松倉会長の業界キーマン直撃インタビュー

マイクロソフト株式会社 取締役OEM営業本部長
兼 インターネット製品統括部長 大浦 博久氏を訪ねて

今回は、東京笹塚のマイクロソフトに4月1日付けで新設のインターネット事業部(7月1日付でインターネット製品統括部に組織変更)部長に就任されました大浦取締役をお訪ねして、インターネット市場に対するマイクロソフトの取り組み方やインターネット関連技術についてきたんのないご意見をお伺いいたしました。

松倉会長             大浦取締役
 

松倉 最初に、インターネット事業部はどのような組織なのかをお聞きしたいのですが。
大浦
 昨年12月に米国でInternet Dayがありまして、それを皮切りにマイクロソフト全社的にインターネットにフォーカスしようということが決まりました。その段階から全てのプロダクトに関してインターネットのファンクショナリティを突っ込んで行こうという仕事そのものが始まったのです。それまでは、ジム・アルチンのグループはwindowsNTを、ブラッド・シルバーバークはwindows95関係を、ロジャー・ハイネンのグループはツールをやるという個別のストラテジーで走っていたのですが、2月21日のタイミングで、かなり大幅な組織を発表しました。全てのWindowsの開発をジム・アルチンに預け、ロジャー・ハイネンがたまたま45歳になったということで引退して、ブラッド・シルバーバーク(windows95を立ち上げた男で、元々ボーランドの言語チームの親分をしていた)がそのまま、ツールズの部隊と、全てのインターネットに関るプロダクト、またマーチャントサーバーそれとツールという意味でソフトイマージをもった形の組織が立ち上がったわけです。3月に開催されたPDC(Microsoft Professional Developers Conference)で、 Internet Dayから約90日の間に全てのプロダクトにおいてインターネットのサポートという形の発表をし、ActiveXという新しいテクノロジーが発表があったわけです。 私がこの4月にブラッドに会ったときに「部下は何人いるんだ」と聞いたら、「2500人いる」との返事でした。インターネットとツールズをやっている部隊だけで2500人いるということは、ジムアールチンの下にぶら下がっているNTとか、SQLサーバーをやっている人間を全部足しても2500人位で、いかにマイクロソフトとしてインターネットにフォーカスしているかということが、人間のリソースの配置だけを見てもらっても多分想像つくと思います。 それでは、日本ではどうしたかといいますと、2月21日の米国の組織を横目で見ながらやっぱりうちもうちで前の組織体だと、ビジネスシステム事業部はサーバーを中心にし、IIS(Internet Information Server)の戦略はしゃべっても、ブラウザーはあまり関係ないと、windows95のチームはブラウザーにフォーカスをする、ツールズはツールで違った戦略を説明するということでした。そこでインターネット関連事業の強化を図るためにインターネット事業部を新設したわけです。サーバーだけのシナリオではなく、ブラウザーだけのシナリオではなく、クライアントからサーバーからツールまで全てマイクロソフトが持っている全てのテクノロジーを1ビジョンとして様々な人達に説明して理解していただき、最終的にはマイクロソフトの製品を使っていただくというところが一番のフォーカスであるということです。 この7月以降には、32ビットのWindows上のISVをサポートしているWPGというグループとマージさせて、インターネット製品統轄部という組織に変更し強化を図っていこうと思っています。

松倉 現在は名位いらっしゃるのですか。
大浦
 人数的には全然たいしたことはなくて、インターネット事業部と今いわれているグループは5人、WPG(AchitiveX、DirectXのテクノロジーを追っかけている人達)が4人です。7月以降は全体を一まとめにし人員追加も行い、13〜15人にしていこうということです。

