開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜最新開発ツール事情〜

山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



 
 日本における1996年最後のコンピュータ業界のイベントである、「Windows NT INTRANET Solutions Tokyo 96」が、12月10〜12日に幕張メッセで開催された。初日の特別基調講演のために来日した米国MS社のB. Gates会長は高らかに「Windows NT 4.0 日本語版」の出荷を宣言した。後半は11月のCOMDEXの基調講演をそのまま再現したもので、とくに目新しい発表はなかった。もう一度改めて、96年末に出荷された製品群と97年に出荷が予定されている製品群を整理しておくことにする。

● Windows NT 4.0
 今さら詳しく機能を説明する必要もないであろうが、Windows 95と同じユーザーインターフェイスを持ち、今後のマイクロソフトのOS戦略の基盤となるWindows NTの最新版である。
 起動時に表示されるビルド番号は「Build 1381: Service Pack 1」であり、米国で提供されているService Pack 1の対応を含んでいる。  インターネット/イントラネットに対応するさまざまな機能強化がなされたIIS 2.0やDNSを標準でサポートし、日本のMS社ホームページからは「Index Server 1.1 日本語プレリリース版」がダウンロード可能になっている。
 ちなみに「Windows NT 3.51 Service Pack 5」も、12月18日から公開されるとアナウンスされている。

● Visual C++ 4.2、Visual J++ 1.0
 11月末のテクニカルセミナーで紹介したVisual開発ツールの最新版であり、説明は不要だろう。

● Visual Basic 5.0 Control Creation Edition
 米国MS社のホームページで公開されている、ActiveXコントロールを作成するためのVBツールである。マイクロソフトからの情報によれば、この英語版には2バイトコードのハンドリングを含んでおり、また日本語化の予定もないので、是非ともダウンロードして評価された方がいいだろう。
 本格的なActiveXコントロールを作成するには、性能面から見てもVisual C++を使う必要があるが、簡単なコントロールやデバッグ時には役に立つツールである。

● FrontPage 97
 Office製品群に位置づけられる「FrontPage 97」は、12月13日に世界に先駆けて日本で製品版が出荷された。以前からベータ版が日米のMS社ホームページで公開されていたので、すでに内容を確認されている方も多いだろう。
 FrontPage 97は、Webサイトを管理するための「FrontPage Explorer」と、Webページ作成ツールの「FrontPage Editor」の2つで構成されている。簡単にイントラネットを構築するのに適した強力なツールである。

★ Windows 95 OEM Service Release 2
 米国ではすでにリリースされているWindows 95のアップデート版である。IE 3.01の標準サポートやUSBの対応など、次期Windows 9xに向けた機能拡張が施されている。

★ Office 97
 11月のCOMDEXでアナウンスされ、米国では1月、日本では第1四半期にリリースされるOffice製品群の次期メジャーバージョンアップ版である。Word 97、Excel 97、PowerPoint 97、Access 97といったこれまでのOffice製品のほかに、Outlook 97というExchangeの拡張クライアントが含まれる。ExchangeクライアントとSchedule+クライアントを統合した個人情報管理のためのクライアントであり、Outlookフォームなど32ビット対応された強力なクライアント機能を有している。
 メジャーバージョンアップということで、またまたファイル形式が拡張され、互換性には一部制限があるので、リリースとともに導入するには注意が必要である。IntelliSense機能を有したOfficeアシスタントによって、初心者からパワーユーザーまで簡単に使える環境が用意されているが、機能が豊富すぎて慣れるのに時間がかかりそうである。
 Standard版、Professional版、Small Business版、Developer版の4種類のパッケージが用意されるが、インターネット/イントラネット対応のためのHTML文書の読み書き、ハイパーリンク機能、全文検索機能など、充実した内容になっており、パッケージの選択に迷うことになりそうである。
 開発者にとっては、これまでExcelとAccessだけが対応していたVisual Basic for Applications (VBA)のラインアップに、WordとPowerPointが加わったことで、Visual BasicやInternet Studioを加えた開発ツール群の間で、共通の言語仕様が確立した。

★ Visual C++ 5.0, Visual Basic 5.0, Visual J++ 1.1, Visual InterDev (Internet Studio)
 開発ツールに関しては、97年第1四半期にほとんどバージョンアップが予定されている。これまであげた他の製品と同様に、米国および日本において、公式にもしくは非公式にベータテストが実施されている。機密保持契約の関係で、詳細をお伝えすることはできないが、インターネット/イントラネット対応のためのActiveXへの取り組み、分散環境への対応が主な強化点である。

