松倉会長の 会員会社キーマン 直撃インタビュー


清水建設株式会社 情報システム本部 情報システム部課長 横田均氏を訪ねて

 第1回目は、芝浦シーバンスS館にWindowsの大手のユーザーである清水建設株式会社情報シ ステム本部情報システム部基盤システム開発グループの横田均課長をお訪ねして、Windows導入 や、社内情報システムの構築状況、マルチメディアやインターネットへの取り組みなどについ てお聞きしました。

松倉会長、横田課長

松倉 Windowsを使っておられる会員のユーザーさんがマイクロソフトさんに色々とお話したい ことがあるのではないかというのと、またユーザーさんが実際にどう使っていらっしゃるのか を紙面で紹介したいということで、大手ユーザーである御社をお訪ねした次第です。
横田 もともとはコンソーシアムにユーザーとして入ったのは、当社は早い方だと思います。 もともとはWindowsに関する情報が足りなくて、コンソーシアムが提供するセミナー等からの情 報が欲しくて入ったのですが、最近は雑誌などで情報が溢れていますから、そういう意味での 価値は変わってきたかと思います。

松倉 御社のWindowsの導入状況についてお聞かせ願いたいのですが。
横田 基本的には当社は、ホスト、PCサーバー、クライアントという完全2層の形を取ってい ます。規模的にはサーバーがOS/2で200台、クライアントが全部で3,200台位でしょうか。始め たのは4年位前で、Windows3.1が出てすぐの頃と思います。

松倉 Windowsを社内情報システムとしてどのようにお使いですか。
横田 基本的には作業所(現場)まで全部ネットワークを広げたいと考えております。ところ が色々と他の業種と違う点が多くあります。現場といっても大きいものから小さいものまであ りまして、小さいものですと一人の工事長(責任者)が4〜5つの現場を見ているものがざらに あります。大きいものですと、20人位の配員がいたり、しかもそれがテンポラリーなのです。 工事が完成すると工事現場はなくなってしまいます。泡のように浮いたり消えたりする、それ に大小ピンからキリまである、ネットワーク化するといってもある一つのパターンを作ってそ れをワッと広めればよいというわけにはいきません。そういう意味で1台しか置けない所とか、 向こうの中がLANを組んでいてこちらとLAN間接続したい所とか、全然置けない所とかがありま す。置けない所でも会計処理等が必要ですから、拠点となる所で4〜5つの現場をまとめて処理 するなど、さまざまな形態をとることになります。それが物理的に見える方の特徴の一つです。 二番目の特徴は総合建築業(ゼネコン)というのは、物を作らないことです。サブコンといわ れる業者に仕事をする場を提供しているだけです。いってみれば管理業務です。最近ホワイト カラーの生産性をいわれますが、そちらの方の業務が多いのです。品質まで含めて、管理しな ければならない物の種類が非常に多いということは、情報システム部門から見ればアプリケー ションの種類が多いということになるわけです。そうすると、今までのDOSのコマンドラインの インターフェイスでは、いつもいつもその業務だけやるのならいいのですが、一ヶ月にいっぺ ん使うとか使わないとか、場合によっては着工時にしかいらないというものもあります。そうす ると次いつ使うのというときに、コマンドラインのインターフェイスでは、いちいちマニュアル を見ながらやるということはできないですよね。そんなことがあって、やはりGUIの方がいいよ ねという話しになったわけです。
 最初はOS/2のPMでアプリを作りましたが、なかなか開発ツールの問題もあって苦労しました。 そうこうしている内にWindowsがでてきましたので、社内標準としてクライアントはWindowsに しよう決めた次第です。

松倉会長

松倉 Windows95は使っていますか。
横田 95は使っていません。評価中です。なかなか苦戦をしています。3,200台の入れ替えもそ うですけれど、95の動かないマシンというのも沢山あります。486の33Mhzで200メガない位のハ ードディスクに95のOfficeを乗っけろといってもできませんから。メモリーを足してもやる価値 があるかどうかという判断もありますが。

松倉 今はクライアントにはOfficeが入っているのですか。
横田 WordとExcelを標準ソフトということにしています。多分、セレクトの契約も当社が1番 か、2番ではないでしょうか。ユーザーの方から端末の申請がくると情報システム部の方でア ドレスの確保や標準的なソフトとしてWordとExcel、オンラインソフトとしてCABINETを全部イ ンストールして、設置していくわけです。
 ここに抜き刷りですが、日経BP社さんの日経コンピュータ別冊に当社の電子プラットホーム を紹介する記事がありますので、ご覧ください。
 現場なんかもリースを組むとどうしても4年になりますが、現実には土木はともかく、建築の 場合は4年かかる現場というものはほとんどないものですから、必要な工期の間だけこちらか ら貸すという制度をとっています。そういったものには、標準的にインストールしたものを出 すようにしています。

