最新Windowsソフトウェア事情(第43回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp



ダラスに何を見た−JFK暗殺事件のなぞ

この夏、念願の甲斐駒ケ岳(2967m)に登頂の高橋顧問


 コンピュータ展示会/セミナーというとすぐにラスベガスのCOMDEXがあげられる。たしかに、この10数年、かかさずラスベガスに出かけているが、最近は時差を押しての旅がきつくなり、今年はもうやめようと思っているところだ。それはともかく、ラスベガスだけでなく、ニューヨーク、アトランタ、シカゴそしてダラスなどもよく展示会が開かれる。Windows Viewを読むと松倉会長も最近、ダラスにいらしたことがあるようである。松倉会長はダラスで何を見てこられただろうか。ダラスはテキサス州第一の大都会であるが、あまり見るものはない。食べ物は厚さ10センチはあろうかというステーキが有名であり、たしかに私の友人が特製のカーボーイステーキに挑戦したところ、出てきたステーキが立方体風で、横に切っても縦に切ってもあまり違わない驚くような大きさであった。5分の1も食べることができず、十分に味わうどころか、仲間のカメラの被写体になったのが唯一の役割であった。

 ダラス市観光の定番の一つ(最大の観光スポット?)に1963年のケネディ大統領暗殺の地がある。暗殺が起こった日は日本で衛星放送が始まった日であり、その記念の画像が米国から届くということで私も興味をもって見ていた。その最初の番組が暗殺事件の速報であったという歴史的な事件であり、私の個人的な記憶にもはっきりと残っている。暗殺現場(町のど真ん中の公園前をパレード中に狙撃された。現場には記念碑が建っている)と、狙撃が行われたといわれる教科書会社のビルが観光スポットとなっている。

図1                          図2

 今回のソフト紹介を何にしようかと思ったときにふとケネディ暗殺事件が浮かんだのは、最近、DVDプレーヤを購入し、夏休みに楽しむつもりで購入したDVDソフトの一つにオリバーストーン監督、ケビンコスナー主演の話題作、「JFK特別版」があったからである。パソコンソフトへと話がつながるかどうか分からないが、まずはDVDソフトから見てみよう。といっても残念ながら私のノートブックパソコンは直接、DVDソフトをプレイすることはできない。図 1はパソコンの側においたポータブルなDVDプレーヤである。この最近購入したプレーヤのビデオアウトをノートブックパソコンのビデオキャプチャーカードに接続して画面上でプレイすると図 2のようにワープロ画面上でビデオを楽しむことができる。このPCカードは東芝から発売されているNotebookTV95である。この他にもMPEGキャプチャーカードなど、マルチメディア関連のPCカードも何種類か揃えている。

DVDといえば私が現在利用しているDellのノートブックパソコンの最新機種にはDVDドライブとMPEG2エンコーダカードがついた機種も見られるようになった。これならノートブックパソコンの画面上でスムーズな動画でDVDソフトを楽しむことができる。私のパソコンは今年1月に購入したものだが、そろそろ買い替えの時期なのだろうか?半年ももたないなんて、どうなっているのだろう!ケネディ暗殺事件は1963年のことであるから30年以上前のことになってしまった。年月の経つことの速さにあらためて驚かされる。

図3                          図4

 事件そのものはいまでも記憶に鮮明であるが、事件の詳細は忘れかけている。そうしたときはすぐに電子百科事典をひもどくことはいうまでもない。図 3はエンカルタ上で事件の概要を調べたところだ。図には教科書会社の写真も載っている。また、ダラス市へのリンクもはられているので、ためしにダラス市を見てみると図 4のように、ダラス市の概要や市街図を参照できる。また、今回のDVDソフトの監督、ケビンコスナーについても百科事典を検索してみると、その解説の中には「プロデュースや監督にも意欲をもやし、自ら製作会社を設立、オライオン・ピクチャーズ・コーポレーションと協力して、上映時間3時間にわたる野心作「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(1990年)を封切った。これは南北戦争時代の兵士とスー族の人々の物語で、商業的にも予想以上に成功し、作品賞と監督賞をふくむ7つのアカデミー賞を受賞した。1991年に封切られた2本の映画、「ロビン・フッド」と、ケネディ大統領の暗殺をあつかった「JFK」もまた好評であった。」という説明がみられた。このように電子百科事典が日常的なツールになっていることが実感できる。