松倉 日本のインターネット/イントラネットについて、どういう見方をしていらっしゃいますか。
大浦
 インターネットに関してはまさにブームだと思っています。ブームというのは、いつか力つきて下火になるタイミングというのはきっとくるのだろうと思っています。ブームの良さというのは、ブームがあるがために普通だったら興味もわかない人間達、普通だったらプラスαのお金を出してモデムを購入したり、TA(Terminal Adapter)を購入したり、ISDNを引いたりしないような人達までが一つの波に襲われて、そういった行動に移ってしまうということで、若干のインフラができるだろうと思います。 インターネットそのものの動きというのはやはりアメリカ発信だと思っています。多分今、日本でインターネットに入り込んでいる人達の80%以上の人達は「co.jp」でなくて、きっと「.com」を見ているだろうと思うのです。ですから、米国で流行っているNetscapeというのはきっとInternet Elplorer(IE)よりいいんだろうなという印象を受けているでしょうし、向こうでマクロメディアのShockWave的なページが増えれば、増えるほどそういったものが日本で流行るでしょう。 ですからインターネットの世界的な仕掛けというのは日本では非常にやり難くて、米国のマイクロソフトが一生懸命頑張った結果、日本のマイクロソフトはその後でいろんな仕掛けができると思います。イントラネットに関しましては日本独自のカルチャーを生かした仕掛けがいろいろできますので、今はインターネットをきっちりやらなければならないと思っています。その横ではイントラネットにフォーカスをしておくことが必要だと思います。現在のインターネットのブームが去った後に、もしイントラネットというものがきっちりでき上がっていないと、次の第2ウェーブのインターネットのブームはきっと起きないだろうと思っています。 うまい具合にWindowsNT4.0(日本ではテクニカルベータを出していますが、米国では多分8月以降の発表出荷、日本では年末か年明け位のスケジュールで動いている)がまもなく出てきます。企業にNTの導入をおすすめするときに、シナリオ的に丁度いいなと思っているのは、例えば、昨年NTを全ての企業に導入しようと思ってもメモリが高かった、そうすると企業がNTをきっちり動かせるPCの環境を作り上げるコストが昨年と今とはメモリの値段だけでもかなり変わってきている、メモリが余ってきた結果、値段が下がり、Windows3.1ではなくて、Windows95を経由せずにいきなりNT4.0を採用する企業が増えてくることです。それを採用することによって自動的にサーバーもNTになり、そのサーバーで動くInternet Information Publishing(MSでいうIIS)、マーチャントで使えるサーバーもMSのマーチャントサーバー、MSのセキュリティのものが使われるシナリオがきっとできやすくなったのではないかなという気がします。ですからイントラネットの最大のメリットは企業側から見たときには、昔いっていたわけの分からないダウンサイジングという言葉が実質、本当に肌で感じられる形の世界をインターネットを通じてそこで伸びてきたテクノロジーがそのまま企業内で使われるようになりますので、そういった意味でタイミング的には非常にいいのかなという気がします。

