◆ 開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

山本 淳


 最近出席したセミナーについての報告と、関連する最新技術情報についての所感を述べてみたい。

(1)VBITS 96
 5月15〜16日に東京ヒルトンホテルで「Visual Basic Insiders' Technical Summit」(VBITS 96)が開催された。欧米ではすでに何度か開催されているVisual Basic開発者のためのカン ファレンスで、FTP社が主催したものであった。マイクロソフトが主催するセミナーとは 違い、広告宣伝に終始しない現場で苦労している技術者の発表ということもあって、一風 変わった雰囲気を味わうことができた。出席者も900名弱と予想より多く、狭い会場にも かかわらず、活発な情報交換に終始して、Visual Basicの浸透ぶりが伺えた。
 Visual Basic 4.0が出荷されてから半年が経ち、現場でもかなりの案件が動き始めてい る。とくにWindows 3.1をターゲットにした作業に対する要求はまだまだ多く、OLE 2.0対 応についても以前に比べると増えてきている。マイクロソフトとしては、早くWindows NT やWindows 95といった32ビット環境に移行してもらい、16ビット環境が抱えていたさま ざまな問題をクリアしてもらいたいという思惑があるのだろうが、エンドユーザーの動き は決して早くない。現場の開発者が抱えている問題の多くも、32ビット環境ではクリアさ れている、あるいは代替手段があるといったところである。Visual Basicだけではなく、Visual C++などもいまだに古いバージョンを利用して開発していることが少なくない。OSや開発 ツールの進化のスピードの速さが、エンドユーザーや開発者にとって、大きな負担となっ ているのは確かなようである。

(2)Microsoft ActiveX Developers Conference
 5月29〜30日に御殿山ヒルズ・ラフォーレ東京で「Microsoft ActiveX Developers Conference」が開催された。出席者をSolution Provider企業などの各社数名に限定し、米国 で開催された「Internet PDC」や他のカンファレンスの内容をMSKKの技術者が日本語で解 説するものであった。内容的には「ActiveX」に対するさまざまな技術の提示に終始し、早 く一緒に「ActiveX」対応製品を作ってくださいというプロパガンダが前面に出ているもの だった。あまりに早いマイクロソフトのインターネットシフトに現場の技術者はついてい くことができないというのが実感ではなかろうか。たしかに昨年12月の「Internet Strategy Day」に始まるインターネットシフト宣言から、わずか半年でNetscapeやJavaに対抗する 製品を矢継ぎ早に投入、あるいは投入表明するマイクロソフトのパワーには頭が下がる。 しかし、現実問題として今の展開を一年前に予想したソフト会社は非常に少ないのではな いか。とくに日本ではOLE 2.0への対応がまだ十分ではなく、Visual C++やVisual Basicな どの開発ツールの充実によって、ようやく気運が高まってきたと思ったら、あっという間 にインターネット、そしてイントラネットである。1Web年は3ヶ月という言葉も聞くが、 世の中の時間の進みよりも今の技術の世界の進歩はずっと早いようである。技術者のスム ーズな移行も必要だが、管理者の頭の切り替えも必要になってきているといえよう。

 マイクロソフトから、新しいツール群が続々と投入されてきている。
・Microsoft Internet Explorer 3.0 Beta-1 (日本語版・英語版)
・Microsoft ActiveX SDK (英語版)
・Microsoft ActiveX Control Pad (英語版)
・Microsoft HTML Layout Control (英語版)
・Microsoft Internet Mail and News 1.0 Beta-2 (英語版)
・Microsoft NetMeeting 1.0 Beta-1 (英語版)

 いずれもマイクロソフトの日本や米国のWebサイトからダウンロードが可能である。 最近は、アクセスが集中しているのか、あるいは集中したアクセスにWindows NT Server (Internet Information Server)が対処しきれないのか、ダウンロードが非常に困難になっている。 いくつかミラーサイトが用意されているが、アクセスの解消には効果がないようである。 いくつか試してみたが、日本語環境では動作しないものもあり、すぐに飛びつくことはで きない。日本語版が用意されているIE 3.0では、表示速度は著しく改善されている。日本 語環境では動作しないInternet Mail and Newsもかなりの性能が期待できる。
 毎度のことだが、今回の「ActiveX」にしても情報は米国で発信され、ツールも当然の ことながらまず英語版が投入される。カンファレンスで話を聴いていても、技術的に素晴 らしいものであることは認めざるをえないが、日本語環境のサポートがいつでも問題にな ってくる。IE 3.0のような主要ツールは、ドイツ語版やフランス語版と同時に投入されたが、 他のツールの対応の予定は不明である。今回いくつかの英語版ツールのダウンロードの際 に、アジア・オセアニア圏のミラーサイトに韓国・香港・オーストラリア・ニュージーラ ンドが用意されていたが、当然のことながら日本は含まれていない。インターネットの世 界では英語が標準語ということを考えても、日本だけが鎖国状態ということになりかねな い。マイクロソフトだけに限らず、他のインターネット関連ベンダーも同様の状況が続い ている。

