今回の原稿が日の目を見るころには、マイクロソフトからさまざまな機会を通して、今年12月に発売予定の「Microsoft Windows NT 4.0」に関する情報が流れているはずである。最近、「Microsoft Solution Provider総会」、OEM・ISV・IHV向けの「Microsoft Windows NT 4.0 Marketing Day」、MSP向けの「Windows NT 4.0 製品説明会」が続けざまに開催されたので出席したが、ほとんど同じような内容が繰り返し繰り返し語られた。昨年11月の「Windows 95 騒ぎ」から一年もしないうちに、「企業にとっての標準デスクトップはWindows NT Workstation 4.0」という一大キャンペーンが張られようとしている。Windows NTというと、サーバーOSであるというイメージが強いことを気にして、今回も発売前から市場の雰囲気を期待感一色にしようという戦略のようである。12月の「Windows NT Intranet Solutions 96」の基調講演で再び来日するビル・ゲイツ会長が高らかに製品出荷を発表することだろう。
近日中にほとんど製品版の「Windows NT 4.0 プレ・リリース版」を多くの人が入手して、最終評価に入っているはずだから、読者の中でも使われている方が多いに違いない。機能紹介を始めると誌面が足りないし、まだ現時点では公式のアナウンスが発表されていないので、別の機会に譲ることにしておく。あるいは、別のページで松倉会長あたりからしっかり紹介の特集が掲載されているかもしれない。
アプリケーション開発者からみると、真の32ビット
OSであるWindows NTの台頭は喜ぶべきことである。Windows 3.1時代の不安定な環境から、16ビット環境の遺産を引きずったWindows 95を経て、新たな時代の到来を予感させるものである。もっとも、OEMメーカーでも、ISVでも、エンドユーザーでも、しばらくはWindows 3.1、Windows 95、Windows NT 3.51、Windows NT 4.0の混在環境という厄介な問題を抱えていくことになるであろう。企業にとっての32ビット環境への完全移行は、まだ当分先の話のようである。アプリケーションの32ビット化はかなり進んできているが、過去の遺産を捨てることは非常に厳しい状況である。
「Designed for Windows 95 Logo Program」に替わって、「Designed for Windows NT and Windows 95 Logo Program」がスタートしている。先日米国出張した際にソフトショップで見かけた「Microsoft Publisher 97」にはすでに新しいロゴマークが付いて販売されていた。Windows NT 4.0のもっとも大きな、あるいはもっとも重要な改良点であるユーザーインターフェースの変更は、アプリケーション開発者にとっても「The Windows Interface Guideline for Software Design 4.0」に沿った設計上の変更を求めている。もう一度解説書をチェックしておいた方がいいだろう。
Visual C++ 4.2, Visual J++ 1.0
マイクロソフトの新しい言語製品である「Visual C++ 4.2」と「Visual J++ 1.0」はいずれも11月に発売されることになった。前回も触れたが、7月末に開催された「Tech-Ed 96 Yokohama」の参加者には日本語ベータ版のCD-ROMが郵送されてきている。すでに導入して試されている方も多いだろう。米国出張の際にコンピュータショップではまだ発売もされていない「Visual J++」の解説本が販売されていた。まったく米国人の先取性には驚かされる。
さらに来年第1四半期には「Visual C++ 5.0」「Visual Basic 5.0」「In
ternet Studio」などの製品の投入が予定されている。とくに「VB 5.0」では開発環境としての「Developer Studio」への統合が図られ、すべての言語製品が一体化されることになる。
MSDN Universal Subscription (July 96)
MSDNの最高レベルのサービスとして開始された「Universal Subscription」(Level-4)のJuly 96版が届いた。何と60枚弱のCD-ROMが同梱されている。
Microsoft Exchange Deployment Conference
9月11〜13日に米国テキサス州オースチンで開催された「Microsoft Exchange Deployment Conference」に出席するために米国出張した。米国ではExchangeの出荷から半年が過ぎ、本格的なメッセージング・システム、もしくはグループウェアとしての地位を着実に築き上げている。
今回のカンファレンスは、「Exchange 4.0」での構築事例紹介と、米国では年末、日本では来年第1四半期に出荷される「Exchange 4.5」と「Office 97」のキーコンポーネントとなる「Outlook 97」の機能紹介といった内容だった。10月末には日本でも同様のイベントの開催が予定されているので、Exchange関連の担当の方々は出席された方がいいだろう。もっとも日本では今後本格的にExchange市場が立ち上がることになるので、内容は一部異なること
になるだろう。
米国での2つのカンファレンス
米国マイクロソフトのホームページをチェックしている方はご存知だと思うが、10月末から11月にかけて、米国で2つのカンファレンスが予定されている。
・The Microsoft Site Builder Conference (October 28-30, 1996)
・The Microsoft Professional Developers Conference (November 4-7, 1996)
11月の「COMDEX Fall 96」を前に突然浮上したカンファレンスだが、概要を見る限り開発者にとってはチェックしておいた方がいいだろう。機会があれば、米国まで足を伸ばしてみる必要もあるかもしれない。内容が確認できたら、次回にでも触れることにしよう。
最後に
今から半年間のうちに、Windows 95やWindows NT、BackOffice製品群、Office製品群、開発言語製品群は、一斉にバージョンアップが予定され、インターネット/イントラネット対応機能の強化など、さまざまな拡張が施される。アプリケーション開発者は、流れに遅れることなく付いていかなければならない。立ち止まることは許されないようである。
富士ソフトABC株式会社 技術調査室長
(yamamoto@fsi.co.jp)