松倉会長
 

松倉 NT4.0という話がありましたけれど、ブラウザの方は3.0ということですか。
大浦
 Windows95が流行って、いろんなTVで「お父さんのためのパソコン講座」みたいなもので「マウスでカーソルを動かしてください」といって、マウスを持って画面上でカーソルを動かしたりしていますよね。つまり、今までパソコンを全然知らない人達がWindows95という一つのキーワードの波に押されて「これをやっておかないとまずい」という気持ちになり始めている、ようやくWindows95の操作環境を覚えた人達が今度はインターネットという一つ新しいキーワードが出てきて、また新しいことをしなければならないというのは余りにも可哀想だなという気がするのです。 マイクロソフトが目指すパソコンの操作法というか作法というものは、Windowsさえ分かっていれば、インターネット/イントラネットもPCのHDもCDドライブも関係ない、つまりインターネットという外の世界がまるで自分のパソコンに付いているCDドライブのように操作性が変わらずにいろんな所が見えるというシナリオでやっています。今度IE 3.0が出ますが、次のバージョン(多分、4.0と呼ばれない)はきっとWindows95のシェルの一部として組み込まれた形で世の中にデビューすることになります。 IE 3.0では今ナビゲータが可能にしているものは全て可能にしますし、ActiveXという新しい技術が出ることによってプラグインソフトで動いていた拡張機能がActiveコントロールとして実現され、処理速度は非常に高速になります。Netscapeとどっちが勝つかというのは後でユーザーが決めることでなんでしょうけれど、Windows3.1の時代からやっているNetscapeのプラグインが採用しているISVは多分今100社以内です。マイクロソフトのPDCのタイミングでActiveXを発表した瞬間に71社賛同していますし、今日現在で150社以上あります。なぜそんなに皆さんが急に応募されているのかというと、結局今までOCXとかOLEを作っていたISVの人達がどういう形でインターネットの世界に入り込もうかと悩んでいたときに、このActiveXのテクノロジーを使うことによって、そのOLE、そのOCXそのものがWebでいろんな展開ができるようになる。つまり、インターネット上で新しいプログラミングの作法を覚えずに今までやってきたものがそのまま使えるということです。5月末にMicrosoft ActiveX Developers Conferenceが御殿山ヒルズで行われたのですけれど、非常に反響が大きかったですね。「ああそうなんだ」と、ActiveXというキーワードは会長の古川がいろんな所でいっていますので、キーワード的には分かっていたんでしょうけれど、実際にActiveXというのはどういうコンセプトで、将来的にインターネットとどうつながりがあるかということが、ようやく分かっていただきました。

大浦取締役
 

松倉 Internet Explorer 3.0からWindowsの旗マークでなくて、“e”が出るのは何か意味があるのですか。
大浦
 3.0を出すタイミングでマルチプラットホームになるのです。今まではNTと95だけだったのでMSのWindowsの旗でもよかったのですけれど、今後はAppleにもブラウザーを作って行きますし、UNIXはどうするか分からないのですが、デマンドがあればUNIXにも乗せていきます。つまり、グローバルなプラットホームに乗せるということで、Internet Explorerの“e”にかけて“Internet Explorer Everywhere”の意味で,全ての環境において“e”が出てくるようにしました。

松倉 大浦さんはmsnにはタッチしていないのですか。
大浦
 msnは日本だけがかなりビジネス的にも大きいので、通常全世界的にはインターネット事業部にぶらさがっているのですが、個別のディビジョンとして今、動いております。

松倉 日本だけ会員が多いということですか。
大浦
 jp.msnの会員が15万人以上いまして、1日あたり平均1000人サブスクライバーが増えています。例えば、一番ヒット率の高いNTTラーニングだとか、トヨタとかの企業は1日100万ヒットいくかいかない位ですが、 jp.msnもco.jpもそれぞれ確実に1日150万近くヒットしているのです。ですから2サイト合わせた数字をマイクロソフトとして出せば圧倒的に日本最大のヒットサイトとなります。4月25日に100万を超えたとプレス発表をしたのですが、記事にしてもらえなかったようです。(笑い)

松倉 コンソーシアムの5月の会報では、「WinViewインフォメーション」コラムで取り上げていますよ。
大浦
 ありがとうございます。

松倉 次はツールの方のお話をお願いします。インターネット系のツールとしてBackOffice、VB ScriptにInternet Studio等があり、また、先日のCOMDEX/SpringではFrontPageがあったのですが、特に力を入れているというのはどの製品でしょうか。
大浦
 全てのユーザーの人達がきっとワープロを使っている 、そのワープロがHTMLをはきだせばページは作れるということで、Officeにぶら下がっている全ての製品群の中にInternet Assistantというプロダクトを出して、Word用のInternet Assistant、Excel用のInternet Assistant的なプロダクトがきっと一番ローエンドにあります。FrontPageはWeb管理などもっと凝ったことが非常に簡単にできるものです。Basicを使っている開発の人達にとって最強のツールとなるであろうVisual Basic5.0からActiveXコントロールを作成できるようにます。Javaの開発者向け環境として、VisualJ++を開発中です。 どれに力を入れるかというと、一番売れるものという単純な考えになってしまうのですが、マイクロソフトの戦略というのはインターネットで何かをやりたい多くの人達を対象にした製品を提供することです。本当にUNIXでガリガリやってJavaを使っている人達もいれば、中級のホームページをデザインしている人達もいるわけですし、アーチスト/デザイナーといわれる人達に今からCを勉強しろとか、Javaの書き方を勉強しろといっても無理なわけですよね、彼らにとってFrontPageなり、或いはVB的なものなら直ぐに使えますので、そういうプロダクトはいいかもしれません。あとは一太郎やExcel、Word使っているユーザーなら、ちょっとしたページを作りたいというなら、Internet Assistant for Wordということでいろんな層のいろんなレベルのユーザーに全てのソリューションを提供するというのは、マイクロソフトの重要な仕事ではないかと考えております。

