開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



●Active Platform
 先月号で速報した「Active PDC」で発表されたActive Platform構想だが、3月26日の「第55回セミナー」でもマイクロソフトの方々から説明があった。おそらく今月号にセミナー報告が掲載されているので改めて確認してもらいたい。
 Microsoft Transaction Server (MTS) 1.0や、Active Server Pagesを含むMicrosoft Internet Information Server (IIS) 3.0などの日本語版は、現状プレリリース版が提供されている。セミナーでは、コードとしてはすでにフィックスしており、近々リリースされるだろうということだった。Microsoft Exchange Server 5.0も4月中にはリリースされる予定である。もしかしたら今月号が読まれる頃には既に発表されているかもしれない。

 開発者にとっては、MTSやCOM/DCOMを利用したアプリケーション開発、もしくはコンポーネント開発が今後の選択肢の一つになってくる。この連載を始めた頃には、OLEやOCXコンポーネントをベースの開発が重要であるとセミナーでも話していた。マイクロソフトにとって、この1年間のインターネット技術へのシフトは、非常に大きな意味を持っている。その後に続く開発者にとっても、急速な変化に対応できていない現実がある。
 先月号でも触れたが、いまだに企業の基幹システムは、Windows 3.1をベースに運用されていることが多い。当然一部の先進的な企業にはWindows NTやWindows 95の導入が進んでいるが、マイクロソフトの戦略が十分に浸透していないことは認めざるを得ない。サーバーOSにしても、Windows NT Serverの導入率は飛躍的に伸びているが、NetWareやOS/2などのPCサーバーは現実に存在しつづけている。
 マイクロソフトが声高に32ビット環境へのシフトを叫んでも、多くの企業の情報システム部門は、保守的な企業内ユーザーに対する教育コストの問題や、企業システムの移行に時間がかかることから、16ビットシステムを使いつづける、あるいは16/32ビット環境の共存を選択している。企業システム開発者にとっても、マイクロソフトが描くコンポーネント技術の普及によって生産性の向上が得られるとしても、その環境整備にはもう少し時間が必要である。

 インターネット/イントラネット技術という観点で、ASPの存在は非常にユニークである。サーバーサイドでコンポーネントやスクリプトを実行する、あるいはMTSとの組み合わせによって、アプリケーションを実行するというアプローチは、今後の可能性を秘めている。社内向けの情報提供の手段として、試験的にIIS、ASP、SQL Server、Exchange Server、Lotus Notes (Domino)などを組み合わせてみているが、いろいろおもしろいシステムが出来上がりそうである。
 現実にもマイクロソフトの紹介で、某社のイントラネットによる企業内システム構築の話を進めようとしているのだが、ユーザーの反応も賛否両論あって面白い。エンドユーザー部門にとって、FrontPage 97やVisual InterDev 1.0を利用して、IISやASPを通して情報発信を行うというアプローチは、その簡便性や既存データの有効利用という観点でも重要となっている。ところが、技術が新しすぎて評価が十分に行われていないことから、「ActiveXなんて使えない、ASPは先の話、Javaって企業システムに使えるの」などなど、いろいろな反応が返ってきている。今後の進展が楽しみである。

●Microsoft Developer Days 1997, Tokyo
 開発者向けのイベントとして、先月号で速報した「Microsoft Developer Day 1997, Tokyo」だが、正式なアナウンスが流れてきている。Active Platformを理解したい、あるいは最新のマイクロソフト統合開発環境を知りたい方は、ぜひ参加してもらいたい。

  http://www.microsoft.com/devdays/

・日時 4月15日(火)・16日(水)の2日間
・会場 京王プラザホテル (東京・新宿)
・対象 Windows NT、ActiveXおよびBackOfficeをベースとしたActive Platformに対応するアプリケーション開発、ならびにソフトウェア開発を担当されているエンジニア、プログラマーの方々
・定員 1,040名
・費用 一般 55,000円、パートナーディスカウント 49,000円

 「Microsoft Developer Days」は、3月19日から全世界46カ国、90都市で開催されている開発者向けイベントで、5月にリリースされる予定の次期開発環境 Microsoft Visual Studio 97 (Visual Basic 5.0, Visual C++ 5.0, Visual J++ 1.1, Visual InterDev 1.0)の発表イベントとなっている。各ツールのベータ版や技術資料、Bill Gatesの基調講演ビデオなどが配布されることになっている。

