松倉会長の業界キーマン直撃インタビュー


日本オラクル株式会社 取締役 マーケティング本部長 新宅 正明氏を訪ねて

 今回は、紀尾井町のニューオータニ ガーデンコートに日本オラクル株式会社 取締役 マ ーケティング本部長 新宅 正明氏をお訪ねし、Windows関連のインターネット製品の開 発、マーケティング、サポートを中心にお話いただきました。

松倉 最近、御社もインターネットに大分力を入れているようですので、今日はインター ネット系を中心にお話いただければ、会員さんの方も興味をもって、ますます力を入れて いただけるのではないでしょうか。特に本誌を見ている方が開発の方が中心ですのでそこ ら辺をお話いただければと思います。

新宅 分かりました。よろしくお願いいたします。

松倉会長、新宅取締役

松倉 まず、御社の設立経緯をお聞かせください。
新宅 日本オラクル株式会社ということで法人的な活動はやっておったのですが、6年前 (1990年3月)に佐野(代表取締役社長)が着任して3人で事業をスタートしたというの が実態です。その当時はアシストさんにディストリビュータの契約をしていただき、デー タベース商品をVAXのVMS向けに販売していただいておりました。
 当時は、このデータベースがオラクルに対する売り上げの7〜8割を占めていました。 我々が設立したタイミングと同時にVMS向けのサポートはアシストさんを中心に継続し てやっていただいて、日本オラクルとしてはUNIXの製品群のプロモーションするという のが当初からの目的でした。低かったシェアをできるだけ早く世界並みにする、UNIXの データベースの中でできるだけ早く一番になる、という目標を掲げながらシェアを高く目 指して活動したというのが以降の5年間でした。UNIXになったときは、ライセンスあた りの単価は、VMSと比べて平均すると5分の1位まで下がったのではないでしょうか。そ れに対して、我々はサポートの仕方や販売の仕方で、間接販売をうまく利用できる仕組み を作っていくということで対応しました。当初からの代理店さんが今は140社位、また、 ビジネスアライアンスということでOEM契約してくださっているところが20社以上あり ますが、そういう会社さんを中心に我々のビジネスパートナーを構築してまいりました。 同時にアシストさんもデータベース事業部というところを作ってくださって(一番の稼ぎ 頭と聞いておりますけれど)、我々の主力パートナーとして契約を継続できたことは、我々 にとって非常にありがたいことと思っています。アシストさんには今日でも主力パートナ ーとして一翼を担っていただいております。
 今、申し上げましたように5年(実質は3年位ですが)かかってRDBMSのUNIXのシ ェアでトップにできて、つい一昨年の暮れからデータベースの領域をPC(インテル上の PC)に重きを置く部隊を作って、それを先端的にやっていく仕組みを作りました。このあ たりがPC(デスクトップデバイス)ビジネスのスタートというふうに考えております。タ イミングが良かったのか、悪かったのかというより市場に引っ張られていった感じです。 私どものお客さまの中でもUNIXのRDBにPCのクライアントをつないでクライアント /サーバーを構築するのが当たり前の世界になりましたし、サーバーもPCの廉価版で比 較的性能の上がったものが徐々に出てまいりました。まだまだ不足はあったわけですが、 そういう中で簡単に安く使えるオラクルということで、その時期にPCのビジネスに参画 できたわけです。今、我々にとってPCでのビジネスがどれ位の比率であるかと申します と、クライアント/サーバーを合わせて昨年はライセンスビジネスの20%、今年は25〜 30%になるかと思われます。主力プラットホームであるということは疑いのないような状 況になったわけです。
 従って、プラットホームとしては設立したスタートした時点ではVMS、それから5年か けてUNIXの世界ではNo.1のデータベースベンダーになろうとして頑張ってきました。 それと並行してつい2年前ですがPCをプラットホームとした製品群を充実してまいりま した。今はVMSのプラットホームは非常に少ないシェアになりましたが、それに代わっ てUNIXとPCが大きな2本柱で相対して持っているのが現実です。当社は5月が決算期 で、先週で丁度第三四半期が終わりましたが、去年、一昨年と引き続いて70%近い数字で 伸びさせていただいております。