松倉 Javaに関してはどう見ていますか。
大浦
 Javaはテクノロジー的に非常に第4の言語と呼ばれるくらいきっといいものだと思います。とはいえ、それがこれからどんどん広がるかといえば、 JavaというものはSunで生まれて、その子どもが旅に出始めましたよね。いろんな所でJavaというSunで生まれたテクノロジーが違った形なり、違った色に加工されて、その中でもっともユーザーフレンドリーというのか、もっと使いやすく、もっと簡単に、もっと小さく、もっと速く、ホームファクターに仕上げた所が、一番ビジネスにつなげていけるのではないかと思います。つまり、Javaはこれからもさらに改良が加えられて成長していく、マイクロソフトはJavaをちゃんと育てていこうと考えています。 ポール・アレンのアシメトリックス社には、ものすごい優秀なSun出身のJavaエンジニアが集まってJavaコンパイラーを作っていますが、あのままの形ではテクノロジーとしてものすごくいいと思いますが、じゃ皆が使える言語に仕上がるかといえば、きっとそうではないんじゃないかなという気がします。

松倉 名前が先行しているということでしょうか。
大浦
 いや、技術的にとてもいいものなので、名前だけで、ブームだけでとんでいるものではないと思いますよ。

松倉 少し、時間がかかるということですか。
大浦
 でも、Javaの出版物はブームでものすごく売れていますよね。昔だったら例えばC++のレファレンスマニュアルなんてのは誰も買わないのが、 Java のレファレンス関係は結構出ているみたいですね。買ってみたものの、読んでも誰も分からないということになりかねないと思いますよ。

松倉 米国でもJava の本がものすごく出ているのですが、すごく簡単な言語だと思っている方が結構多いですよ。
大浦
 多分、買って帰っても8割以上の人達は分けが分からなくて、本棚にしまってしまうのではないでしょうか。

松倉 基本的には、御社でいうとVC++のレベルの人達でしょうか。
大浦
 完ぺきにC++のサブセットですから。

松倉 意外とVBと同じレベルと勘違いしている人が結構多いんじゃないかと思います。だれども作れるだろうと買っていって大間違いで損したかなという人が多いんじゃないかと思いますね。 Javaの話をしましたので、今度はNetscapeの方をお願いします。Navigatorの方ですが今無償で御社がダウンロードされていますよね。今後の戦略としては基本的にはIE3.0ですか。
大浦
 先程説明しましたようにIE3.0から4.0という3.0の次のバージョンがWindowsのシェルの中に組み込まれますので、Windowsを買ったお客様にどうせただで付いていくわけです。ですから戦略的に2.0も無償、3.0も無償、その後はひょっとしたらInternet Explorerという名前も消えてWindowsの一部になってしまうかもしれません。

松倉 IISもただで配っていますが。
大浦
 一応パッケージも作っていますが、始まった当初はダウンロードをする人達にとってはパンク状態になる位ヒットしました。パッケージの方もショップの人達からの要望が非常に強くて、チャネルの方は箱を並べることにしたみたいですが。