 さて、映画「JFK」(実際には小説「JFK」、ヤハカワ文庫にもとづいている)は暗殺の調査を行った政府のウオーレン委員会の「オズワルド単独犯行説」に真っ向から対決する、事件の真相に迫る迫真のドキュメンタリータッチのドラマとなっており、3時間を超える長い映画だが、時間のたつのを忘れさせる。ウオーレン委員会の調査報告とはどんなものだったのだろうか。また、映画でもその中心テーマとなった「ミラクルショット」とは実際にはどのようなものであったのだろうか。映画の場面を思い出すだけではよく分からない。そうしたときに、かつてよく見たCD-ROMソフト「JFK Assassination(Medio社)」のことを思い出した。ここでミラクルショットとは、ウオーレン委員会の解釈のように、もし一人の狙撃者が撃った一発の銃弾によって3人が肩や腰などそれぞれの部位に傷を受けたというなら、同じ一発の銃弾が3人の体を行きつ戻りつしたとしか考えようがない、つまりそんな銃弾は奇跡の銃弾としか解釈できない、やはり複数の狙撃者の複数の銃弾によって被弾したと考えなければならないということでる。

図5
 図 5はDVDおよびパソコンソフトのJFKをパッケージとともに並べて撮った写真である。すでに600本を超え、Excelで管理しているCD-ROMソフトのコレクションの中から目的のソフトを探し出して起動してみた。

図6                          図7

 JFKには図 6のメインメニューに示されているように、事件の概要、現場としてのデアリー広場、事件の生々しいビデオフィルム、狙撃の真実を求めた分析、そしてウオーレン報告書や「陰謀説」などの報告書テキストが収録されている。これは単なるCD-ROMソフトというよりは貴重な歴史的なデータベースといってよい。こうしたコンテンツソフトを見るにつけて英語版ソフトの奥行きの深さをあらためて実感させられる。メインメニューからまず、Introをクリックしてみると図 7のように、ダラス空港に到着したケネディ夫妻がやがてパレードに移り、暗殺現場となったデアリー広場へとさしかかり、数発の凶弾に倒れ、そのショックな事件が世界にながれ、やがてホワイトハウスへと向かう機上でジョンソン副大統領が大統領宣言をするビデオ画面が時間を追って流れてくる。この部分を見るだけでも当時の事件がリアルに思い出される。

図8                          図9

 まずはDVDにならって真相の分析へと進もう。メニューからAnalysisを選択すると図 8のように、ウオーレン委員会の分析、映画JFKのもとになっている「陰謀説」そして上院委員会の分析がリストされる。それぞれ、分析の詳細とアニメーションを使った銃撃の再現など、じつに興味深い内容となっている。こうしたコンテンツはどのようにして市販のCD-ROMソフトに収録できたのか、不思議に思われるほどだ。図 9はウオーレン委員会の分析をアニメーションで再現した結果である。画面上段の数字はビデオの駒送りの番号で状況をあらわしているものであり、そのもとになっているのは現場で偶然に撮影された数種類の貴重なビデオフィルムである(先日、その一つの売買の話が新聞に報道された。売り手の言い値が数百万ドルであったのには驚かされた)。また、うまく画面ショットできなかったが、もっとも重要な銃撃の場面では弾丸の弾筋が画面上に流れる。画面ではまた、右側の教科書会社とデアリー広場の空間の中でそれぞれの角度から見た現場や証言などがリンクされている。

図10                          図11

 今度はメニューからFilm&Photosを選択し、事件現場の貴重なビデオや写真を見てみよう。図 10はそのメニューであり、そこには事件の前後、Nix, Hughes, ZapruderそしてMuchmoreの4人が偶然に撮影したビデオフィルムや関連した写真が収録されている。それらの貴重なビデオフィルムの中でたとえば、Muchmoreフィルムを再生してみると図 11のようにビデオ動画が表示された。動きとして見せることができないのは残念だが、購入すれば数百万ドルの貴重なフィルムである。画面下段には再生にあたっての画面のサイズや速度の設定ボタンが用意されている。また、Factsボタンをクリックすると関連して情報が表示される。

