登場や、新しいデバイスの登場といった進歩が行われてきたことになります。

 ハードウェアが進歩している間にソフトウェアも当然のように進歩しています。当初はあたりまえのようについていたBasicがいまではWindowsを搭載しての販売となり、OSとして何を使用するかといった自由度も失われているようにさえ思えます。MS-DOSやCP/M、FLEXのようにさまざまなOSが登場していますが、GUIの登場が変化の中では一番大きな変化だと思います。文字でコマンドを入力していたものから、マウスでダブルクリックすれば思いのままに操作ができる環境に変化したわけです。

 Appleから発表されたLisaの姿を雑誌の写真で見たときの驚き、Macintoshの登場時Mac同士をApple Talkで結び、購入した直後から、ネットワークの使用ができると言った斬新な仕様には驚きました。

 WindowsはWindows 95でネットワークをOS上で扱うことが可能になっています。しかし、このネットワークの設定がなかなか難しくエンドユーザーでのトラブルもネットワーク設定に関するものが多いのも事実です。Plug & Playにより機器設定も容易にはなってきていますが、まだ容易に扱えるというものでは無い様です。

 最近もネットワーク導入を初めて実施されたお客様で、これまでWindowsに触ったことのないお客様で次のようなことがありました。 「サーバにログオンできないのですが?」といった質問の電話が朝一番に入ってきました。状況を確認するとネットワークにログオンするためのプログラムが見つからないとメッセージが表示されているとのことです。そこで、検索機能を使用してそのプログラムを探していただくと、インストールを行ったものとはまったく異なるディレクトリにプログラムが移動されていることが判りました。GUIの操作に不慣れで、エクスプローラで何か他のファイルをコピーする際にうっかりディレクトリの移動を行われたようです。 MS-DOSを使用されていた時には自分自身が意図してコマンドを入力しコピーをしていましたが、GUIの環境ではうっかり操作でファイルの移動も行われてしまいます。この場合ではディレクトリの移動だけでしたので、基の位置に移動することで復旧することができました。これが削除されていたらと思うとぞっとします。GUIが標準になり、便利になった反面、意図していないことが「うっかり」した操作で行われてしまうことも事実です。

 便利になったものにインターネットの登場があります。自分の席に居ながらにして、さまざまな情報を得ることができます。これまで、ネットワークの構築を行うための機器構成を行うためには、さまざまなメーカーの資料を机上に置き、その資料をめくりながら設計や見積を行っていましたが、資料が古かったり価格が変更になっていたりといったことが発生していました。しかし、インターネットを利用して各社が比較的最新の情報を公開していただけるため、このような手間がかからなくなってきています。GUI環境で複数の画面を開き、一方で見積書、別の窓ではインターネットによる資料の表示、また別の窓では機器構成の提案書の作成といった、連携した作業が可能になってきています。DOSを使用していた頃とは比較になりません。構成に疑問が発生すればE-Mailでメーカーの窓口に問い合わせすれば回答を得られます。インターネットにアクセスできなければ、作業にならないといった面も発生しています。このような環境になれてしまった今では、昔のDOS環境(1アプリケーションの実行を終了しなければ、他の作業に移れない)に戻ることはできなくなっています。

 でもこれが万能の姿なのでしょうか?ちょっと違うように思えます。GUIでのデータエントリを行ってみると、GUIの画面で作成した見た目の立派なアプリケーションよりも昔のCUIの画面でのデータエントリの方がずっと効率よく作業ができるように思えます。ユーザーのインターフェイスは環境にあった選択が必要です。現在のWindowsではDOS窓を利用してCUIのツールを実行可能ですが、今後DOS窓がなくなっていった場合にデータエントリのようなスピードを重視しキーボードのみで実行可能(マウス操作の不要な実行環境)な部分が必要になってくるのではないでしょうか?

 私はWindowsが万能で有るとは思いません。しかし、便利なものであることは事実です。最近ではWindows CEを使用すれば電車での移動中に簡単な仕事を行うことも可能になってきています。この原稿も部分的にはCEを使用して移動中の電車の中で書いています。小型化され、どこでもオフィスとなり得る可能性をもった道具だと思います。携帯電話を使用したモバイル環境、これも、20年前から考えると大きな進歩です。

 WindowsもNT5.0がWindows 2000として99年に出荷予定との記事を読みました。

 これからもいろいろな新しい技術を統合して新しいハードウェアやソフトウェアが開発されていくと思います。新しい試みも取り入れられていくと思います。さまざまな進歩を期待しております。


