COMDEX/Spring'97アトランタ日記

Windowsコンソーシアム会長 松倉 哲


Computer World誌Gary J.Beach氏と
 

 昨年のCOMDEX/Springはオリンピック開催のためシカゴで行われたが、今年はまたアトランタに戻ってきて、6月2〜5日に開催された。町の印象はオリンピックを開催したせいか、町並みが以前に比べて非常に綺麗になっていた。6月後半から雨期(日本で言う梅雨)に入るので天候が不順であり、朝晩寒く日中暑い気候である。
 このアトランタはコカコーラ、CNNやデルタ航空などの本社があり、映画「風と共に去りぬ」でも知られる都市である。なんといってコカコーラが旨く、気候に一番合っている場所なのかも知れない(1本50セントでビンが飲める自動販売機を発見!)。米国の景気も非常に良く建築関係の規制緩和が効いたのか建築中のビルを今回大変よく見かけた。米国も情報産業界は人手不足に悩んでいるとの情報も入ってきている。

 
 さて今回の展示会での第1印象は、COMDEX/Springが危ない(?)集客・展示会社数を含めてPCEXPO(ニューヨーク)に取られていると感じた。また今回は目玉商品がないので盛り上がりに欠けるショーでもあった。米国も日本同様に展示会が多く、焦点が絞れない物には人気が無いようである。展示会場はジョージア・ワールドコングレスセンターであるが、アップル、ASTリサーチ、パッカードべル、ノベルといった経営再建に苦しむベンダーはいずれも出展を見合わせた。
 展示会の両雄は相変らずCOMDEX'97東ホールのIBM/LotusとWindows World'97西ホールのマイクロソフトである。
 基調講演のスピーカーは初日がロータスのジェフ・パポーズ社長、2日目はマイクロソフトのビル・ゲイツ会長、3日目はオラクル社のラリー・エリソンCEOとタイムワーナーのテット・ターナー副会長という顔ぶれである。
 初日に講演したロータスのジェフ・パポーズ社長は「100%ピュアJavaはPCとNC(ネットワークコンピュータ)を統合する最強のツールであり、今後の情報テクノロジーの最重要ツールである」と説明した。

ジェフ・パポーズ社長
 
 2日目はマイクロソフトのビル・ゲイツ会長である。今回はQ&A形式によりWindows NTの将来や電子メール産業の発展およびペーパレスに関する内容を熱く語った。Computer World誌からGary J.Beach氏の質問をゲイツ会長が答えていく形式の基調講演であって、Windows NT5.0に関してはベータ版が今年の秋、出荷時期を来年の上期と回答していた。企業のインフラに採用できるレベルまで性能をあげてきており約20億ドル(MSの年間研究開発費の50%)を投資している等を話した。

ビル・ゲイツ会長
 
 3日目はCNNのWeb顧客ニュースサービスに関する内容をOracleのエリクソン氏が自分でデモをしながら説明をした。テットターナー氏の掛合いで和気あいあいの短い講演であった。デモが旨く動作していないためか、商品紹介に留まった内容であった。
 全体的にはやはり目玉がない印象である。弱いながらキーワードを列記するとWebコマースソリューション、ネットワークツール、OS戦争、Java、ネットワークコンピュータ、Webオーサリングツール、Webアプリケーション、家電向けテクノロジー(DVD,PCTV,WebTV…)、テレコミュニケーションツール、コンポーネントウエア等であろう。
 その中でJavaに関しては、もう技術としてビジネスとして拡大する一方であり1つのジャンルを形成する様相を確信した。書籍物も多数出版されており人気のバロメータとなっている。地元の人に聞くと、いや昨年まではJavaが圧倒的だったが、最近はActiveX関連書籍が徐々に出始めているよと回答が返ってきた。(7:3の割合の感触である)
 今回のもう一つの印象としては紙(商品カタログ)が非常に各社とも少ない。その代わりWeb情報の公開により必要ならば「インターネットから情報を…」を主眼に置いた印象を受けた。従ってWebアドレスを看板に書いてある会社がほとんどであった。ちなみに驚いたことは、実際のビルにある会社の看板にもWebアドレスを書いてある徹底さである。いかに米国では、インターネット人口が多いかを物語る事実ではないでしょうか。

 マイクロソフトのブースは、相変わらずパートナー会社とのパビリオンを大きく設営している。WindowsNT/95,VisualBasicApplication,ActiveX,WindowsCE等の関連アプリケーションが展示され、通路が狭いので通行できない、説明が聞けない状態であった。特にWindows CEに関しては前回のラスベガスで発表し今回のアトランタで各種アプリケーションと非常に力が入っていた。

