最新Windowsソフトウェア事情(第26回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄



単身赴任の必需品
 みなさんは単身赴任の経験をお持ちだろうか。私自身は84年から86年にかけて当時勤務していた成蹊大学の 海外研究派遣プログラムにもとづいて、ロスアンゼルス市内にある南カリフォルニア大学のビジネス スクールに単身、滞在していたことが思い出される。企業の駐在員と違って、きまってこなさなけ ればならない特別な仕事もなく、自分の好きなように時間を使ってよいという恵まれた条件であった。研究室 を借りることができたので毎日、一応は大学に出かけるが、教室の授業をのぞいてもあまり面白い科目 はなく、研究室で好きな本を読んだり、近所のパソコンショップをのぞいたりして時間を過ごしていた。 81年末にIBM PCが発売され、それが急速に大学にも普及しはじめた頃であった。 企業のビジネマンを教育するビジネスススクールでもその中心はIBM PCであった。 そしてLotus1-2-3やdBASEなどその後の代表的なビジネスソフトが次々に世の中にあらわれはじめてい た頃でもあった。
 「ソフトあってのパソコン」を強く感じた私はさっそく、当時のIBM互換機の代表であったCompaq Portableを購入した。現在のパソコン価格からは考えられない高価な買い物であったが、知的好奇心旺盛 な私としては(!)、食事にかける金を惜しんでもパソコンやソフトに対する投資を優先したのである。 Portableといっても15Kgもあり、大きさも現在のノートブックパソコンからは想像できないばかでかいもの であった。Transportable(運ぶこともできる)といった表現も使われたが、その方がより適切 な表現と思われる大きさと重量であった。滞在中にさらに、CPUとして80286を使ったCompaq286 が発売されたので、それも購入した。また、つづいてマッキントッシュが話題になりはじめたので、つい、5 12KBのメモリーを備えたマッキントッシュを購入してしまった。それらはすべて、みずからの肩にかついで日 本に持ち帰ったのである。
 さて、この米国滞在中のパソコン放浪記はビジネスコンピュータニュースや日刊工業新聞社から発刊さ れていたパソコン雑誌(プロンプト誌)に長期連載をつづけ、私にとって米国パソコン最新情報を日本のユーザー に届ける恰好の機会となったのである。この辺の事情についてはまた機会を改めることにして今回 は表題のソフトの話に戻ることにしよう。
 米国単身赴任中の私の献立の代表的なメニューは「しゃぶしゃぶ」であった。ロスアンゼルス近郊の 日本人が多く居住していることで有名なTorrence市に住むことにしたので日本食の材料には事欠かなかった。 明治屋やヤオハンなどのスーパーがあり、そこにはなんでも揃っていた。しかし、料理の手ほどきを受 けたことがない私にとってもっとも簡単な料理は薄くスライスしてある肉を沸騰した鍋にさらしてその まま食べる「しゃぶしゃぶ」であったのである。もちろん、白菜や椎茸あるいはネギなどをぶち込んだこと はいうまでもない。栄養のバランスととることが重要であるときつくいわれていたからである。 それはともかく、もし現在、あらためて単身赴任の機会を得ることができれば今度は「しゃぶ しゃぶ」オンリーのメニューに対して、日替わりの豊富なメニューを楽しむことができると確信している。 それは「てきぱきお料理マム(テクニカルソフト株式会社)」という有能なコックを引き連れて滞在でき ることになったからである。
 このソフトはサンプルメニューが30種類ついた「基本システム」をインストール、さらにオプション で発売されている料理データ集を追加していくことによって、「おかず」、「ごはん・パン・めん」、 「お弁当」、「鍋もの」などのジャンルを加えることができるようになっている。さっそく、新しいメニュ ーに挑戦してみることにしよう。

図1
 

 図 1は基本システムをインストールしてソフトを起動したところである。画面上段にはサンプルメニュー の最初である「ポテトコロッケ」が表示されている。最初にコロッケが出てくるあたりの理由を 確かめたいところであるが、画面左側の写真を見るといかにもおいしそうなコロッケではある。 写真の下にはカロリー数(中高年には重要なデータ)、その右には料理の手順を追って作り方が表示 されている。それぞれの手順を選択するとそれに対応した説明の写真が表示されることになる。 また、作り方の下段にはさまざまなボタンが用意されており、献立に記録したり(左端の手でお皿を持った ボタン)、メニューを検索したり、あるいはメニュー集の間を行き来するためのボタンもある。