今月のトピックス

富士ソフトABC株式会社
技術調査室 室長 山本 淳
yamamoto@fsi.co.jp



●PDC 98 その後

 前回の連載では98年10月に米国デンバーで開催されたMicrosoft Professional Conference 1998 (PDC 98)について米国から生の情報を速報し、発表から1年あまりが経過したWindows DNAアーキテクチャの進化について概要を説明した。97年9月のPDC 97ではWindows DNAアーキテクチャの発表はもちろん、Windows NT 5.0 Beta 1の配布、COM+の発表など、開発者にとっての大きなトピックが目白押しだった。しかし今回は、Windows NT 5.0の出荷遅延の影響からとくに目玉といえるネタはなく、Windows NT 5.0 Beta 2にプレビューコードが実装されたCOM+に関して、詳細な説明と開発キットの配布、Visual C++ Technology Preview版の提供などが話題になっただけだった。

 最近マイクロソフトは、Digital Nervous System構想をよく口にする。近年の技術の発展は急速で、それに増して人間に波及していく速度も急速である。交通や通信など人間の身体の動きを代替する多くの発明があるが、人間の脳の延長ともいえるコンピュータの発明は、今までになく最も画期的な出来事であるとし、ビジネスでの問題解決においてパソコンで何ができるかをテーマにまとめあげたコンセプトである。インターネットと統合された環境の中で、さまざまなプラットフォームとの互換性を持った高機能なアプリケーションが提供され、単純な定型作業から解放された新しいタイプのナレッジ・ワーカーが生まれてくるインフラをDigital Nervous Systemと呼び、企業は社員の豊かな才能の下、顧客に対する訴求力を高める新しい情報手段を入手できる。98年9月には米国ネバダ州ラスベガスでBusiness Applications Conference 1998 (BAC 98)を開催し、今後の企業システムの方向性を明らかにしたが、経営・物流・ナレッジマネージメントなど一連の企業活動を人間の身体の働きに当てはめ、コンピュータシステムとネットワークという「神経」(Nervous)を通して有機的に統合するコンセプトは、クライアント・サーバー型とインターネット型の双方のいいところだけを利用した新しい形の企業システムのソリューションである。そしてDigital Nervous Systemを現実のものにするのがWindows DNA アーキテクチャであると位置付けている。Windows DNA アーキテクチャは、あくまでアプリケーションやコンポーネント、企業システムを構築する開発者に向けたコンセプトである。コンポーネントの組み合わせで実現するWindows DNA アーキテクチャでは、システムで利用しているコンポーネントを変更するだけでシステムのバージョンアップが実現でき、コンポーネントの再利用性を高めることでシステムの開発工程を短縮できる。

 Windows DNA アーキテクチャを支える3階層は、プレゼンテーションサービス、コンポーネントサービス、データサービスと整理され、それぞれ将来的にはForms+、COM+、Storage+という3つの製品技術に統合される。COM+はすでにプレビューコードまで用意されているが、Forms+とStorage+はBAC 98でも予告されていたものの、その詳細についてはPDC 98でも詳しく説明されずに期待外れに終わった。Forms+はHTML技術をベースに利用しやすいWindowsインターフェースを提供するための技術と解説され、99年にリリースされる予定のOffice 2000、FrontPage 2000、日本では99年初頭からOEMメーカーを通じて提供されるPCのみ搭載される"Chromeffects"技術など、HTML、XML、2D/3Dグラフィックスなどを統合した技術と予想される。Storage+は実現までには時間がかかると予想されているが、Webデータやデータベース・テーブル、コンフィグレーション、コンポーネントなどさまざまな異種データストアを共通のユーザーインターフェースを通してアクセスできる構造を構築できる「ユニバーサルデータアクセス」の進化版であると説明されている。将来的にWindows DNA アーキテクチャのForms+、COM+、Storage+として整理される技術の中で、PDC 97で発表され現実的に提供されているものはまだまだ全体のごく一部であり、今後さまざまな技術が投入されていく。