松倉 Windowsを社内情報システムとしてどのようにお使いですか。
新宅 基本的には作業所(現場)まで全部ネットワークを広げたいと考えております。ところ が色々と他の業種と違う点が多くあります。現場といっても大きいものから小さいものまであ りまして、小さいものですと一人の工事長(責任者)が4〜5つの現場を見ているものがざらに あります。大きいものですと、20人位の配員がいたり、しかもそれがテンポラリーなのです。 工事が完成すると工事現場はなくなってしまいます。泡のように浮いたり消えたりする、それ に大小ピンからキリまである、ネットワーク化するといってもある一つのパターンを作ってそ れをワッと広めればよいというわけにはいきません。そういう意味で1台しか置けない所とか、 向こうの中がLANを組んでいてこちらとLAN間接続したい所とか、全然置けない所とかがありま す。置けない所でも会計処理等が必要ですから、拠点となる所で4〜5つの現場をまとめて処理 するなど、さまざまな形態をとることになります。それが物理的に見える方の特徴の一つです。 二番目の特徴は総合建築業(ゼネコン)というのは、物を作らないことです。サブコンといわ れる業者に仕事をする場を提供しているだけです。いってみれば管理業務です。最近ホワイト カラーの生産性をいわれますが、そちらの方の業務が多いのです。品質まで含めて、管理しな ければならない物の種類が非常に多いということは、情報システム部門から見ればアプリケー ションの種類が多いということになるわけです。そうすると、今までのDOSのコマンドラインの インターフェイスでは、いつもいつもその業務だけやるのならいいのですが、一ヶ月にいっぺ ん使うとか使わないとか、場合によっては着工時にしかいらないというものもあります。そうす ると次いつ使うのというときに、コマンドラインのインターフェイスでは、いちいちマニュアル を見ながらやるということはできないですよね。そんなことがあって、やはりGUIの方がいいよ ねという話しになったわけです。
 最初はOS/2のPMでアプリを作りましたが、なかなか開発ツールの問題もあって苦労しました。 そうこうしている内にWindowsがでてきましたので、社内標準としてクライアントはWindowsに しよう決めた次第です。

松倉会長

松倉 昨年のUNIXとPCの比率はどれ位ですか。
新宅 ライセンスでいいますと、UNIXが76%、PC21%で、残りは他のプラットホームで すが、まあ8:2といえます。今年は大体7:3を予定しております。この1割の増減はす ごく大きな話で、数の面で圧倒的に違います。数というのは単価が全然違いますから。も し我々がPCに参入せずにUNIXの高価格製品だけでやっていたとしたら、我々の今の姿 はなかったといえます。市場を先取りしたかというと、先取りはしてなかったと思うので すけれど、途中からは確実に市場をデータベースではリードできたと思っています。今思 うと、ギリギリのタイミングで早くなく、遅くなくて、ちょうどよいタイミングだったと、 振り返っております(笑い)。
 パーソナルコンピュータが進展したと一緒にサーバービジネスが出てきたわけですが、 サーバーもWorkgroup Serverという廉価版を出したと同時に売り上げがすっと上がって いきました。安くいいものを出せば売り上げを落とすということが、経営としての危惧で すけれど、数で稼ごうというわけで、今ではWorkgroup Serverがオラクルのサーバーの 中では大きなシェアをもっています。 PC上のWorkgroup ServerにはNTとNetwareが ありますが、去年とは様変りをしています。去年はNetwareが8割、NTが1〜2割、OS/2 は微々たるものでした。
 今年になりますと、第一四半期では6割がNTです。金額的にも、ライセンス的にもNT が圧倒的に伸びています。期間比で見ますとNT上のプラットフォームの製品群は約20倍と なっています。去年に比べ、今年はNTのクライアントも出始めましたし、NTのサーバー も比較的容易にお買い求めできるような形で出しております。従って、Windowsのクライ アントではなく、NTのクライアント/サーバーという取り組みが企業ユーザー中心によく 見られるケースです。それらに我々のNTのプラットフォームを引っ張てもらっているかな という感じがします。去年比20倍というのは我々にとっても非常に嬉しい話です。
 PC(インテル系のプラットフォーム)の伸びは、去年を1としますと、今年は2.5位です。 先程70%近く売上げを伸ばしているといいましたが、PCの売り上げが2.5倍、UNIXの売 上げがその分、50%を切っているというのが相対的なライセンスの売り上げの傾向になる わけです。従って我々のビジネスは非常にPCベースのプラットフォームに依存していると いうことは確かです。

松倉 製品群の種類はどうなりますか。
新宅 ここに他社さんが出された資料がありますのでご覧ください。

(図 Source:情報技術研究所 1995/12/26)

