特別寄稿

インターネット この1年


Windowsコンソーシアム特別顧問 石田 晴久

 インターネットは1995年から96年の1年のうちに一大ブームとなった。ネコもシャク シもインターネットという感じである。インターネットの発展ぶりは、次の比較で見てい ただけよう。

項目1994年末1995年末成長比(倍)
世界のホスト386万台947万台2.5
日本の加入組織1,7995,3353.0
クラスC割当て数6,72382621.25
プロバイダ数17社105社6.1
JPNIC会員数30組織96組織3.2
IAJ会員数89社132社1.5
パソコン通信ユーザー260万人370万人1.4

 ユーザー数の方はよく分からないが、ニールセン社の調査では、北米で2,400万人(う ち女性が34%)というから、世界中では5,000万人はいるであろう。ホスト1台につき、 ユーザー約10人という説からすると、日本のホスト数(ネームサーバーに登録されている コンピュータの数)は20万台というから、日本のユーザー数は、約200万人というところ か? この数は1年で倍以上に増えているから、2〜3年中には、日本でもユーザー1,000 万人時代がくるものと思われる。

図1 サーチ・エンジンの使用例(AltaVista)

 さて、インターネットの技術のうち、ソフトウェア関係に目を向けてみると、まずディ レクトリ・サービスに使われるサーチ・エンジンの発達がすごい。図1にInfoSeekやYahoo! による検索結果の例を示す。これらのエンジンで最もすごいのは、DEC社のAltavistaシ ステム【http://www.altavista.digital.com】で世界中のサーバーのテキスト部分の情報を 集め、全文検索法でキーワード・サーチを行っているという。

図2 ショッピングのできるホーム・ページの例

 図2のようなホーム・ページによるショッピングも盛んになってきた。世界中から、お よそ何でも買えるし、値段も安いのだから、こたえられない。
 昨年は、アメリカで実験的に行われているだけだった予約業務も今では、国内でも実現 され始めた。チケット・セゾンでチケットが予約できたり、ホリディイン・ホテルの宿泊 の予約、日産レンタカー(図3)の予約などができる

図3 日産レンタカーの予約の例

 こうした利用を行うときにみんなが使うのが、ブラウザと呼ばれるソフトだが、これは Windows95用が断然よくなってきた。新機能の開発という面では、UNIX用、Macintosh 用、Windows3.1用は完全に後まわしになっている。TCP/IP機能が標準で入っている Windows95はインターネット利用にも不可欠になった。
 Windows95用のブラウザにはいろいろなものがあるが、代表的なのは、Netscape2.0と マイクロソフト社のエクスプローラ2.0である。このうち先行しているNetscape2.0には、 それと連動するプラグイン・ソフトが次のように続々と開発されている。
 ・マルチメディア・プレーヤー
    マクロメディア社のSchockwaveなど
 ・オーディオ・プレーヤー
    プログレシブ・ネットワークス社のReal Audioなど(インターネット上のラジオ放送にも使われている)
 ・ビデオ・プレーヤー
    VDOnet社のVDOLiveなど
 ・VRML(仮想現実)ビューアー
    Paper Software社のWebFXなど
 ・MIDIプレーヤー
 ・画像ビューアー
 ・ドキュメント・ビューアー
    アドビ社のアクロバットAmber

 これらを使えば、音楽、ナレーション、ラジオ放送がインターネットで聞けるのはもち ろん、印刷物と同じ品質の文書や各種の写真やアニメーションが見られる。回線が速くて 混んでいなければ、簡単な3次元表示や仮想現実表示も画面に出てくる。原始的ながらビ デオ表示も可能である。
 さて、その上、昨年はサン・マイクロ社からJava言語の公開があり、これもあっという 間に世界に広まった。これはインターネットのおかげであり、そこには、普及のためクラ イアント・ソフトは無料でネット配信するという伝統(戦略)が生きているからである。  このJavaは、C++を改良したオブジェクト指向言語で、ソフトをコンポーネントに分け て開発でき、そのコンポーネントは、ネットワークで配信して組合わせて使うことが可能 という特徴をもっている。このJavaが本当に定着するかどうかはまだ分からないが、定着 する可能性はある。もしそうだとすれば、今後ソフト屋さんはJava抜きでは仕事ができな くなるかもしれない。
 いずれにせよ、インターネットのおかげで新しいソフトウェア市場が開けようとしてい る。本会員の方にも、がんばってほしいものである。

(東京大学 教授)

◇ 石田先生からは「Windows View Vol.9(95/2)」で『Windowsとインターネット』と題 し、寄稿していただいております。今回は、この1年間のインターネットの変わりように ついて書いていただきました。(事務局)


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