★ Internet Information Server 3.0
 米国MS社のホームページで公開されたIISの最新版である。分散環境へのアプローチとなる「Active Server Pages」や、サーバーのアクセス状況を解析するための「Crystal Report for IIS」などがダウンロードできる。

★ Merchant Server 1.0, Transaction Server 1.0, Exchange Server 5.0
 幕張でも展示されていた商取引用の「Merchant Server」や、データベースやオブジェクトを分散管理できる「Transaction Server」の日本語ベータ版も近日中に公開されるようである。
 「Exchange Server」の次期バージョンは当初4.5といわれていたが、Active Server対応を取り込んで5.0となった。米国のMS社ホームページではすでにベータ版が公開されている。日本でも1月末に開催される「Exchange Server Solution Conference」の出席者に配布される。
 このほか、クラスタリング技術などいくつかのサービス、あるいはアプリケーションも97年の目玉である。

★ Internet Explorer 4.0, Windows 9x (Memphis), Active Desktop, etc...
 クライアントの拡張は当初より遅れそうであるが、97年半ばには日の目を見るようである。最新技術を取り込むことがアナウンスされており、たとえ通過点としてもユーザーにとっては大胆な意識改革が必要となりそうである。

以上がマイクロソフト系の公式、非公式のニュースであるが、幕張イベントと時を同じくして米国では「Internet World」が開催され、インターネット/イントラネットの対応製品・技術が公開された。
 その他でも、SUNの「JDK 1.1」、IBMの「OS/2 Warp 4」、Lotusの「Lotus Domino (Notes) R4.5」、Netscapeの各種アプリケーションサーバー群、Novellのイントラネット対応製品などなど、97年前半の各社の戦略を左右する製品・技術が続々と発表されており、忙しい日々はまだまだ続きそうである。

あとは、幕張で仕入れたローカルな話題を2つ、3つご披露して、96年の締めくくりとしよう。
■マイクロソフト・古川会長が最近好んでデモで披露する技術に「Active Agent」がある。ご存知の方があるかもしれないが、米国MS社のホームページで公開されているエージェント技術である。すでに日本でも2〜3人の技術者が注目してローカルなホームページに取り込んでいるそうだが、先進的な技術を好むWeb技術者はチェックされたらおもしろい。
   http://www.microsoft.com/intdev/agent/

■幕張での展示会に隠れて話題にならなかったが、隣接するホテルで「Site Builder Meeting 96」が開催された。米国で実施されている「Site Builder Network」を日本でも組織化するために、Webマスターを集めて開催されたもので、ActiveXなど最新の技術に取り組んでいくには、最新技術動向をチェックしておいた方がいいだろう。
   http://www.microsoft.co.jp/sitebuilder/
   http://www.microsoft.co.jp/workshop/

■幕張の富士ソフトABCブースで、カシオ計算機のWindows CE機「CASSIOPEIA」2台を参考出品したところ、来場者の関心が非常に高かった。COMDEXで報道関係者向けに貸与した英語版であったが、来場者の注目を集めていた。英語版ということもあって使用感は非常に軽快で、Windows 95デスクトップPCとの親和性もいい。問題は日本語を搭載したときの性能とスペックであるかもしれない。

 私事だが、幕張のマイクロソフトブースに隣接した「BackOffice Theater」でSQL Serverのチューニングの話を中心にセミナーをさせていただいた。IDGコミュニケーションズ「Windows NT World」誌97年2月号(96年12月24日発売号)に記事として掲載しているので、SQL Serverに関係した作業をされている方は是非とも購入してチェックしてもらいたい。
 約1年近く、あちこちで集めてきた情報を毎月切り売りさせていただいた。一部に誤った情報もあったようだがご容赦願いたい。97年はインターネット/イントラネット技術が、単に言葉だけでなく実際のアプリケーションの中に実装されて花開く年となるだろう。技術者の皆さんがアンテナを張り巡らして仕入れた情報が、お互いにうまくコミュニケーションできれば、もっと楽な生活が送れることだろう。コンソーシアム活動がその一部でも機能するように、みんなで盛り上げていければいいと思う。これからもよろしくお願いしたい。

(富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長 )
(yamamoto@fsi.co.jp)


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