最新Windowsソフトウエア事情(第16回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄  


囲碁へのあこがれ

 私はパソコンソフト中心の研究(趣味の世界?)をつづけているが、もともとは41年一橋大学商学部卒のいわゆる文科系のバックグランド人間である。大学の同期生のほとんどは銀行、商社などの大会社に就職した。末は社長か頭取かと期待し、子供の就職口は彼らにまかせればよいと確実な期待をもっていた。しかし時代は変わった。50半ばに近づいた彼らにとってリストラの風が厳しく吹き付ける。軟式テニス部の仲間の大半は第二の会社勤めに変わった。おかげでこの超氷河期といわれる就職難の中、多摩美の油絵科を卒業した我が娘はつづいて新たに版画の学習をつづけるという恵まれた学生生活を継続することになった。PhotoShopやIllustratorなどのパソコンソフトの手ほどきは十分にしたつもりだったのだが。
 さて、大学にも定年がある。ずいぶん前から定年になったら暇の時間を持て余すのではないかと心配していたが、それも10数年先に近づいた。本欄ですでに紹介したように私は今年末には山へ引っこむ。暇な時間は甲斐駒でも眺めてくらせばゆったりと時間が過ぎていくのだろうが、それでは「ボケ」が心配になる。ボケ防止策の第一は頭を使うことである。しかしいまさら難しい本を読むつもりもない。そうしたときにこれまで何度か挑戦して結局ものになっていない囲碁の学習を再開するという戦略(!)が頭に浮かぶ。もちろん、囲碁と並んで将棋もある。将棋界の天才、羽生は八王子郊外に実家がある。私は彼の実家と同じ住宅地に住んでいたことがあり(1ブロックと離れていなかった)、しかも我が息子は彼と小学校が同期であった。その上、私はその小学校のPTA会長までつとめていた。しかし、先を見る目がなかった私にはそんな天才が身近にいるとは想像すらできなかった。世が世ならば天才羽生の手ほどきを受けて将棋の世界に老年を送ることもできたのにと悔やまれる。
 さて、話を急ごう。結論からいえば(どうでもよいことだが)、囲碁学習を再開することにした。実は(またか!話が長い)だいぶ前に囲碁学習用の本や定石辞典などの文献を山ほど購入した。しばらくは囲碁文献中心の研究生活を続けたものである。写真はその残骸を山積みした様子を示している。そしてその中には「松下電器製、ナショナル携帯用電子碁盤」などというのもある。これはオプションの定石集も含めて8万円した囲碁学習機である。保証書を見ると昭和59年とある。10数年前のことである。こんな文献や学習機を使いながら学習したのであるから現在の囲碁の腕前は少なくとも段に近いレベルだと推測されるだろう。しかし、残念ながらパソコンソフトの研究が忙しくなってしまい、いまだにハンディ36である(おっとゴルフの話ではなかった)。

 

 囲碁学習を再開するにあたってそうしたかび臭い学習書や囲碁学習機を取り出すことも考えられる。しかし、パソコンソフト研究を飯の種とする私にとって囲碁ソフトを探索することは当然の道かもしれない。その結果として「デビッドフォットランドのAI囲碁5(アスキーサムシンググッド社)」にいきついた。このデビッドフォットランド氏についてはまだ面識がないが、羽生とならぶ囲碁の天才なのだろう(もしかして外国人?)。話はまたまた変わるが、私は日本ゲーミング&シミュレーション学会の理事の一人である。この学会はパソコンソフトウェア協会の支援を受けて運営されている学会であり、その中心テーマはゲームである。私の関心はビジネスゲームであるが、もちろん、囲碁、将棋も学会のテーマに含まれる。そういえば、学会の全国大会で将棋の女性棋士(林葉 直子さん)を招待したこともある。そして学会理事の一人である光栄の襟川社長は昨年からパソコン用の囲碁ソフトを集めた大会を始められた。上記のソフトもいずれはこうした大会などをきっかけとして人間の有段者にも負けないような囲碁ソフトが登場することになるのだろう。

<図1>

 ここでようやくパソコンソフトの画面例が登場することになる。図1はAI囲碁の画面例である。このソフトはWindows95対応の32ビット版という最強力なコンピュータ対戦型囲碁ソフトであり、まともにぶつかったのではとても私の手には負えない。図のように9目置いて何度か挑戦したが、その都度、とても勝ち目がなく「こいつめ!」と怒って途中で新規ボタンをクリックして最初から打ち直したものである。もちろん、設定メニューのレベルを選択すれば弱い、標準、強い、最強の4段階から選択できる。「弱い」ですがこの有様なので定年までの準備どころか、定年すぎてからもまだまだ挑戦欲をあおってくれそうである。

<図2>

 AI囲碁は人間対コンピュータそして人間対人間の囲碁を楽しむことができる。途中の経過は手順として記録され、いつで途中経過を再生できる。また、「待った」をかけて一つ前に戻ったり、時間や揚浜の表示もできる。図2は適当に対戦した途中までの手順を示している。画面右側に手順がリストされ、盤面には直前の手が番号で示されている。また、画面上段の左右のボタンをクリックすることで手順を戻したり、再生できる。

<図3>

 囲碁を始めたばかりに等しい私にとって19路盤でプレイするのはおこがましい。9路盤がよいところである。さっそく設定メニューの盤の大きさによって9路盤に変更してプレイ再開したのが図3である。図ではファイルメニューが示されているがその中の印刷プレビューを使うと戦いの経過が見れる。図4はこのプレビュー画面である。黒から打ち始めて途中までの経過が番号入りで示されている。もちろん、印刷ボタンをクリックすると図5のように見やすい形で試合の経過を記録でき、ポケットなどにしのばせておけば車中などで試合のレビューが可能となる。

<図4>

<図5>

 10数年前大金を投入した囲碁学習機も書棚の飾りにしておくだけではもったいない。そこに含まれる数多くの定石や詰め碁のソフトをなんとか生かしたい。また、NHKの趣味講座のテキストにもさまざまな棋譜が示されている。このように特定の盤面から定石や詰め碁の学習をするには途中の盤面を入力し、そこからプレイを再開できるようにしたい(人間対人間を選択すれば仲間と対戦できるし、また、自分で黒、白の石を置いていくことができる)。そのためには対局メニューにある「盤面編集」を使えばよい。

<図6>

 図6は13路盤の上で囲碁学習機に添付されている「わたりの定石」の問題にそって盤面に石を置いた様子を示している。これで対戦画面に戻ると実際のプレイができ、問題が「手番:黒」であれば「黒番にしますか」に対して「はい」と答えれば黒番から再開できる。

<図7>

 図7は再開された対戦画面上で「わたり定石分類番号309」に挑戦しているところである。このようにして「AI囲碁」を手に入れた私にとって定年後の生活は足りない時間に追われる毎日になることが確実になったのである。

(筑波大学 大学院 経営システム科学 教授)  

奇獣彫刻、神話空間への招待(その2)    
文教区窪町東公園カイザースラウテルン広場にて

「シカの頭、像の足、イノシシの尾、そのほかは馬。        
牛のように太く低い声を出し、1メートルもの黒い角が頭の真ん中から
突き出ている。そして生け捕りにされることはない」。       
古代ローマの博物学者、ブリニウスが記した一角獣(ユニコーン)。 
ヨーロッパで生まれたこの空想上の動物がこの広場で見られます。  
高橋先生をお訪ねになった際には、是非ご覧下さい。        
まぶしい新緑の中、しばし神話の世界への旅をどうぞ。       


    Contents         Windows Consortium ホームページ