  NTとNetware上のRDBMSのマーケットシェアですが、NTとNetwareともOracle がいずれもトップをとっております。 NTは結構売れていますから、そこにビジネスアプ リケーションとしてバンドルされているのはもっとSQLサーバーかなと思ったのですが。 ある主力のハードメーカーさんの数字を見るとNTの出荷にともなうデータベースの出荷 の数は、SQLサーバーより格段にOracleの方が出荷数が多く、必然的に売り上げも多く なっております。数で勝てば間違いなく売り上げでも勝ちますから。これからもマイクロ ソフトさんのSQLサーバーとはよきライバルであり、よいポジションを占めていきたいと 思っております。これが更に増えるというより、市場規模が大きくなっていますから、SQL サーバーも伸びる、Oracleも伸びる、SybaseさんやInformixさんも伸びる、従ってユー ザーにとっては選択肢が広がることになると思います。我々は企業向けのサーバーの方に OracleがUNIXで入っていますので、企業がPCのクライアント/サーバーシステムを作 るときには、Oracleは選択しやすい環境にあったのではないかと思います。これからは、 上位のサーバーで行っていたと同じサポートをインフラや売価の全然違う製品群でどこま できちんとできるかということが、我々のチャレンジであると思っています。
 我々はマイクロソフトさんや他社さんに比べると経験が長いのですが、逆にエンドユー ザーやSIさんにとっては、いい物ができるか、いいシステムができるかは我々のサポート にかかっている所だと思っています。そういう意味でもう一度気を引き締めてPC版のサ ポートの体系を充実していくことが、我々の今年の大きな課題です。今でいいとは決して 思っていませんし、売れていけば売れていくほど厳しい評価を賜ることになると思います。 今はまだユーザーのお立場では我慢していただいている所があるかもしれませんから、そ のあたりにもう一度耳をきちんと向けて、いいサービスをやっていきたいと思います。そ のためにはそれなりの対価をちゃんといただかなければなりませんが。
 Oracleのこの領域における一番の強みは、大きなデータベースが運用できるとか、沢山 のトランザクションが処理できるとか、豊富な機能が沢山あるとか、いうことでなくて、 いかに簡単に安く取り入れられて、上位との整合性があり、マルチプラットホームでやっ てくれるというところが決め手です。これからの競争はサポート力ということになってい くと思いますので、上位のサーバーとは違った特色をここで打ち出してサーバービジネス をやっていく積りです。

松倉 製品の日本語化というのはアメリカでやっているのですか。
新宅 ベースの製品の日本語化はアメリカでやっております。あとは、クオリティを高め ていき、日本ではベータのテストの参画の段階から入って、出荷基準に達成したと判断し た製品を出していきます。優先順位がUSをベースにした企業と、日本をベースにしたお 客さまやパートナーで違うところがありますから、我々の製品の開発のために日本のエン ジニアが30人位向こうにおります。彼らの仕事は質のいい、日本のリクワイアメントに応 えた製品をできるだけ早く出すということが目標です。これは勝手に向こうに任せたので はうまくいくものではないですから、我々の責任において日本に組織を作り、開発の中に 入り込みます。とくに、NECさんや富士通さんはビジネスユニット、特に製品の開発のた めのグループを作っています。

新宅取締役

松倉  NTの評価はどうでしょうか。
新宅 昨年の前半と後半とを比べますと、Windowsプラットフォームを中心とした製品の開 発まわりのサーポートということで考えますと、サーバーとしてのNTのプライオリティ が非常に高く上がったという感じがします。当初NTが日本で出荷されたときには、日本 では評価されていましたけれど、USではマスコミも含めてクエッションでした。当時は 我々の製品のプライオリティも低かったですが、今はほぼトッププライオリティに近い段 階でNTの製品を出しております。NTもインテルだけでなくMIPS系やalphaやさまざ まなNTのオープンプラットフォームに合わせて製品を作っていこうと、開発部門はNTに 注力しています。我々の会社が注力しているということは、世界市場におけるNTの評価 がされ始めて、さらにNTの今後の進展に期待が集まっていることかなと思います。

松倉 NTは日本と同じ様にアメリカでも評価が高くなってきていますよね。
新宅 NTはベースのデザインがしっかりしていますから、クオリティとパフォーマンスな どが進展してくれば、より支持されるプラットホームになると思います。オラクルのいる 立場からみてもマイクロソフトさんのNTのベースプロダクト部門とは非常にコミュニケ ーションもいいですし、ツールにしても、サーバーにしてもお互いにいい関係で製品化に 協力している感じがします。