 ActiveXとは直接関係ないが、BackOffice関連製品として、Exchange Serverの日本語版 の発表が会報が配布されているWWE96の会場で、6月26日にビル・ゲイツ氏によって行 われる。製品の出荷は7月末ということだが、最近Exchangeに関する引き合いが増えてき ている。もちろん製品投入が大幅に遅れた余波もあり、Lotus Notes R4Jとの製品比較とい う点で、企業ユーザーの注目を集めている。開発者にとっても、Visual Basicによるフォー ム拡張という点で、技術的にチェックしておく必要がある。マイクロソフトもロータスも、 当然自社の製品が優れているというホワイトペーパーを出しているが、競合というより協 調していくような気がする。
 SQL Server 6.5 日本語版ベータリリースの配布も開始された。性能向上が著しいとある が、すぐにオラクルが自社の製品の優位性を訴えた。しばらくの間競合製品間での綱引き が続きそうである。

(3) OS/2コンソーシアム総会
 Windowsコンソシアムの会報に書くのもおかしな話だが、5月29日に新橋第一ホテル で「OS/2コンソーシアム総会」が開催された。記念講演の中で、IBMの有名なプレゼンタ ーであるデビッド・バーンズ氏が次期OS/2「Merlin」のデモを行った。画面のイメージは、 まさにMacintoshであり、Windows 95であった。音声認識機能の搭載など、先進的な機能 もたくさんあったが、噂では日本語版でのサポートから外れるという話もあり、製品版の 出荷まで予断を許さない。Win32との統合API「DAPIE」についても説明があったが、ロ ータスが近い将来に出荷する次期Lotus WordProなどでは、DAPIEを利用したアプリケー ション開発を推進中で、Win32版とOS/2版がほとんど同時に出荷されるということであっ た。昔からのしがらみでWindows版とOS/2版を出荷しているソフトウェア製品も多いが、 一つのアプローチであることは確かである。

(4) Novell BrainShare 96
 6月12〜14日にホテルニューオータニで「Novell BrainShare 96」が開催された。Novell NetWare製品を中心としたカンファレンスだが、当然キーワードはインターネットとイン トラネット対応であった。Novell Directory Service (NDS)を中心に企業の中でファイルおよ びプリンタ・サーバーとして絶対的なシェアを占めていたNetWareが、Windows NTに地 位を奪われようとしている。ノベルの危機感は相当なものであり、遅れてしまったインタ ーネット・イントラネット対応を急いでいる。

(5) 所感
 主要ベンダーのカンファレンスを続けて聴く機会に恵まれたが、インターネット・イン トラネットという話がほとんどである。ただ、最近とくに感じているのは、マイクロソフ トやロータス、ノベルといったPCソフト業界を牛耳ってきたベンダーがインターネット対 応を声高に叫んでみても、彼らの主力は数多く抱えた企業ユーザーにいかに自社製品を継 続して使用してもらえるかという点にあり、イントラネットへの対応は既存顧客の膨大な 資産を活かし続けるために注力されている。IBMなどのPCハードベンダーはNCという新 しいインターネット対応製品の投入を表明しているが、企業ユーザーの携帯端末としての 機能がいかに充実するかを注目したい。Windows 95を主力にするホームユーザーに関して は、ゲーム市場との兼ね合いはあるが、今後の市場性という点でもNCが取って代わる可 能性は大きい。しかし、絶対的な市場の大きさはやはり企業ユーザーの比ではない。
 ソフトウェア会社にとっても、市販製品の投入やソリューション解決の方法の選択肢 が非常に多くなってきている。社内のネットワークが社外と接続され、新たな環境の中で ユーザーの要求に応えていかなければならない。逆に言うと、チャンスがさらに増えてき ているといってもいいだろう。セキュリティの問題など、現状ではまだまだ解決されてい ないことも多くあり、今後の課題となってくる。
 最近のインターネット騒ぎを振り返ってみても、企業ユーザーを対象とした従来から の枠組みを踏襲することだけに注目すれば、見方も変わってくるのではないか。インター ネット・ビジネスという新しい世界が開かれることは確かだが、企業の情報システムとい うもっとも大きな市場を相手に仕事を続けていくことだけに専念しても、やらなければな らないことはまだまだたくさんあると考えればいいだろう。

(6) 最後に
 情報交換のためのメーリングリストを開設しようということで情報を掲載したが、登 録状況はあいかわらず芳しくない。「Windows View」の読者が一定しないという原因は先 月号でも触れたが、今回はきっとWWE96での配布があることに期待して、新たな読者の 目に触れることを望んでいる。とりあえずもう一度掲載するので、関係者へのアナウンス と登録・投稿をお願いしたい。

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富士ソフト株式会社 技術調査室 室長
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