ソフトウエア流通便り(第13回)

カテナ株式会社


インターネット・リテラシー

 3月は統計ではパソコンが最も良く売れる月である。年度末に際し、法人需要や個人的にも進入学や異動で一つの節目を迎え、例月以上に需要が見込まれるからだ。今年の3月は史上最高の85万台以上が予想されている。そして95年度の国内出荷台数も580万台の見通しと言われている。それでもわが国のパソコンの普及率からみれば20%にも満たない。しかしこの数字と勢いから見て、いまや“臨界点”を超えて、嘗ての自動車やテレビのようにパラダイムシフトとも言えるように、近いうちに一気に日本国民の半数近くにまで普及していくだろう。そしてパソコンの普及以上に、この1年間で燎原の火の如く広がったのがインターネットである。今や社会現象として、様々なシーンでこの言葉を見聞きしない日はない。この異常とも言えるインターネットブームに関し、少し触れてみたい。
 現在のインターネットで何ができるのか?曰く、

@「情報の収集が簡単」:これはインターネットの発生が学術機関間の情報交換からスタートしたものであり、巨大なデータの宝庫が無料でしかもどこにいても手に入れることができるという重宝なサイバースペースである。
A「企業、個人情報の広報手段」:としていまや企業の顔としてその企業のプロフィールだけでなく、一見業態とは関係ないイメージ広報誌の趣で各社がホームページの中味に腐心している。いまやホームページを持たない企業はその分遅れていると思われてさえいる。
B「電子商取引空間」:今や常識となったWebサーバー上でのヴァーチャル・ショッピングモールなどは代金決済の問題やセキュリティさえ確立さえすれば年内にも市民権を得るだろうし、いずれ近いうちにはソフトのサポート情報はWebサーバーで、商品の体験版などはFTPサーバーでユーザーとのコミュニケーションは電子メールでやりとりするのが普通になるだろう。そしてFAQを充実させればユーザーにとっても、開発側にもメリットはあるし、ユーザーフォーラムが次のビジネスのヒントさえ提供してくるだろう。
C「商品開発」:ユーザーの意見を整理、分析すれば次の商品開発へのフィードバックになり、フォーラムを通じて製品(ソフト)のシンパが増えるという、言わば口コミの効果は侮れないものがある。
D「社内外のネットワーク」:最近の企業の傾向として、硬直化した組織構造を風通しよくして、よりシンプルにフラットにするために社内電子メールの活用が浸透している。メールに始まり、C/Sシステムやシステム開発にインターネットを活用する”イントラネット”こそ次世代の企業内ネットワークと云われている。
E「仮想企業」:インターネットを介してばらばらに存在する個々の業務をあたかも一つの企業体として機能させることさえ可能となる、等など。インターネットはこれまでの物理的、時間的な制約を一気に覆えすほどの世界をもたらすほどの可能性を秘めると言えばやや大袈裟か。

 このインターネットの世界にも自ずと最低のルールがあることも私達は忘れてはならない。まず受け手(ユーザー)が望みもしないのに、情報発信者が勝手にダイレクトメールを送りつけるような無粋なことは控えなくてはならない。インターネットはユーザーがその情報を自ら求めるものだけを、居ながらにして手に入れられるところに醍醐味があるのである。この節度は最低守りたいものである。
 新たなホームページ開設の案内は毎日の新聞でも記事となり、いまやURLアドレスは名刺代わりで、イエローページや解説書も溢れるほど出ているし、HTMLが簡単に書けるソフトも幾種類もある。
 要するに、今すぐにはビジネスになりそうもないインターネットだが、何か参加していないと取り残されてしまうのではないかという脅迫のような雰囲気がパソコン業界だけでなく、様々な業界で感じ始めているのが最近の社会風潮である。それをマスコミが煽るからなおさらである。ごく近い将来、電子決済は銀行やカード会社により実用化されるだろう。その時こそインターネットは大化けするだろう。その日のためにも今から著作権や倫理規定などの点では無法地帯とも言える現状を少しでも整備していかなくてはならない。
 新たな世界を拓くこと以上に、その社会のルールを作ることはもっと難しく、根気と手間がいる仕事である。私達パソコン世界に生息する者の最低の責務として、来るべきインターネット時代の掟を作ることを使命としていきたいものである。
今回はちょっと固い話で、僭越でした。

(流通事業本部 営業企画部 部長 佐野 英之)


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