松倉 オラクルさんといえば、DBMSメーカーのトップというイメージでしたが、最近は エンタープライズ用のツールメーカーとしての活動が強い気がしますが。
新宅 設立されたときからデータベースのシェアをトップにしたい、PCを出したときも PCのシェアのトップになりたい、というようにデータベースが我々の右足の軸です。軸足 をはずすわけにはいきませんから、軸足を固めることを中心にやってきたわけです。もと もと我々の会社はデータベースやネットワーク関連の製品、それに4GLやCASEのよう なツールやアプリケーションといったそれぞれのレイヤーの製品を持っていましたから、 それらの製品を日本の市場の進展に合わせて、また我々の体力に合わせて徐々に出してい ったわけです。昨年にそれがいっせいに花が開いたということです。昨年は一昨年と比べ ると、まさしく大きな製品の数と質と変化をきたしたオラクルにとって大変記念すべき年 になりました。それは月間1,000近く出荷できるWindows系のDeveloper2000、 Designer2000やPower Objectsなどのツールを出せたということです。今まではUNIX 上のツールしかなかったわけですから。それから、年度後半にはOracle Applicationsとい う統合化したパッケージを出せたということです。これは年内にはNTへの搭載を検討し ておりますが、そういうソリューションのビジネスにも展開できたということで、データ ベースということをベースとして、それに関連する全ての製品群をネットワークという軸 と、開発の役に立つようなツールという軸と、アプリケーションという軸で今後も整備を 更に進めてまいりたいと思います。来年、再来年になりますと、オラクルのデータベース が持っているオラクルの中での売り上げのシェアが更に小さくなるのではないかと思われ ますが。