松倉 これは戦略的にという意味ですか。
大浦
 そうだと思います。

松倉 次は、NCですね。御社からは1000$コンピュータの話がでていますが。
大浦
 自分はこの業界に入ってずっとOEMの担当をしていますが、ネットワークコンピュータというものをやる必然性があるかどうかというと、きっとインターネットというのが流行り、いろんなユーザーにもっと簡単にアクセスしていただきたいという観点から考えると、値段的には非常に魅力がありますよね。だったら、今の部品を集めて500$で物を作ったときに、ユーザーが納得する環境ができるか、できないかということが一番のキーであると思っています。 今、オラクルさんがいろんな所で声をかけているネットワークコンピュータをもしそのまま作ったとしたら、HDも付いていないマシンなわけですよね。そうするとWebをアクセスしてWebが開くまでにものすごく時間がかかって、そのページをずっと見ていくと何か興味のあるページが見つかり、次のレベルに降りるときにまた時間がかかるわけですよね。前のページをキャッシュしていないので、今度メインページに戻るためにもう一回それを引っ張ってこなければいけない、ということでその“かったるさ”とか“時間”というものがきっと我慢できないのではないかと思います。 ですから変な話、もし500$という値段がキーワードだとすると、秋葉原にいって386SXの中古のラップトップでCDは付いている、ハードディスクは付いている、メモリーも16MB位のっているというのが、多分5万円位で買えるんですよ。そうするとその386の中古ラップトップ、プラスTAだとかを買ってきますとインターネットにつながりますので、いまさら新しいインフラを作ってやる必要はないんだろうな、という所があります。 でもネットワークコンピュータが流行る一つの理由は、500$というか安くやる気になれば物を作れる家電屋さんというのがありますよね、日本にも数社、台湾やアメリカにも何社かあるでしょうけれど、そこで共通しているものは、彼らはパソコンで取りあえず成功していない、そうするとPCでないジャンルで新しい世界を切り開く機会が出てきたということで、非常に盛り上がっていると思います。そして、インターネットというブームにのってメディアがそれを取り上げていますので、パソコンで実はこんな安い機械を作った瞬間に真っ赤かになってしまいますので、やりたくない国内のコンピュータで成功しているいくつかのメーカーが、一応そういうプランがあるという雰囲気に賛同しているイメージに今、なっているのではないでしょうか。

松倉会長           大浦取締役
 

松倉 名乗りを上げているだけですか。
大浦
 ええ、ですから一番はじめに物を出してくるのは、今ワールドワイドでPCのシェアが1%以下の所しか絶対出してこないですよ。シェアのあるメーカーは自分達の首を絞めることになりますから。

松倉 ネットワークだけでしたら、386マシンでいいんですよね。
大浦
 十分です。ASTだかが1000$マシンを出しましたよね。486DXベースでインターネット専用マシンをこの間アメリカで発表しましたよね。じゃ500$でインターネットだけをやるか、1000$出してワープロもスプレッドシートも、アメリカですと年に一度年末調整のようなものを自分達でやらなければいけませんので、だからパソコンが普及したという理由もあるのですが、あとはネットワークPCというものがテレビの一部になって、ハイブリッドテレビみたいなものが出てきたときに、きっとトータルのコストというレベルでは下がってきますので、今500$対1000$になっているインテル系とノンインテル系の値段差というのはテレビに入り込む段階で変わってくるだろうし、真剣にネットワークコンピュータが流行ってくると、世の中で一番CPUを作っているのはインテルですから値段を下げようと思えば、エイヤーで下げれると思いますよ。 ですから、500$で物を作るのは、きっとうちが若干ロイヤリティを下げて(両者 笑い)、インテルがCPUを下げればできないことはないと思いますよ。でも今はその必然性がきっとないだろうというふうに思います。