・Visual InterDevによるActive Server Pagesを利用したイントラネット構築
・Visual Basic 5.0による先進のインターネットアプリケーション開発
・Visual C++ 5.0によるActiveX/COMコンポーネントプログラミング
・MFC&T 5.0 (Microsoft Foundation Classes & Templates)によるインターネットプログラミング
・Microsoft Transaction Serverを利用したスケーラブルな分散コンピューティング環境の構築
・Visual J++ 1.1による洗練されたJavaとActiveX(COM)の統合
・Visual Studio 97を利用したCross Language Development
・IE 4.0の紹介、その他

 前項でも触れたが、開発者にとってActiveXやCOMプログラミングの話は新しすぎて関係ないと思ってはならない。以前にもコメントしたことがあるが、開発ツールは絶えず最新版を使っていた方がメリットを享受できる。当然バグも修正されているし、性能も向上している。新しい機能を利用すると、これまで苦労していたコーディングが簡単に解決できる場合がある。バージョンアップの費用はバカにならないが、今回はVisual Studio 97というお得な統合パッケージもリリースされる。まだ、ニュースリリースも流れていないので正式価格ははっきりしないが、米国での発売価格から推測すると、Visual BasicやVisual C++の単体製品の2割増し程度の価格で、全製品を手に入れることができる。当然、既存製品からのアップグレードパスも用意されているようである。製品リリースと同時にバージョンアップすることと、それに先駆けて最新製品の機能を理解するためにも、イベントへの参加を促しておきたい。

●Microsoft Internet Explorer
 Microsoft Internet Explorer 3.01のセキュリティ上の欠陥が指摘され、いくつかのパッチが用意された後、3.02にバージョンアップされた。そのあおりを受けて、Internet Explorer 4.0のプレリリース版(Platform Preview)の公開が遅れている。その結果、Active DesktopとしてIE 4.0を採用する次期Windows 9xのリリースも当初の予定から大幅に遅れることになったようである。
 実は数週間前から機密保持契約の下で、IE 4.0のPlatform Preview版を試使用している。ユーザーにとっては、Windows 3.1のユーザーインターフェースがWindows 95の登場によって大変革したのと同じくらいに、大きな衝撃をもって迎えられるものになるに違いない。使い勝手の向上は、その普及のためのさまざまな見えないコストを伴って徐々に浸透していくが、一度甘い蜜の味を知ってしまうともう後戻りはできない。マイクロソフトの戦略に躍らされている感は否めないが、デファクトスタンダードとしてのWindowsクライアントの地位は揺らぐことはないだろう。

●Microsoft Developer Network (MSDN) ウィークリーニュースサービス
 開発者にとってMSDNを利用する機会は多いと思うが、新しい情報提供サービスが開始される。MSDNは、昨年のUniversal Subscriptionの登場によって、開発ツールを含めた統合開発環境情報サービスとなっている。最近のインターネットブームに呼応するように、4月中旬から「ウィークリーニュースサービス」がスタートする。
 案内によると、マイクロソフトの開発情報、イベントの照会をタイムリーに行うだけでなく、MSDNをより効果的に利用する上で役立つ情報を迅速に提供することがねらいである。最新の情報をなるべく多く、かつスピーディに伝えるために、インターネットメールを利用する。メールアドレスを持っていない人のためには情報をFaxで送る。MSDN会員には案内が届いていると思うので、大至急登録することをお勧めする。

●Microsoft Office 97
 3月14日に出荷された「Microsoft Office 97」は、開発者にとっても注意しておかなければならない点がある。一つは、全製品にVisual Basic for Applications (VBA)が搭載されたことであり、もう一つはMicrosoft IntelliMouseの採用である。
 VBAは、以前からOffice製品の一部で採用されており特別な話ではないが、全製品に採用されたことで各オブジェクトを透過的にアクセスできる手段が提供されたことになる。
 IntelliMouseは、Microsoft Mouseの2つのボタンの間にホイールと呼ばれるぐるぐる回るボタンがついている。スクロールやズームを快適に行うための機能が提供され、開発者のためのインターフェースも公開されている。インターネットを通じてSDKも提供されているので、自社アプリケーションをIntelliMouse対応にすることも可能である。

●4月のイベント
 4月には「Microsoft Developer Days」(15・16日)のほかにも、チェックする必要があるイベントが続いている。日本で初めて開催される「COMDEX Japan 97」(8〜11日・幕張)、同会場で開催される「Microsoft Site Builder Meeting 97」と「Lotus Forum 97」、オラクルの「Oracle Open World 97」(16・17日・東京ビッグサイト)、インターネット関連の「Internet World 97」(23〜25日・幕張)、などなど。開発者としても最新技術動向を見極めるためにも、ぜひとも情報収集に励んでいただきたい。


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