松倉 先週あたり米国オラクルさんから500$パソコンの発表がありましたが、御社のイン ターネットに対する取り組みについてお聞かせください。
新宅 インターネットはこの半年で大きく様変りをしたのかなと思っています。もともと はインターネットが出た当時から我々はネットワークの製品を持っているとお話しました が、その頃から分散系の企業ソリューションとは何なんだろうということが経営課題とな っていました。クライアントが今までのPC一本でいいのだろうかと、クライアントとい うのは企業向け、学校向け、一般コンシューマ向けですが、これらは決してPC一本では ないだろうと。インテリジェンスのあるWindowsまわり、今でいうとWindows95が搭載 されるPCが500万を越えて1,000万台、2,000万台年間出ることはちょっと考えられない だろうと、更にクライアントの量と質が拡大するためにはもっと違ったアプローチの仕方 がいるのかな、ということが検討されたわけです。そこでラリー・エリソン(米オラクル 社会長兼CEO)がネットワークコンピュータ(NC)というコンセプトを打ち出して、クライ アントサイドのデザインを一新したいと考えたわけです。そのデザインは比較的誤解を生 むところもあるのですけれど、クライアントは必要なときに必要なデータとプログラムが 稼動する、ネットワークからそれを持ってくる、格納すべきデータもサーバーが管理する、 バックアップとかそういうことを気にしなくてもよい、というような完全なものを作りた いというデザイン、アーキテクチャです。サーバーの方はデータを転送したり、管理した り、ユーザーの認識をしたり、バックアップを取ったり、アプリケーションを搭載したり する、こういうふうにしたらサーバーのビジネスがどんどん大きくなって汎用機がまた、 どんどん売れるのではないかという発想があったわけです。決して汎用機の話ではなくて、 アプリケーションが徐々にサーバーにきますから、三層的にいうとクライアント・エージ ェント・サーバーというような発想です。
 インターネットのビジネスの延長線上にシステムのインフラストラクチャーの発展があ って、PCとNCが共存しても当然いいわけですから、開発者及びリテラシーの高いユーザ ーが使うPCの高性能版と、単機能で充分満足のできるNCと共存ができてくれば、更に クライアント/サーバーコンピュータの世界がもっと広がるのではないかと考えておりま す。これはインターネットという言葉からNCとリンクさせて製品の体系を用意しようと いうものです。インターネットは我々から見ると企業のビジネスプロセスの変革をきたす 大きな可能性を秘めているものですから、銀行が銀行でなくなり、NTTがNTTでなくな ってしまう、それぞれの役分がバーチャルでできてしまう、我々にとっても変化を注目す るものです。
 インターネットを社内で見るイントラネット、一般的に広義でいわれているインターネ ットを社外で見るコンシューマに向けたインターネット、及び企業間通信のエレクトロニ ック・コマースの三つをデザインのターゲットに置いていますから、製品群もイントラネ ット、インターネット、エレクトロニック・コマースこの三つのセグメントに合わせなが ら製品を作っていく、この三つともOracle 7という我々のデータベースを核に持ちながら、 それとインターネットのテクノロジーと融合するためにOracleのWebサーバーを作って まいったわけです。これが我々の第一群の製品群で、まず2月20日にSolaris版を出して、 3月中旬にNT版が出てまいります。NT版のWebサーバー、あとはデータベースという 形になって出てきますから、3月から秋口にかけてWebの社内外でのトライアルが行われ ていくのを期待しております。もう150社以上に貸し出しを進めており、アプリケーショ ンのイントラネット版・インターネット版のショウケースのようなものが徐々にできつつ ありますから、電子コマースでないデジタルショッピングみたいな形でのインターネット のアプリケーションや社内のシステムでインターネットを活用したものが出てくるのでは ないかと期待しております。企業でいうと情報系(基幹系、勘定処理でない)の7割位の アプリケーションが新たにツールを使って作るというよりは、インターネットのテクノロ ジーで簡単に作っていくような環境がもう目の前にきたかなという感じがします。従って ブラウザーだけでなく、ブラウザーをかぶせるものがもっと出てくると思うのですけれど、 そういうオーサリングツールのようなもの、それからブラウザー、ネットワーク系のソフ ト、Webサーバー、データベースというような環境でBasic、SQL、C及びJavaなどの技 術を駆使されながら、そういう技術の組合わせがこれから開発者の皆さんにとって非常に キーのテクノロジーになってくるのかなと思います。オラクルとサン、オラクルとマイク ロソフト、そういうものを組合わせながら物作りに励まれるところが増えていくような気 がします。
 インターネットの業界では、これから通信の問題もあるでしょうが、ネットワークプロ バイダーの皆さんの淘汰が始まって、ただ単にネットワークをつなぎますという仕事では なくて、どういうサービスが提供できるのかというところがキーになってきて、限りなく 接続料金もゼロに近づくと思います。その中でどんなサービスをして、どういうアプリケ ーションを付加すればよいかをよく考えているネットワークプロバイダーの方と、我々の 一番最初に申し上げましたネットワークコンピュータの事業を一緒にやってまいりたいと 思っております。そこにはサーバーが置かれるわけですから、サーバーにはさまざまな企 業向け・家庭向けのアプリケーションが入って、NCがまた販売されているというような 構想で考えております。