図12                          図13

図14
 写真集にも膨大な写真と関連情報が収録されている。図 12のメニューからたとえばオズワルド関連の写真を表示させてみると図 13のように、19歳、海兵隊時代のオズワルドの写真が表示された。画面上段のスクロールボタンでさまざまな写真を次々に表示できる。同様にしてケネディ大統領の写真の例も図 14に示しておこう。現在のクリントン大統領同様、いろいろなスキャンダルがあって理想像には遠かったかもしれないが、日本の首相と比べたときに、ケネディはやはり大きな魅力をもっていたといえよう。

図15                          図16

図17
 さて、いよいよ現場のデアリー広場に行ってみよう。メインメニューから「Dealey Plaza」を選択すると図 15のようなメニューが表示された。ここには目撃者のマップやデアリー広場そのものに関する詳細な情報が収録されている。たとえば、目撃者マップを選択してみると、驚くことに図 16のように偶然現場に居合わせてそれぞれの角度から狙撃を目撃した14人について、そのリストと現場の位置関係が図示された。目撃者をあらわす各番号をクリックすると目撃内容が表示される。こうした情報がどのようにして市販のCD-ROMソフトに収録されたのか(誰が許可したのか)、このあたりに米国の情報公開の現状が実証されているように感じられる。ためしに10番の目撃者Emmet Hudsonを選択してみると、彼は図 17の右下の写真の位置におり、その証言内容は下段のテキスト欄に示されている通りである。こうした情報が各目撃者ごとに与えられているのである。

図18                          図19

図20
 ケネディ暗殺事件についての調査は上院の調査委員会、ウオーレン委員会そして「陰謀説」とあったようである。このCD-ROMにはウオーレン委員会の報告書を含めて3冊の文献が収録されている。メインメニューの「Text」をクリックすることで、図 18のような文献メニューが表示される。この「ジム・ギャリソン著 JFKケネディ暗殺犯を追え」(ハヤカワ文庫)が映画JFKのもととなっている。夏休みの読書計画の中に含めて、いずれ、書籍の内容も紹介したいと思う。いま、たとえばウオーレン委員会のレポートを選択してみると図 19のような目次がリストされた。画像は鮮明でないのでわかりにくいかもしれないが、そこには「第3章 教科書会社からの狙撃」もある。ここにウオーレン委員会の調査の核心が含まれているのだろう。また、第4章は「暗殺」とある。実際の内容は図 20のように、テキストと、ところどころに関連した情報がリンクされた形で構成されている。これまたじっくり読んでみたいレポートである。

図21                          図22


図23                          図24

 「陰謀説」のもとになっている書籍「Crossfire」の目次を表示させてみると図 21になる。ここでは「93年11月22日、デアリー広場」の章で事件の詳細が検証されているのだろう。実際のテキスト内容はたとえば、図 22のようになっている。狙撃の直前、パレードが広場の前にさしかったその瞬間の状況が綿密に描かれているようである。この「陰謀説」はメインメニューの「Overview(事件概要)」の中にも含まれている。図 23はそのメニュー画面であり、ここから「Conspiracy Theories」を選択してみると図 24のように、たとえば、ケネディを打ち抜いた銃弾がどのような経路からどのような傷(弾の入り口と出口)を作ったのか、検死のさいの図まで含めてじつに生々しい分析となっている。映画JFKでも狙撃直後の検死がどのよう行われたのか、それが事件の重要な背景になっているといったストーリが描かれており、映画とあわせてこのCD-ROMを読むとじつに興味深いものとなる。

 今回は夏休みであることから、図版中心(コンテンツ中心)の紹介となってしまった。JFK暗殺事件にともなう疑惑はまだ完全に解明されたわけでなく、ミステリーも多く含まれている。大学時代(わが青春時代)のショッキングな事件をあらためて再読した次第である。

(麗澤大学 国際経済学部 教授 高橋 三雄 http://www.fsinet.or.jp/~kaikoma/)



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