サンディエゴ日記 〜 Microsoft PDC 97レポート〜

Windowsコンソーシアム会長: 松倉 哲


 ロサンゼルス(LA)から車で3時間のところにあるリゾート地のサンディエゴへやってきた。ここは、半袖・単パンにスニカーが似合う町で、日本からのイメージでくると空港を降りたとたん暑さが身にしみる。サンディエゴは別の顔もある海軍基地である。私が滞在した間に空母が2隻、フリーゲート艦2隻が湾の中を航行しているのが身近に見えた。その周りでリゾート客のヨットやクルーザがところ狭しと走っている光景は米国ならではである。またサンディエゴから電車(片道運賃$1.75)にのると約30分でメキシコ国境である。こんなサンディエゴの町に世界から約6,000人のWindows開発者がMicrosoft PDC(Professional Developers Conference)97に参加するためにやってきた。

 

 

 Microsoft PDCは、9月22日(月)から9月26日(金)の5日間、サンディエゴ・コンベンションセンター(SDCC)において開催された。
 センターの3フロアを利用してセミナー会場、マイクロソフトショップ、イベント会場等が用意され6,000人以上の人間が動き回っている。もちろん入場券はすでにSOLD-OUTされて当日来てもすでに入れない状態であった。

 

 カンファレンスは、1日(Pre-Conference)+4日間の構成である。
 ジェネラルセッションが毎朝8:00より開始されこれが8セッションあり、11分野から200+のブレイクアウトセッションが組まれていた。私一人では到底消化できる量ではない。全部のマテリアルを集めると10センチ近い厚さになる。

 

11分野は次のようなジャンルに分けられていた。
(1) Internet Technologies Client
(2) Component Services
(3) Data Accessing & Messaging
(4) Distributed Services
(5) Graphics & Multimedia Services
(6) Network & Communication Services
(7) Security
(8) Internet Technologies Cliant(2)
(9) Tools
(10) Windows Base Services
(11) Setup System Management Service

 毎年このカンファレンスでは、マイクロソフト社のWindowsに関する新しいテクノロジーや新製品の構想などを発表している。今年はより分散コンピューテイング+インターネットを強調したものを各種発表している。今回のPDCにより強力に3階層分散アプリケーションシステムの戦略の中核的な内容を発表している。また注目の間に合わないと噂されていたWindows NT5.0ベータ版が最後の26日(金)に各種CD-ROM 14枚の中に配布された。タイトルを列記する。

(1) PDC CD(Slides,Demos,Whitepapars&Sponser Material)
(2) Microsoft Platform SDK PDC Edition
(3) Microsoft Windows NT Server Version5.0 Beta1
(4) Microsoft Windows NT Workstation Version5.0 Beta1
(5) Microsoft Windows 98 PDC Edition
(6) Microsoft Windows NT4.0 Option Pack Beta3
(7) Microsoft Internet Explorer 4.0 PDC Edition
(8) Microsoft Commerce Feature Preview
(9) Microsoft Exchange Server5.5 Preview Release
(10) Microsoft Data Access Technologies PDC Edition
(11) Microsoft BackOffice Small Business Server RC Disk1
(12) Microsoft BackOffice Small Business Server RC Disk2
(13) Microsoft Windows NT Server Enterprise Edition 4.0 1 of 2
(14) Microsoft Windows NT Server Enterprise Edition 4.0 2 of 2

 これだけの情報が入手できるのもPDCの醍醐味である。会員各位でこのPDCに参加されてない方は年に1回であるので是非とも参加を推奨したい。

 ここで特に気になったものの概要を紹介する。

 

● 9月23日(火)
(1) Microsoft Platform Strategy:Paul Maritz
 
 
  
