最新技術動向 ここが見所、さわり所

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



 まず先月号でも紹介した12月に開催されたマイクロソフト関連のイベントのトピックスに触れておく。

● Microsoft Professional Developers Conference 1997 Tokyo
 9月に米国で開催された「Microsoft PDC」の日本版として開催された2日間のイベントで、約850名の開発技術者が出席したという。98年に向けた各種技術情報が提供され、とくにWindows DNA、Windows NT 5.0などが話題の中心になっている。
 10月末に限定ユーザーに配布された「Windows NT 5.0 日本語版 Beta 1」のServer版とWorkstation版のCD-ROMをはじめとした開発ツールなどのベータ版が配布されている。米国で配布が開始されたWindows 98の公開ベータ版の日本語版は後日送付されることになっている。

・CD-ROM「Microsoft PDC 1997 Tokyo Conference CD」
・CD-ROM「Microsoft Windows NT Server 5.0 Beta 1 日本語版」
・CD-ROM「Microsoft Windows NT Workstation 5.0 Beta 1 日本語版」
・CD-ROM「Microsoft Platform SDK」
・CD-ROM「Microsoft Windows CE Toolkit for Visual Basic 5.0 Beta 1 & for Visual C++ 5.0 Beta 1 英語版」
・CD-ROM「Microsoft Visual Studio 97 Service Pack 3」
・CD-ROM「Microsoft Visual C++ 5.0 Technology Preview Beta 日本語版」
・CD-ROM「MSDN Library日本語版プレビュー Vol.2」

 機密保持契約が生きているため、まだWindows NT 5.0の詳細機能について語ることはできないが、すでに一部の雑誌などで流されているようにWindows 98のスーパーセットとして、これまでWindows NT 4.0とWindows 95との間にあった機能的な違いが埋められ、Windows 98でサポートされるすべての機能がWindows NT 5.0で提供される。現状のBeta 1版ではまだサポートされていない機能も数多くあるが、来年4月か5月に提供されるBeta 2版、来年の後半に出荷される予定の製品版が楽しみである。

 開発者に向けては、Windows NT 5.0とWindows 98用の開発のベースとなるPlatform SDK、Windows CE用のVisual C++とVisual Basicの英語版アドインキット、Visual C++ 5.0をベースにWindows DNAなどの次期開発ツールをプレビューするCD-ROMが配布された。すでに次期ビジュアル開発ツールであるVisual Studio 98の日本語Beta 1版が一部の限定ベータテスターに配布され始めている。

 
● Microsoft Exchange Conference 97
 こちらも9月に米国で開催された「Microsoft Exchange Conference 97」の日本版で、11月末に発売されたExchange Server 5.5の話を中心に約800名のベンダー技術者およびエンドユーザーが参加した。

・CD-ROM「Microsoft Exchange Server 5.5 日本語評価版」
・CD-ROM「Microsoft Project 98 マーケティングベータ版」
・CD-ROM「Microsoft BackOffice Small Business Server 4.0 プレベータ版」

 製品サイクルが早すぎて、とくにエンドユーザーには戸惑いも見られるが、ライバル製品であるLotus Notes DominoもR4.6にバージョンアップして、インターネット技術やJava技術に特化してきていることを考えると、グループウェア製品・メッセージングプラットフォームの環境も大きな曲がり角にきているのかもしれない。
 そういえば話はそれるがロータス関係者から伝え聞くところによると、Lotus Notes Dominoのライセンス体系が来年春に更新されるらしい。これまでのDominoサーバーとNotesクライアントのインストール数をベースにしたライセンス体系から、サーバーへの公開アドレス帳への登録数によるアクセスライセンス体系に変更されるようである。これはインターネット技術へのシフトに伴って、Internet ExplorerやNetscape NavigatorなどのWebブラウザを通した利用頻度が飛躍的に増え、インストールベースのライセンスではお金が取れなくなってきていることが原因のようである。詳しくは年明け早々にもアナウンスされるようで、Notesクライアントへの依存を減らし、Webブラウザを前面に出したソリューションを展開した上で、バックエンドでDominoサーバーを動作させる環境を提供していくようになる。
 合わせて中小企業への展開を重視するようで、マイクロソフトのBackOffice Small Business Serverの投入とともに、25〜100ユーザー程度の企業や部門サーバーへのビジネス展開が激化するようになっていく。

 カンファレンスで印象的だったのは、最後のセッションで行われたBackOffice製品の統合デモで、時間の関係ですべての説明はなかったのだが、内容的には非常に充実していた。Exchange Server・Internet Information Server・Transaction Server・Message Queue Serverなどを組み合わせたデモとなっており、カンファレンス終了後にマイクロソフト関係者と話した際に、ぜひともコンソーシアムのテクニカルセミナーでの実演をお願いしておいた。

 
● WindowsとInternet Explorerを巡る米国の訴訟の行方
 ご存知のように米国では、Windows 95とInternet Explorerのバンドルを規制する裁判所の決定が伝えられ注目を浴びている。日本でも公正取引委員会がマイクロソフトから事情聴取を行ったというニュースが流れてきている。Internet Explorer 4.0をバンドルしたWindows 95のOEM Service Release 2.5 (OSR 2.5)がリリースされたという話しも伝わっており、98年に登場するWindows 98やWindows NT 5.0への影響も計り知れない。今後の動向に注目が集まっている。

 
● Microsoft Web Tech Ed 98とWin HEC 98
 米国では1月末に初めてのWeb Tech Ed 98 、3月に恒例のWin HEC 98の開催が予定され、日本からもツアーが用意されているようである。Windows CEをベースにした非PC環境、NetPCやWindows Terminalをベースにしたネットワーククライアント、Small Business Serverを巡る中小企業向け、Enterprise Editionを利用した大規模企業向けのソリューションなど、Windowsがカバーするレンジもずっと広がってくる。98年は先ほど述べたWindows 98とWindows NT 5.0のリリースに合わせたBackOffice製品やサードベンダー製品の出荷が数多く予定されており、アプリケーション開発者やデバイスドライバ開発者にとって、忙しい一年になるはずである。


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