松倉 その1000$マシンと、御社がいっているPDAマシンとは違うんですか。
大浦
 マイクロソフトがいっている1000$マシンはまさにSIPC(Simply Interactive Personal Computer)でありまして、SIPCのものすごく分かりやすい定義というのは、1000$以上のマシンで、100%コンシューマにデディケートした、とはいえちゃんとMicrosoftOfficeが走るマシンなんです。つまりWindows上の最強のアプリケーションのSuitが走らない限りはやっぱり家庭のパソコンとは呼べないということです。OSには、セットトップボックスのOSとモーバイル型なOSをぐちゃっと固めて一つにしたものが“ペガサス”という名前で夏以降に出ます。

松倉 これはネットワークとは関係ないホーム用ですか。
大浦
 ホーム用ではなくて、会社や家庭にあるWindowsデスクトップのコンパニオンマシンです。 今、インターネットの最大のネックはブラウジングをしなければならないということです。この世の中を動かしている人間たちが一番ないのというのが時間なんです。その時間のない人間がパソコンの前でこうやっていろいろブラウジングをやることなんか、うちの会長の古川位しかやっていなくて(笑い)、そんなこと皆できないわけです。そうすると、次のジェネレーションというのは、自分が欲しい情報を提供してくれる機能が追加されて、例えば、松倉さんが帰宅してマイクロソフトとオラクルとサンについてのこういう情報が欲しいということで、キーをポンと押して寝てしまう。朝起きたら、欲しいデータが全部集まっておりその“ペガサス”をカパッとステーションから外してハイヤーに持っていって見ていくというものができない限りは、今インターネットをやっているのはやっぱり奥さん連中、学生、子供、おじいちゃん、おばあちゃんということで、きっと暇な人しかやっていないですよ。 古川は多分インターネットというのが流行始めて1日平均3時間位睡眠時間がちじまっていますよ。やっぱり、あそこまでやらないと追いつかないでしょうね。私なんか全然追いついていないですよ。マイクロソフトのWebにのっているものですら読切れないですから。その点、古川はすごいですよ。

松倉 さきほどのコンパニオンマシンというのは、1000$位で出るのでしょうか。
大浦
 1000$コンピュータというのか、余り値段のことは言いたくないのですがSIPCというのは双方というより本当に家庭、コンシューママーケットに放り込むハードウェア規格だと思いますけれどね。ですからのっているOSは95から何の変わりはありませんし、アプリケーションだって変わりはありません。いかにコスト的に安くして、パワーオンのテクノロジーだとか、P1394のテクノロジーだとかを家庭に入っているAV機器と簡単につながってより使いやすくするか、パソコンのイメージではなくて、例えばパソコンというと僕らがいつもいらいらするのは、夜遅く帰宅して一本だけメールを打ってマシンを切って寝たいとかいうときに、電源スイッチを入れて、ブートするだけでものすごく時間がかかり、最近はメモリーがいっぱい入って、いろんなチェックをしてようやく立ち上がってメールが終わり、また切ろうと思ったらシャットダウンまでしばらく時間がかかりますよね。常に例えば今家庭に入っているテレビのようにスタンバイ機能がついていて、ピッとリモコンを押せば画面がいきなりついて、そのままメールに入れるというような機能もSIPCで今いくつかのメーカーさんと協力してその標準を作ろうとしています。イメージ的には本当に1コンシューマ機器というか、エレクトロニックス機器、テレビだとかステレオだとか変わらないようなもう誰でも使える、買ってきたらその日からおばあちゃんでも使えるようなイメージには直ぐにはならないにしても、スタートをきる一応イニシアティブにはなると思います。

松倉 あと、BackOfficeの関連はいかがですか。インターネット系は米国で上がっているのですが、日本でも大体同じですか。
大浦
 全く同じです。 NT用のアプリケーションということで米国がExchange Serverを発表して、日本版は3ヶ月位のディレイです。サーバーまわりのサーバーそのもののアプリケーションも大体、今90日ディレイ位です。ブラウザーは大体米国、日本の差は2週間位です。

松倉 これからソリューションプロバイダーの方々にはイントラネットビジネスで稼いでもらいたいということですか。
大浦
 もう、イントラネット一色ですね。ですからOracle7を使わずにSQL Severを使っていただくとか(笑い)。