 
今回のマイクロソフトでのプレゼンショーのタイトルを見ると、
●Building Intranet Server Solutions
●Introducing Microsoft site Server
●Memphis sneak Preview
●The Microsoft Network :This Way to the Internet
●Visual Studio97
●Visual Basic
●Visual J++
●Visual InterDev
●Office97 Intranet Starter Kit
●Internet Explorer 4.0
●Front Page97
である。
 注目はMemphis(次期Windows 95)を紹介している。Windows 98的なニュアンスが大きくなる開発状況である。Microsoft Pressの印刷物には既にWindows 98の名前で準備しているらしい情報も会場内で収集した。

 東ホールのロータス社は“Work The Web”のキーワードでセミナーを展開している。 セミナーの演題をあげてみると
●Lotus Notes 4.6
●Lotus Smart Suite97
●Lotus Domino
●Work The Web with Smart Suite97
●Java Solutions for Network Computing
●Components: Powerful Applets that Extend The Power of Notes
●Involu-Web Based End User Initiated Groupware
●Business in a Box:The Complete Domino Solution for business
●Lotus Weblicator
●New! Organizer97 GS
●Domino Applications:Building Business Solution on Internet Technology
●Instant TEAMROOM
●HELP!CUSTOMER Service Software for Notes & Domino
 盛りだくさんでありかつWeb中心に展開中であった。もはやインターネット/イントラネット/エクストラネットで企業の情報武装をする世界へと向かっていくとのと同時に日本と同様に中小企業向けのソリューション展開にも確実に力をいれ拡大している。

 東の大御所IBMは主題をネットワーク・セントリック・コンピューティングと題して展示していた。PCサーバー、RS/6000、AS/4000というフルサーバーラインに加え、超小型のIBM製NCのIBMネットワークステーションを展示した。このネットワークステーションは、現在のどんなサブノートPCよりも小型で、サーバーの上に置くと、あたかもサーバーの突起部分にしか見えないほど超小型である。OS/2に関しては完全にJava指向に転換中である。全体的にはWindows NT中心に販売戦略に打ち立てている。米国もひところのWindows NTの立場から一転して好調な状況を示している。ある米国のSI企業の方もNTは非常に売れてますよとコメントをしてくれた。

IBMはさらにe-Business Forumとしてインターネットビジネスを集中的に紹介をしていた。
●Network Computing with IBM Network Station
●Internet to Extranet and Everywhere in Between
●Security Update for the IT Professional
●Creating Your Electronic Marketplace
などを紹介していた。
 H/Wでは高速なサーバ群はいつもどうりですが低価格の1000ドル以下PCがかなり出始めている。台湾勢のエイサー、FICが大掛りなデモをしていた。
 低価格PCは個人ユースだけでなく企業にネットワークのクライアントPCとして、大きな需要があることをアピールしていた。
 全体に各社ともネットワークコンピューティングの構築にどのような役割をもつかという部分で展示をしていたことが特徴である。
 面白周辺機器としては、SUNWIZE TECHNOLOGIES社のポータブル電源システムが非常に良かった。簡単に説明すると携帯用ソーラシステムで屋内電球でもノートパソコンの充電が可能な代物である。いつも電源コンセントを探さなくても充電が可能な世界になる。世界のどこにいてもPCが使える世界になった。(こわい世の中に… )
 DVDに関しても各社展示しておりWAVECOMM社はワイアレス型DVD装置なども印象にのこった。5.2GBのDVD-RAM(3,600枚FD相当)も日立から登場している。
 インターネットを利用したビデオカンファレンス、インターネット電話やインターネットFAXに関しても場内のいたるところに展示されていた。低価格カメラやコスト低減による普及であろうか?
その他気が付いた物を列記してみる。
●デジタルカメラはやはりH/Wは日本企業が圧倒的であり応用ソフトは米国企業である。 今年はNIKONに人気があった印象である。
●ペーパレスオフィスを呼びかけてのドキュメントマネージャや周辺機器がWindows NT/95版として登場している。
●マルチメデイアはやはり米国は進んでおりツール、ボードが軒並み展示デモされておりLOST WORLD,SPEED2,BATMAN等最近映画の内容を紹介しながらテクノロジの解説をしていた。これはすごい! 近い将来自宅のPCでオリジナル3D映画が作れる……
 まだまだ書き足りませんが、またの機会に…。来年はシカゴで開催されるそうです。

(富士ソフトABC株式会社 専務取締役 akira@fsi.co.jp)

※ 7月29日の第60回セミナー時に、松倉会長による「COMDEX Spring 97レポート」があります。


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