 1990年Windows 3.X、1992年Win32/COM、Windows 95、Windows NT、1995年IEそして、1997年はWindows the Next GatewayでPDCは開幕した。今年は32ビットWindowsが100M台、Windows NT Serverも月に100,000セット、新しいイントラネット構築の70%をNT Serverを利用している。IE3.0は日本では50%以上、USAでは30%以上のシェアに至っている。
 この基調講演の中でマリッツ氏が最初の戦略上重要なWindows DNA(Distributed interNet Application Architecture)に関しての話をした。Integrating Web and Cliant/Server Computingと称して分散アプリケーション開発用のフレームワークをWebおよびクライアント/サーバに導入する重要性を説明した。
 Windows DNAはこれまでやってきたことを整理してWindows NT5.0以降このフレームワークで新しいアプリケーション開発の可能性と拡張性を強力にする開発手法となると考える。5年後を見据えた下地を紹介している。
 またWindows DNAの一部として、コンポーネントオブジェクトモデル(COM)を拡張したCOM+を計画し内容の概要を明らかにしており、機能には、非同期サービス、トランザクション機能、そして新しいランタイムサービスなどが今後提供される予定だ。
 もう1つWindows DNAで重要なのが、構造化と非構造化の両データストアをリンクするための共通APIを提供するOLE-DBである。OLE-DBを使用することにより、ExchangeのアドレスブックやSQL Serverなどのデータデース上に保存されているデータを利用するアプリケーションをコモンフレームワークで構築することができる。
 Internetのテクノロジーとしては、Dynamic HTML(DHTML)を紹介している。Windows DNAアーキテクチャーをInternetの世界で拡張するための製品である。この機能はIE4.0以降から利用できる。DHTMLやDocument Object Model(DOM)のデモの一環として、マイクロソフトは完全にCOMオブジェクト、DHTML、およびScriptletsと呼ぶスクリプト対応のHTMLコンポーネントを開発した。


 

 

 

 

 Javaに対するマイクロソフトの対応に関してマリッツ氏は、Javaは数多く存在する優れた開発言語の1つにすぎないと言いつつマイクロソフトは、Javaバーチャルマシンとランタイムサービスのサポートをしており、COM+の一部としてJavaバーチャルマシンと同じサービスをすべて提供する計画である。
 ただし従来からのJava Foundation Classes(JFC)に対するマイクロソフトの消極的なスタンスは崩さず、現在のOSからの孤立を招くので、開発者はJFCとJava技術の使用には注意すべきと話していた。インターネットクライアントとしてWin32が60%、UNIXが5%、MacCが10%、Win3.1が25%と分析している。  次期Windows Platformに関しては、1997年Windows NT5.0Beta、1998年Windows NT5.0、Windows 98、1999+年にはWindows NT Workstation、NT TechnologyのWindows XXと図解されWindows 98が最後のDOSからの流れになりそうである。
 WindowsターミナルとNetPCとの分けかたやNCとの相違についてかたられた。
 コンシューマー市場の計画には、11月に開催されるCOMDEX/Fallで発表するWindows CE2.0は、より小型軽量のポケットサイズのデバイスや、カラーのVGA画面を搭載した高度なデバイスなど、また家電製品の新しい市場に展開している。
 Windows CEに関してはWindows CEV2.0の他に3つの開発をしている。Mercury、Gryphon、Apolloである。最初の2つにはアウトルックのコンパチブルPIMが搭載される予定である。
 Mercuryはデスクトップとのコンパチブルを重視しておりOffice系やオープンハードウェアアーキテクチャーおよびファミリーWindowsインターフェイスをもたせる。
 Gryphonは特に音声の記録やインキング機能やフラッシュスロット機能などが計画されている。
 ApolloはセットトップボックスタイプでエンターテイメントTVとしての機能を計画している。ワイヤレス、ボイス、ナビゲーションおよびデジタルオーデイオなどが組み込まれている。開発ツールとしてWindows CE toolkit for VC++5.0、VB5.0、J++が計画されている。

 

(2) The Next Generation of Windows: Jim Allchin
 
 
  