松倉会長、新宅取締役

松倉 ソフトウェアの開発会社さんに対して、御社では今後どのような取り組み方をする のかお聞かせください。今、おっしゃったようにデータベース、インターネット関連など いろいろな各層で付加価値のアプリケーションを作る会社さんで違うと思うのですけれど。
新宅 我々が気をつけなくてはいけないと思っておりますのは、ソフト会社さんで我々か ら見る顔が我々の代理店さんという顔があることです。一つ目は、我々のシステムインテ グレーションを一つの素材としてお使いになられて、それをお売りになられているソフト 会社さんです。二つ目は販売のチャネルルートとしてお客さんの要請に合わせて流れてい る、商流としてのソフト会社さん、もう一つは、物をお作りになる際、大きく請け負われ た一部を作る、また、汎用的にミドルでエンドユーザーに近くより完全に我々の技術を使 っていただくためのツールを使っていただくソフト会社も沢山あります。
 これまでODGというデベロッパーズグループを作って情報提供しながら何等かのお役 にたてるような仕組みをトライしてまいってきております。今年は単に開発者グループと いう言葉で呼ばずに、今松倉さんがおっしゃったようにグループ分けした方がよいのでは ないかと、ニーズが全然違うような気がしています。ベータ版なんかいらないという所も ありますし、ベータ版がなければ困るという所、ベータ版さえあれば分かるという所もあ ります。バグであれば直すという前提で物が作られるわけですから、そういうことが許さ れるとか、欲しがられるグループと、完成された製品を早く出してください、それをベー スにユーザー向けに物作りをするのですからという所とは違うんじゃないかと思います。 使われる我々のコンポーネントも大分違います。例えば、Windows上にのるSQL Net、 Glue、ODBC、OLEという基本機能の中にそうような自社製品の試験をやっていただいて いるケースが沢山あります。OLEに対応していますよとか、Oracle Glueにのるアプリケ ーションですよとか、ODBC対応のOracleの製品の検証もありますとか、ある程度いろ いろな所でOracleのODBCのプロトコルの製品の対応をこうやっていますよとか、我々 からいったらウインドウズメントになるのですが、逆の。
 そういう意味で、もう少し開発者の世界に作法を学ばなければならない、どのようなこ とをしたらいいのか確認しながらプログラムをきっちとできたらと思います。これはどち らかというと今日のビジネスを生むということではなくて、いちいちそれに一般ユーザー と同じ対価をいただいたりするということではないと思うのですけれど。ある焦点を決め てそこに対してグループというより、ファンになっていただけるようなご支援をする、と いうことを我々の来年度の大きな課題としています。
 逆に皆さんからのご要請とか、こんなことをやって欲しいとか、オラクルに対してこん なことをするべきだとか、というお声を頂戴したいなと思っております。いちいち電話な んかの対応はいらない、会議室で早くやってくれればいい、電話でディスターブされるこ と自体が嫌なんだという開発会社さんがいっぱいあります。逆に「入れた質問に対して早 く事実を答えてくれ」と、「将来こうやってまして、このトラブルは何とか・・・」との返事 には「そんなことは全然聞いていない」という場合もあります。開発される方はいろいろ な所とお付き合いがあって分かっているわけですから。そのポイントで、今までのユーザ ーにお答えするものとは違うと、ちゃんと責任を持ったところが必要であると思っていま す。こうでないと我々の技術というのは結局手前勝手で自分だけは扱えるけれど、皆さん の養成技術としてはあまり大きくは花開かないということを、絶えず危惧を持っておりま すから。
 Webサーバーにしても我々PowerBrowserというNetscapeと同様、それ以上の機能を 持つブラウザーを出していきます。単に出しても意味がないわけで、これを可愛がってい ただいたり、Netscapeと共に使っていただいたり、というようなことを考えなければなり ません。そのための支援体制とか、そのための技術提供とか境遇ということを、昔のメー カーとの関係ではなくて(我々にそんなに力があるわけではないですから)、本当に横に 並ぶ対等の関係でグループを作っていきたいと考えております。上下でなく、我々みたい にプロダクトを作るメーカーと、ご使用になられるか、部品として作られるSIベンダーさ ん、その横にいわゆる第三勢力のようなものが大きく出てくるかと思います。Web、つま りインターネットの世界では明らかにこの層がないとメーカーはできませんし、エンドユ ーザーもできませんし、SIベンダーも力なしというところがありますから、ここを我々と しては対等の関係で技術の進展に寄与していきたいと思っております。

松倉 現在のサポート体制は具体的にはどのようになっていますか。
新宅 そサポートというのは契約でお金を頂戴している所に対するプログラムのバグをフイ ックスする対策を一緒にご援助して作り上げるような従来のカストマーサポートという体 系とは違うと思います。今は、会員会社向けにオラクル・デベロッパー・グループ(ODG) というグループを作ってサポートをやっております。そこの拡充が必要だということを今 申し上げました。拡充のポイントは「拡」・「充」ですけれど、必要なところを増やして いくことだけではなくて、もう少しグループの皆さん方のニーズ(一般的なニーズではな くて、セグメントされたもの、ネットワークのこの辺りをきちっと教えてくれないと我が 社の製品が作れないとかいうようなニーズ)に合ったものに対して明確なサポートができ る人も組織もいる気がします。ネットワークやツールのコアをお聞きになる開発会社さん の方が多く、データベースのコアのことを聞くところはあんまりいらっしゃいません。正 直にいって我々は、APIかネットワークといったところには、あまり目を向けていなかっ た気がしとり、反省をしております。インターフェイスとしては、我々にとっては今後重 要なところですから、他社に任せずに自からがネットワーク製品に中心に置きながらサポ ートしようと思っています。「拡」・「充」とはそういう意味です。

