最新Windowsソフトウェア事情(第26回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
(mtaka@fsinet.or.jp)



図書館で学ぶ学生の必需品

 はるか昔、学生時代はよく図書館に通ったものである。昭和41年に一橋大学商学部を卒業すると同時に野村総合研究所に入社したが、実践的な研究ができるという期待がはずれたことを知ると同時に大学院へ戻る決心をかため、翌年には大学院学生に戻った。それから博士課程を単位取得退学(当時の日本の経営/経済系大学院においては博士号は60歳すぎの著名な?老(トル)教授に与えられる名誉称号であり、学生はすべて5年間の課程が修了すると同時に退学することになっていた)するまでの6年間(途中、1年間ペンシルバニア大学にフルブライト留学)、もっぱら図書館通いをしたのである。毎日、パソコンソフトの探訪に明け暮れる現在の状況からは想像できない学究的な生活であった。
 さて、今回は履歴書作成を支援するソフトを紹介することに…(!)ではなく、図書館で英文の文献を読みこなそうとするときに大いに役立つ「ペン型OCRと英日翻訳ソフト」を紹介することにしよう。結論からいえば、30年前、この種のソフトやハードの支援を受けることができたら私のその後の学者生活は大きく変わったのではないかと思う。

図1
 

 「ペン型OCR」は図1に見るように、大型ペンサイズのスキャナーを使って分厚い本でも、あるいは図書館で外へ借り出しできないような本でも、本の内容をその場で即座にイメージとしてパソコンに取り込み、さらにそのイメージを文字として認識させるためのハードおよびソフトである。操作はいたって簡単であり、図書館内に携帯したノートブックパソコンのプリンタポートおよびキーボードに接続し(電源はキーボードからとる)、ソフトを起動して本の上をなぞると、なぞった文字がとりあえずイメージとして読みとられ、即座にOCRソフトによって文字に認識され、テキストとしてアプリケーションソフトの編集画面に入力される仕組みである。たとえば、ワードパッドやWordなどの上で実行すればよい。

図2
 

 さっそくソフトを起動してみよう。それによって図2の左上のような設定画面が表示される。ここで一応、ハードのテストのためにスキャンテストを実行してみると、図の下段のように本の上の文章がイメージとして読みとられ、それが即座に文字(英文)として認識されたテストの結果が示される。画面上段の設定ウィンドウにはさらに、文字認識と同時に音声で読み上げてくれたり、バーコードを読みとるといったオプション機能のボタンも用意されている(これらの追加機能は30日間体験でき、オプションを申し込むことで継続的に利用できる)。
 この「ペン型OCR(IRISPen)」は「LogoVista E to J Personal Ver3.0」および「専門辞書」とセットでカテナ鰍ゥら販売されている。ここではこの英日翻訳ソフトのアプリケーションの上でその力のほどをためしてみることにしよう。

図3
 

 図3はさきほどの分厚い本からスキャンし、英日翻訳ソフトの操作ウィンドウに文字として入力した直後である。図の左側に英文が表示されているが、操作の不慣れもあって冒頭の「Today's…」のTが欠けてしまった。その他、行の最後で切れた単語をつなぐときに「−」の処理など、このままでは翻訳に支障がありそうな箇所も見られる。しかし、ペン型OCRの操作は分厚い本のページ上で「さっとなぞる」といった感覚でこの程度のスキャンおよび文字認識の結果が得られるので、十分に実用的であると思われる。
 英文が入力されれば、それからあとは翻訳ソフトの翻訳力が問題になる。しかし、私にはすぐあとで見る同じくカテナから発売されている有名な「コリャ英和95!」などの翻訳ソフトしか経験がないし、また、本欄では同種のソフトの評価は目的としていない。

図4
 

 それはともかく、英文の多少の手直しをした上で実際に翻訳をさせてみると図4の右側のような日本語の文章が得られた。じっくり読めば意味が十分に読みとれる翻訳結果であるといってよいだろう。なお、英文の手直しを考えるとまず、ワープロソフトに入力し、スペルチェック機能を利用して英文を手直ししてから翻訳ソフトに移して翻訳したほうが手間を省くことができる。
 図の翻訳結果を見ると、「globalization」など、一般の文章ではあまり出会わない用語は訳語がなく、そのままになっている。こうしたときにビジネス、コンピュータ、法律など分野別の専門辞書が役立つ。この製品には22分野53万語の専門辞書が用意されており、必要な辞書をインストールしておけば翻訳の精度も上がる。

図5
 

図6
 

 たとえば、図5は一般辞書に加えて「ビジネス一般」の専門辞書を追加した様子を示している。画面上段の辞書メニューあるいはツールバーのアイコンを使うことで辞書ウィンドウを表示させ、専門辞書をロードできる。さっそく「ビジネス専門辞書」の支援をうけて翻訳させてみた結果が図6の上段である。今度は「globalization」も「グローバル化」と適切に訳されている。また、画面下段にはオプションメニューの「環境設定」によって翻訳環境や学習環境などの設定を行おうとしている様子も示されている。

図7
 

 パソコン雑誌ではときどき、翻訳ソフトの比較評価記事が掲載されることがある。その中ではLogoVistaは高い評価を与えられていた。そこで低価格版の英日翻訳ソフト「コリャ英和95!」で同じ英文を翻訳させてみると図7の下段のような結果が得られた。さきほどの翻訳結果と読み比べてみられると、その違いが実感できるだろう。もちろん、1万円以下の翻訳ソフトはこの分野のソフトに対する一般ユーザーの関心を高める上で大きく貢献した。カテナからは最近、和英の翻訳ソフトも発売された(これ和英!)。最後にその翻訳の力をかいま見ておこう。

図8
 

 図8はごく短い和文を入力して英文に翻訳させた結果である。この程度の文章なら直接、英文で入力した方が早いが、どんな翻訳結果が得られるか、一種ゲーム的な感覚でソフトをためしてみることも一興ではある。そういえばときどき挑戦する囲碁ゲームも私にとっては真剣な学習ツールであるが、5段を有する岩波書店の編集者(M氏およびK氏)にとっては「囲碁ソフトの弱さ加減をいたずらする」道具になっているようである。

(筑波大学大学院 経営システム科学 教授)


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