 副社長ジム・アルチン氏は、初心者から熟練者まで各階層にあわせたWindowsを提供するスケーラブルユーザーインターフェイス(UI)構想について語った。インテリジェントなHelpアシスタントの使用である。これはユーザーが、自分のわからない機能へのアクセスをアシスタントに依頼するとWindowsがそれら機能へのアクセスを提供する機能である。Windows NT5.0に関してはマルチリンガルユーザインターフェイスが搭載しており英語、日本語、アラビヤ語など1アプリケーション内で混在も可能になっている。 NT5.0からUSA版にも日本語へのアプローチが可能になった。また、自動インテリミラリング機能についても語られた。
 総合するとやっとWindows NT5.0でシステムインテグレータにとってやっと使える物になったOSとして成長した実感を受けた。

・Windows 98 Beta31997/Q4
・Windows NT4.0エンタープライズ版1997/9
・Back Office Small Business版1997/10
・Window NT4.0 Option Pack1997/Q4
・Hydra Beta for NT4.01997/Q4
・Windows NT5.0 Beta11997/9/26
・Windows NT5.0 Beta2???????
 Windows NT5.0はPDC出席者から提供され6,000名に配布およびMSDNメンバー200,000名の世界の開発者に配布するそうである。


 
● 9月26日(金)
(1) Building the Next Generation of Windows Application: Paul Gross
 
 
  
 Windowsの開発ツールに関する話が中心であったが大部分をボーランド社の戦略と開発製品の紹介に費やされ、マイクロソフトの時間が非常に少なかった気がする。でも久々にボーランド社の健在ぶりを垣間見た気がした。開発の中心は何といってもVisual Studioである。今年のメインアークテクチャーのWindows DNAとVisual Studioの関係を紹介し今後の予定を話した。1998年にはAspen(開発コード名)をIE4.0、Windows 98、Windows NT5.0およびデータベースアクセスをADOで対応する。1999年にはRainier(開発コード名)をCOM+、Windows NT5.0、Sphinx(開発コード名)で対応する計画である。COM+の実際の対応は1999年?なのかなと開発者としていつ準備をするべきか判断しにくい時期である。当面のAspenの仕様概要をみるとDNA APPを可能にするDHTML開発環境、Windows NT5.0のサポート、ADO、SP2等のサポートが予定されている。今年は開発環境は現状をそのまま継続利用に留まると考えて良さそうである。


 
(2) Bill Gates'Keynote
 
 PDCの最後はマイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏である。昨日の台風で中止となったビーチパーテイの影響を感じる講演内容であった。会場はほぼ参加者全員で埋め尽くされた様子であるゲイツ信仰人気である。

 
  
 インテリジェントシステムの未来について語られた。マイクロソフトの開発機関について
・Natural Language Vision
・Speech Areas
・3D Graphics
・Decision Theory
・Advanced UI
・International Programming
・Program Analysis
・Operating System
・Database
・Scalable Servers
等を開発研究している
 現在の最も大きなテーマはデジタルナーバスシステムだという。研究開発場所はレッドモンド、英国のケンブリッジ、サンフランシスコの3カ所にあり1998年も26億ドルの投資を行う。
 実際のデモとしてWhistler技術に関して紹介した。言葉を自然なイントネーションで話すソフトでとても人間的な抑揚感のある音や音階をつけて歌うこともPCから聞くことができる。デモではHAL9000とWhislerの音(スカボロフェア)の比較を公開した。


 

 

 次に音の認識に関してMicrosoft English Queryは、英語の文章を使ってSQLを発行することが可能なシステムを紹介、検索エンジンの応用製品の域である。動画の認識をするテクノロジーは頭の位置、手の動作(上下左右)を判別して手振りで楽器を鳴らすデモが行われた。Windowsと人間とのインターフェイスを将来実現すると熱弁したが内容的には前回発表されたテクノロジーの進捗報告であり徐々に具体化していることのアピールにすぎない講演であった。もう少し今後のビジョンについての内容を織り込んで将来の夢を語って欲しかったのが本音であり、感想である。

 

今年のPDCのサマリーに関しては、
・Windows DNA
・COM+
・DHTML
・Windows NT5.0
・Windows 98
・Windows CE2.0
が中心の内容であった。
Webは、http://www.microsoft.com/msdn/pdc

(富士ソフトABC株式会社 専務取締役)


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