松倉 生産性の向上という点ではどうでしょうか。
横田 ユーザー自身がだいぶGUIに慣れてきたことがいえます。昔だと変な所を触って自分が 欲しいデータが消えてしまったとかの電話がよくきましたが、最近はそばに聞く人がいるかも しれませんけれど、初歩的な質問というのはなくなってきていますね。

松倉 教育は少なくなってきたのでしょうか。
横田 いやいや、教育は相変わらずやっていますが、少し重点は実務者より上の方に移ってき ています。社長、副社長や重役クラスの教育も大体一通り終りました。
 生産性の向上という意味では、さきほどもいいましたが基本的に多品種少量の頻度というか、 アプリの種類が多くて使う回数が少ないという特徴がありますので、できるだけ共通のインタ ーフェイスでマニュアルレスでと、欲しいときに触ればそこから先は何とかなるというふうに ラインの人達に思わせることが一番大事だと考えています。

松倉 社内システム構築にはどういう開発ツールをお使いでしょうか。
横田 基本的には色々なツールを使っていますが、主力はPowerBuilderです。おそらく国内で は最大のユーザーではないでしょうか。60本位購入しております。その他、Visual Basicとか Cとか、最近ではボーランドのDelphiもやっています。部門としては130人位ですが実際に開発 をやっているのは50人位です。ホストの開発もやっていますので、Windows関係はせいぜい30人 位になります。他は運用面の担当です。私の担当している所は基盤システムの開発で、ここで はインフラ部分の部品を作っております。ネットワーク、データベースのあたりです。
 現在は、現場に対してWindowsクライアントで統一したネットワークにつながれた端末はせい ぜい200位です。もちろんスタンドアローンとしてはもっと出ていますが。ようやく内勤3,000に 対するネットワーク化が終わりましたので、これから現場向けに力を入れていきたいと思います。 現場数としては2,000位あるので、最終的に1500〜2,000の端末が出ることが予想されます。し かもそれがトップダウンで決まることではなくて、建設業では「俺の現場」という積りでいま すし、費用負担が定額ですからその金額にこの機械1台が見合うかどうかという判断は向こう がするという感じです。私たちはどちらかというと、市場原理で端末の付加価値を増やしていく という考え方をとっています。この1台を入れれば、これもできる、あれもできるというふうに すると、向こうがやってくれるのではないかと考えております。

松倉 現場の方が使い易いような魅力をだすということですか。
横田 そうです。私どもの組織では、まず十大都市に支店があり、その下の県庁所在地レベル に営業所があります。ここまでが常設の事務所です。その先はもう現場になってしまいます。 今年度中には全営業所のネットワーク化が終ります。私どもがやった方法は、ここでいってい るCABINET(Computer Aided Business Information NETwork)というのは電子メールですが、こ れだけではアプリとして魅力に乏しいので、先日作りましたのは、ホストアプリケーションと して過去の工事の実績を貯えているデータベースがありますが、これのWindows版の検索シス テムです。これらの抱き合わせ商法をやりましたらこれが割りと受けて(笑い)、1台の端末 でネットワークにより支店に置いてあるデータベースの検索ということもできるし、電子メー ルで社内のどこにでも送れるという形で段々価値が高まってきたのが理解されてきたようです。 もちろん他にも現場の災害事例(現場の事故)のデータベースの検索や、あるいは工程表を書 くためのアプリケーションなどを要求に応じて標準的に入れて出しています。そういう意味で アプリケーションの種類がWindows上で増えてきたのでネットワークの価値と一緒に受け入れ られつつあるといった状態です。

松倉 御社からみたWindowsの評価というのは、GUIが一番大きいですか。
横田 それにやっぱりノンプリエンティブだとはいっても複数のアプリが起きる所は大きいで すよ。まあ逆の評価は95では解決されているでしょうが。メモリーがないとか。

松倉 WindowsNTのWorkstationはどうですか。
横田 当社ではNTの採用は考えていません。というのは、OS/2をサーバーとして採用していま すが、その上で運用を自動化するような仕組みなどを沢山作っているのです。これを全部変え るほどの魅力がNTにはないよということです。データベースの夜間更新とかそういう所を全部 OS/2の汎用化したミドルウェアとして作って持っていますから、なかなか全部作り替える気に はなりませんし、現在OS/2で何等問題ないと考えております。