松倉 Windows95に対する御社のクライアント側の製品の対応は如何ですか。
新宅 95製品は全部やりましたし、従来の3.1の95のエンドーズメントこれも全て完了 しております。逆にいうと今後出てくる製品は全部95対応になりますから、3.1のお客さ まにご迷惑かからないようにするためにはどうすればいいのかと、心配しています。ツー ル等は32ビットベースで開発が進んでいましたから、32ビット対応はすぐできた状況で ありました。ODBCの32ビットをこの4月に出す準備をしております。
 Personal Oracle7などの比較的付加価値の高い製品が95で軽やかに動くようになりま したので、95対応の32ビット製品を出して開発者向けの環境を早く提供していきたいと 思っております。クライアント/サーバーも95が大きなターゲットです。日本の場合は、 特にNTも忘れられないのでNTのツールとしてCOBOLでの開発も進めていこうと思っ ています。

松倉 先週のデベロッパーズカンファレンスでの何か目玉商品のお話があれば。
新宅 開発者に向けたカンファレンスはこの2月にやって、次回は11月3日からサンフラ ンシスコで開催されるOracle Open World in United State(OOW)の中でODCカンファレ ンスが共催される予定です。今回はデベロッパーの方が3千数百名参加されて、中心とな ったアナウンスメントはラリー・エリソンから我々のデータベースの新しいものと、NC と合わせてネットワークコンピュータの話をさせていただきました。あとスコット・マク ネリ氏から、我々のWebサーバーとJavaの統合(コラボレーション)の話をして、それ からネクストコンピュータのスティーブ・ジョブス氏がマルチプラットホームにのるよう なオブジェクトベースの製品、WebObjectの発表をしました。他には我々の今ある製品の チュートリアルですとか、製品の紹介のプログラムがありました。その中で我々のインタ ーネットWeb関係の製品を見られる方や、グループウェアの製品を見られる方や、それこ そデータベース、アプリケーションを見られる方とかプログラムを見られる方が沢山おら れました。
 発信した情報としては、
@ ユニバーサルサーバーであるOracle7.3の出荷の開始。
A WebサーバーR2.0を発表。セキュリティの機能などを含めた新しいリリースのWebサ ーバーである。
B ネットワークコンピュータのプロトタイプの初めての実演(日本では6月)。ハードを ベースにオペレーティング・システムとアプリケーションの実演。これが最大の目玉。
C 開発ツールであるDeveloper2000、Designer2000の次のリリース(D/2000 R2.0)とオ ブジェクト指向の次のリリースSedona(コードネーム)の発表。
D 「Oracle InterOffice & Message Server」は、インターネットを利用した新しいオフィ スマネージメントツールとして、Oracleが提案するグループウェアの新製品でベータ版と して出荷待ち。
E 「Oracleのオブジェクト指向の製品戦略とOracle8」。来年の後半には製品はOracle8 の世界にエンハンスされていく予定。
この中で今日のビジネスにつながる製品は、「Oracle7.3」、「Web Server R2.0」であ り、明日のビジネス(夏〜秋)につながる製品は、「Oracle InterOffice & Message Server」 です。来年以降のビジネスにつながる製品が「Sedona」、「Oracle8」といえます。これ らをまとめたODC'96レポートは、3月15日に発行される予定です。

松倉 これからのネットワークコンピュータへの取り組みについてお聞かせください。
新宅 我々はハードを取り引きする術も知りませんし、ハードを得意とされる会社さんが ネットワークコンピュータを作ってくだされば嬉しいなと思っております。何社か参画さ れることは間違いないですから。あとはどれ位市場に受け入れられか、仕組みをきちっと 作らなければならないと思います。それがキーです。

松倉 うまくできればお客さんとしては数万円で端末を手に入れられるメリットは大きい のではないですか。スケジュールとインターネットが見られればたいていの仕事は終わっ てしまうのではないでしょうか。強いていえば、それに簡単なワープロがあればいいです が。使わないライブラリーなどがいっぱいあって、そのためにメモリーを多くするという のは、馬鹿らしいですから。
新宅 その発想自体はあたっている気がしますね。でもそれに合った製品を作れるかどう かですが。

松倉  この22日に行われるテクニカルセミナー「ビジネス・インターネット」では御社に も協力していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、長いこ とありがとうございました。

◇ 本対談では、新宅取締役から日本オラクル社の創設から、現在に至る発展経過及びこれ からのビジネス展開まで多くのお話をいただきました。本年度はビジネスインターネット をテーマに新たなビジネス展開をなさるとのことで、Windowsコンソーシアムも注目して 情報をお届けします。会員会社にはOracle製品のベンダーさんも沢山いらっしゃいますの で、本記事がお役にたてば幸いです。(事務局)


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