図2
 

 写真はもちろん、カラーであるがもっと大きくして細部まで検討したい。その場合は 写真の上でマウスをクリックすると図 2のように、写真が拡大されていよいよ、「早く食べてみたい」と思 わせることになる。しかし、写真を見ているだけではじっさいにコロッケが完成するわけではない。作り 方の手順を追って見ていく必要がある。

図3図4
 

 そこで図 3のように実際の手順の説明へと移ることになる。図ではジャガイモの皮のむき方などの説明と 写真が表示されている。写真だけでなく、ビデオ動画でもついていればさらに便利だと思われる。それはと もかく、コロッケを作りかけの段階で問題かもしれないが、画面でマウスが指しているように虫眼鏡の検索 ボタンをクリックすると図 4のような検索画面が表示され、データ集にもとづくメニューの 検索が可能となる。右上には料理名、カロリー、分類、材料、データ番号によって 検索するためのボタンがリストされており、下段には材料にもとづく検索ウィンドウが開か れている。ここでは二つまでの材料をandあるいはorで組み合わせて検索すればよい。「 じゃがいも」と「にんじん」のいずれかを使った料理ということで検索してみると、図の右側のような メニューが検索された。それぞれカロリー数もあわせて表示されている。

図5
 

 「お料理マム」には献立帳も用意されている。上段のツールバーの中で献立ボタンをク リックすれば献立帳を表示できる。これまでの図では料理画面の下にすでに献立帳のウィンドウが見えていた。 実際には図 5の右側のように上段に「今日の食事」欄、そして下段に「今日のメモ」欄があり、 献立の内容とか今日の天気や行事などを記録できる。献立の入力にあたってはメニューウィンドウが表 示された状態でウィンドウ下段の献立記録ボタン(図3参照)をクリックすればそれが「今日の食事」 欄にコピーされる。図ではすでに野菜雑炊とポテトコロッケが入力されている。また、「 今日のメモ」欄もあらかじめ用意されているアイコンから該当する天気や行事を選択するだけでよい。 また下段には日付のタブもあり、任意の日付を選択してそのときの料理や天気などを思い出すことができる。

図6
 

 単身赴任の身にとっては自慢料理ばかり食べていたのではつい、栄養過多になる。メニューのカロリー数 や栄養素も大いに気にすべきである。特定の料理メニューを選択したときに、その栄養素のデータを知るた めにはツールバーのグラフボタンをクリックすればよい。 それによって図 6のようなに、現在のメニューの料理を味わうと、一日に摂取すべき栄養素に対して、カ ロリー、タンパク、脂質そしてビタミンのそれぞれがどのような割合で摂取できるか、それがグラフで表示 される。もちろん、幼児と青年そして中高年では必要な栄養素の量も異なる。図の上段には評価基準の 年齢層を選択できるようになっている。

図7
 

 さて、これはと思われる料理メニューが見つかり、また、料理の手順もそれなりに理解したとしよう。次 はいよいよ実際に料理の準備に取りかかることになる。そのためには当然、材料を仕入れてこなければな らない。ツールバーでグラフボタンの右側に見える材料ボタンをクリックすると図 7のように必要な材料と必 要量の一覧がリストされる。もちろん、人数によっても量が異なるので、上段の人数欄で人数を指定すれ ばよい。コロッケの場合は小麦粉やパン粉そしてもちろん、じゃがいもなどの材料がリストされている。 このようにしてとりあえず、基本システムに含まれる30種類のメニューを一つ一つ、見ていくことでこんな 料理があったのかと新しい発見ができる。しかし、やがてもっと他のジャンルやさらに多くのメニューに挑 戦したいと思うことになるだろう。そのときは別売の料理データ集を加えればよい。

図8
 

 図 8は「人気ごはん・パン・めん編」を追加したときの画面例である。図ではすでに山菜スパゲッティが 表示されており、また、検索ウィンドウには麺類を材料とした多数の料理メニューがリストされている。 また、料理をためしたあとは自分なりの料理の工夫を記録しておくことも、やがて単身赴任の運命にある 後輩のために貢献することになろう。図 9は料理ウィンドウ上段のレシピ編集ボタンをクリックして 表示されたレシピウィンドウの上にちょっとした追加手順を書き加えたところである。

図9
 

 このようにして今回は単身赴任の力強い味方になるであろう「お料理」ソフトに挑戦した。 ただし、実際の調理するところまでためしたわけでないので、相変わらず、「しゃぶしゃぶ」中心のメニュ ーになってしまう可能性もわずかながら残されていることを白状して終わりとしたい。

(筑波大学大学院 経営システム科学 教授)


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