横田課長

松倉 Windowsで困ったこととか、こうして欲しいという所があれば。
横田 Windows3.1で一番まいったのはCD-ROMです。建築は写真とか、俗にいうマルチメディア ですか、そういったもののニーズが非常に高いのです。例えばある工法があってこれを自分の 現場でやってみたらどうなるか、ということを検討するわけです。そうしたら必ずそれの適用 された事例が知りたいということがでてきます。その事例は文章だけでは表現できませんから、 その工法をやっている所の写真が見たいということになります。建築の施工技術についてのデ ータベースではマルチメディアなしでは絶対できないですから。そうするとどうしてもデータ 量が膨大になって、しかもネットワークでは駄目だということになると、もうCD-ROMで配るし かないわけです。それがネットワークとバッティングするという状態になります。

松倉 ネットワークでは駄目だという理由はあるのですか。
横田 それだけのデータを送ってレスポンスの保証できないことと、データに対してそれほど のアップデートが要求されることがないからです。毎日のように建築技術は進歩するものでは ないですし、1年にいっぺんも更新すればいい方ですから。その辺で95に本当は行かずに済む のなら、行かなくてもいいのですが。95ではCD-ROMのバッティングの問題は解決していますか ら。折角CD-ROMが内臓している機械を購入しているのにそれをわざわざ動かなくしてネットワ ークに付けて出しているのですから、その手のものはしょうがないから95に行こうよというふ うに話をしています。今話しました建築技術関連の情報を検索するシステムは既にできあがっ ていますが、CDの問題がありますので支店レベルでハードディスクの中にデータを入れて止め ている状態です。これも評判がよくて、直ぐに欲しいという現場の責任者の方も何人かいる位 です。

松倉 御社のマルチメディアやインターネットに対する取り組みについてお聞かせください。
横田 CD-ROMにデータベースとして過去の事例を入れているのはもちろんですが、事例の比較 という点でも活用されています。例えば、集合住宅の間仕切り壁でのさまざまな工法やそれぞ れの長所、短所や、やれる業者名などを比較できるようにした一覧表にしたものもあります。 今でも次の現場に引っ越すときには紙にしたものを、こんなにいっぱい(両手を広げる)箱二 つ位にして持っていくのですが、そういうのをもっとスマートにCD-ROM3枚位のようにしたい ものです。(笑い)
 また、当社は神社仏閣の建築が得意であるためそれらの事例とか、また、半自動位に工業化 してビルを作る工法があってそれらを紹介する営業用のプロモーションビデオがあるのですが、 将来的にはそれらを全部CD-ROMに入れることを考えています。現場の事務所には得意先の方が 見えられることが多く、そういう時に話題になったらすぐ見せられるからです。今ですと電話 をしてビデオを取り寄せるなどの手間がかかることもありますので、それらを全部一緒に入れ てしまってどこの事務所にいっても見られようにしたいと考えています。これらは、95の評価 を待ってから実施したいと思っています。

松倉 インターネットはどうでしょうか。
横田 さきに、CABINETの方の話をさせていただきます。資料にあるように「業務に必要な電 子データを送るシステム」が基本的な考え方です。電子メールをやると、どうしてもメールを やりたい人だけがやり、やりたくない人は全くやらないという感じになってしまいます。楽に なった人だけが楽になり、やりたくない人がやらないという自由があるのかというと、そうで はないだろうと思います。当社の場合、現場は離れた所にあるのだから折角ネットワーク化し たらこちらから向こうに提供したいデータとか、現場から送らせたいデータはみんなとにかく ネットワークで運んでしまえという考え方です。オンライントランザクション処理みたいな仕 事というのは皆無です。別々の場所で、別々の物を作っているわけですから、本当に一個のデ ータベースを共有化して即時に答えが欲しいなんていう仕事はほとんどなくて、溜まったデー タの検索というのは確かに即時に見たいものですけれど、そうじゃなくて、「これやっておい て!」という仕事のやり方が非常に多いのです。最近、日経コンピュータなどでメッセージリ ンケージシステムというのが載っていますが、あの手の仕事が多いんです。そうしますと電子 メール的にいったん何処かへ貯えて、取り出し側も自分のペースで取り出してそのデータを処 理する、という格好がこの業界に一番向いていると我々は考えています。テキストデータの他 に、バイナリーデータも自由に送れる仕組みにして、なおかつ現場の責任者は非常に忙しいも のですから自分でやるとは限らないもので、事務のおばさんでも間違えなくそのデータを処理 できるためにはどうすればいいのかという所から、この話が始まったわけです。送ったデータ は送る側がどう処理したらいいか分かっているはずである、だったら「このデータはこう処理 して欲しい」と書いて一緒に送ってしまう(このプログラムで処理するということを一緒に書 く)ということにしました。それで向こう側としてはデータが来ていたら、何もしなくても「 ウン分かったよ」とやれば、その後はただ単に自動実行指定ファイルの印が付いているので、 受け取った方がPC取り込みボタンを押せば、全部自動的に処理してくれる仕組みになっていま す。他にも「アプリケーション・メールによる承認」という機能があります。現場の責任者の 上司というのは支店の部長クラスですが、現場での資材の購入に際しては部長の決済が必要で す。これもCABINETのアプリケーション・メールによって従来の書類のような形式で内容を確認 し、マウスのクリックだけで決済できる仕組みになっています。これらも共通のメールボック スを開ければ、全てのメールが見られるようになっています。
 電子プラットホームでは、メールオブジェクトという機能があります。これは、データとそ れを処理するプログラムを1つのオブジェクトとして送付し、受信データの後処理を自動化す る機能です。業務で扱う電子データが着信した後、そのデータを利用する業務システムで誤り が発生したのでは大きな混乱を招くことになります。例えば、現場から新たに購入依頼が来た 場合、当然過去のデータも見たい場合があります。メールの他に来たデータをアプリケーショ ンで見せるという工夫が必要になります。このメール(データ)はこのアプリで処理してくだ さいということを一緒に送る、そうすると受信側はメールを開けたら如何にもその書類のよう な格好で出てきた、ということができるわけです。このように、この業界に向いたようにメー ルシステムそのものをカスタマイズして徐々に広めていこうとしています。
 このメールシステムをインターネットと相互接続する、また、社内から来たメールはこの上 で見られる、あるいはこの上からインターネットに対して出せるという形での相互接続を7月 からやろうとしています。