 PDC 98でCOM+とともに人気が高かったのが、XML関連のセッションである。HTMLの拡張言語であるXML (Extensible Markup Language)は現在非常に注目されている技術で、マイクロソフトだけでなくほかの多くのベンダーが相互互換技術の一つとしてサポートを表明している。マイクロソフトは、99年初頭にリリースを予定しているInternet Explorer (IE) 5.0とそれに続くWindowsの将来バージョンで、標準化されたXML 1.0、XSL (Extensible Style Language)、XML DOM (Document Object Model)、XML Namespacesなどの多くの新しいXML技術を最大限サポートしていくと表明した。開発者はXML技術を利用して、アプリケーションやコンポーネント間でやり取りされるデータの読み書きと操作方法を簡単に開発できるようになる。XMLを単にHTMLに比べて表現力豊なプレゼンテーション言語としてとらえるだけではなく、データとオブジェクトを結合する役割を担わせようとしている。さらにサーバーサイドで動作するXMLも用意し、分散された多くのアプリケーションや異種OS間の標準的なデータ交換手段として利用する。将来版のVisual StudioやOffice、BackOfficeなどにおいてもXML技術が標準でサポートされ、開発者はこれまで独自の文書フォーマットなどに苦しめられてきたが、相互運用性を簡単に得られるようになる。余談だが、前述した"Chromeffects"技術のSDKを利用すると、XMLを利用して簡単に表現力豊なグラフィックオブジェクトをWebブラウザの中に表示できるようになる。XML技術のある側面を理解する上では非常に興味深いものなので、ぜひ入手された方がいいだろう。

 マイクロソフトが用意するOffice/BackOfficeも統合アプリケーション開発プラットフォームとして位置付けられている。現状のOffice 97は99年初頭にOffice 2000として生まれ変わる。これまでの独自インターフェース、独自文書フォーマットだけでなく、業界標準のさまざまな技術を統合し、Web対応アプリケーションの側面も持つようになる。XML技術を有効に利用して、さまざまなニーズに応えられるアプリケーションになっていく。BackOfficeは現状の4.0からSQL Server 7.0を組み込んだBackOffice 4.5、Windows NT 5.0を組み込んだBackOffice 5.0と進化し、さらにWindows NT 5.0対応のExchange ServerなどNT 5 Waveと呼ばれた一連のバージョンアップが予定されている。OfficeとBackOfficeは緊密な関係を持ったパッケージとして提供され、さらにその上に企業システムを簡単に構築できる統合開発プラットフォームとしての意味も持たせていく。アプリケーション開発に求められる柔軟性やスケーラビリティ、相互運用性を実現できるようになる。

●その後のニュース

 Windows NT 5.0の正式な製品名がWindows 2000シリーズと決まったり、PDC 98でもいくつかのセッションで解説されていた組み込み型のWindows NTに関してWindows NT Embedded 4.0の発表があったり、新しいSmart Cards for Windowsがアナウンスされたりと、1999年から2000年にかけてのマイクロソフトのWindows戦略について新たな動きが明らかになっている。
 Windows 2000シリーズに関しては、Windows NT WorkstationがWindows 2000 Professional、Windows NT ServerがWindows 2000 Server、Windows NT Server, Enterprise EditionがWindows 2000 Advanced Serverと表現され、さらにその上に大規模用途向けのWindows 2000 Datacenter Serverが提供される。このバージョンでは、最大16CPUのSMPシステムと最大64GBの物理メモリがサポートされる。Windows 2000シリーズではOffice 2000シリーズと同様に、これまでの"〜 Edition"という表記はなくなっている。またWindows 2000 Standardが告知されていないことについては、Windows 98の後継OSとして予定されているコンシューマ向けWindowsがWindows 9xアーキテクチャではなく、Windows NTかWindows CEをベースに考えられていることから、その登場によって命名されると予想されている。

 Office 2000シリーズについても、限定ベータテスター向けのTechnical Beta 1に続いて、Beta 2版の配布が準備されている。販売店向けのPreview Forumもすでに開催された。99年第2四半期以降に出荷が予定されているが、それまでに企業ユーザーに向けて購入意欲を高揚させるさまざまな準備が進んでいる。Office 2000 Standard, Small Business, Professional, Developer, Premiumの各製品には、Word 2000、Excel 2000、Access 2000、PowerPoint 2000、Outlook 2000などこれまでのOffice製品ばかりでなく、PhotoDraw 2000、FrontPage 2000などが搭載される。

●マイクロソフトのイベント

・Windows NT Deployment Conference (11月24・25日)
 http://www.asia.microsoft.com/japan/developer/events/NTDC/
・Exchange Conference 1998 (11月30日)
 http://www.asia.microsoft.com/japan/bkoffice/Exchange/conference98/
・Windows DNA Conference 98 (12月1〜3日)
 http://www.windnac.co.jp/
・Microsoft Community Briefing (11月下旬から日本各地で)
 http://www.asia.microsoft.com/japan/community/

 ひとまずマイクロソフトは99年初頭から、SQL Server 7.0、Office 2000、Windows 2000を順次投入し、大攻勢をかける意気込みのようである。



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