松倉 ソリューションプロバイダー向けに今後何か施策とかがありましたら。
大浦
 常にイントラネットに関するマイクロソフトの考え方でどうやってビジネス展開をしていくか、個別についていって企業を一緒に攻めていくかとかは、ずっとやっていますし、6月の中旬にサンノゼで行われたIntranet Dayに多くのISPさんをご招待しました。

松倉 あとは、教育に関しては学校の方には方策みたいなものはありますか、米国ではMSさんが学校に寄付したとかの話を聞いていますが。
大浦
 これに関しましては徐々にやっていく積りであり、今NTTや文部省といろいろやっています。ソフトの供給、あと新しいハードウェアを導入する時には、Windowsマシンが入るような動きを始めています。ターゲットを絞って、例えば東大のコンピュータセンターをUNIXからWindowsNTに換えていくだとか、慶応はこうしようだとかいうのは、来期からようやくスタッフが揃いますのでやっていこうかと思っています。

松倉 コンソーシアムはISVさん達が大体中心なんですけれど、そういう方々へのメッセージをお願いします。
大浦
 ISVの人達に一番伝えたいメッセージというのは、インターネットという新しいプラットホームができたのではなくて、Windowsの延長線上にインターネットというたまたまそういったフィールドがあって、そこに対してActiveXのテクノロジーを使えば、今まで皆さんが一生懸命苦労して作り上げたリソース、財産というのがそのままインターネット上でビジネスにつながるという所が一番のキーのメッセージです。 あと、Netscapeとマイクロソフトという関係はどうなんだというと、Netscapeがスパイグラスからモザイクが出て、そのマーケットに対して彼らが一生懸命やろうということでシェアを伸ばしてきた。そのときはマイクロソフトは何をやっていたかというと、一生懸命Windows95を作っていたのです。95を作って、作って、作って、ようやくPCというものが全てのエリアに入り込む一つのプラットホームを作って、その次に情報ハイウエイというシナリオにつなぐためのときにインターネットが出てきたわけです。 今までは95にフォーカスしていたために、ある程度に先に行かれてしまいましたけれど、今は95を作った全てのエネルギーをインターネットという所にシフトさせました。あまり勝負とかなんとかいう話はしたくないのですが、やっぱりきっとインターネットだけを見て物を作っているNetscapeと、パソコンで一生懸命パートナーとして一緒に歩いてきた人達をいかにインターネットの世界により簡単に引っ張っていくことを考えながら物を作っているマイクロソフトとの差というのは、きっと一年か一年半経ったらものすごい差になってくると思いますね。ですからこれはきっとユーザーには分からない、ISVやIHVの人達だけが分かって、それでその環境にのってくると結果的にネットスケープのプラグインは100本で終わり、ActiveXのサポートしているISVというのは何百何千になってくるということにきっとなると思います。

松倉 そうするとActiveXテクノロジーを理解しておかなければいけないということですか。
大浦
 とにかく、ActiveXテクノロジーというのが何か分からなくて、あと3年ビジネスやったら、そのISVはないでしょうね。

松倉 最後に、なにかニュースがありましたら。
大浦
 6月29日にDirectX2 SDKが出ます。あとはカスタマイズWebサービスというのが始まります。それから、Internet Explorerのロゴが“e”に変わるという話をしましたが、それを取り上げてもらえばいいと思います。一応、米国のWeb上では変わり始めていますが、日本ではどのタイミングからやろうかと迷っているところです。

松倉 どうも長いことありがとうございました。

◇ 本インタビューは6月に行われましたので、7月1日付で組織変更があり、部の名称が変わっております。マイクロソフトさんをお訪ねするのは、ビジネスシステム事業部、技術支援本部と今回で3度目ですが、「ルックスでは負けない」とおっしゃる大浦取締役。ActiveXと総称するインターネット対応技術を前面に打ち出し、ブラウザーでの新事業の拡大にかける熱意を大いに語っていただきました。


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