松倉 電子メールを使用している人はどの位ですか。
横田 1回でも電子メールを出した人を数えてみますと、月100人のペースで増えています。今 はおそらく1,500人位になっていると思います。多分、歩留まりは7,000人位ではないかと思いま す。現場の事務のおばさんのように、受け取ったまま出さない人もいますから。さきほど言いま したように手軽に封筒でデータが送れるということで、私どもが建築の自社開発のCADシステム を現場に配っているのですが、やってトラブルがあって「ここがおかしいよ」という時に現場か らそのシステムの図面データが送ってくる、それ位のことは簡単にできてしまいます。
 こういう形でやっていますので、受け取った人は逆に封筒の中にこういうファイルが入ってい ますよというリストが見えてしまいます。拡張子がExcelの場合などはダブルクリップすれば簡 単に開けられるような機能も付いています。このキャビネット自身がどちらかというとランチャ ーでであるために、自分が小さくならなければなりません。特に、3.1の場合はメモリーがタイ トなので、自分の上にExcelのような大きなものが乗かってどうするんだという苦情が大分でて おり、小さくするための再開発を今Delphiで、やっている所です。
 昨今はメールシステムがあって当たり前といわれていますが、100人規模のメールシステムを 作るのはどっていうことはないですけれど、1000人、1万人規模のメールシステムを作るのは大 変です。運用のこととかを考えると非常に大変です。当社のメールシステムでは相手のメールア ドレスを知らなくてもいいようになっています。人事のマスターから情報システム本部の人間と やればバラバラと出てきますので、そこから誰々と選べばそれだけでいいわけです。ですから 自分でディレクトリみたいなものを管理する必要がありません。全社シングルドメインのシス テムですからメールをフォワードするとかいうことを全然知らなくてもどこの出張先でもこの 端末があれば見れることになります。ここら辺が社内では分かってもらえないみたいです。こ のように名前で相手を指定するのが当たり前と社内の人は思っているようです。NIFTYなどを やった人だけが違うねと言いますけれど。CABINETのベースになっているのが九州松下さんの 開発したPANAPIOSです。当社が独自に組み込む機能の開発に必要な情報が開示してもらえるこ とや、ホストで稼動することなどが選定理由でした。

松倉 コンソーシアムの活動についてどうお思いかお聞かせください。
横田 以前は技術情報の収集ということに関心があったのですが。コンソーシアムの活動その ものはどうしてもベンダーさん向けの所が色合いが強くなるのはしょうがないと思います。活動 の中身を見て選択して参加させていただきたいと考えております。

松倉 最近は会員さんからマイクロソフトさんの資料があまりにも英語ばかりなので翻訳して 配って欲しいという意見がよく聞かれますが。
横田 私どもは、というより私個人の意見ですが、さきほどお話したPowerBuilderは60本全部 を英語版で使っています。Delphiは日本語版が出るのが早かったので、日本語版を使っていま すが、若い連中には開発ツールなんて英語の方がいいんだよと言っているんです。ソースに手 を入れて日本語化すると、かえって英語版にないバグが出るんじゃないですか。ですから、で きるだけ技術資料は英語で読もうやと若い人には言っているんです。逆にPowerBuilderの値段 を見ますと、出た当時は75万円位していました。向こうでは確か2,800$位であったと思います 。わざわざ日本語化するために、ソースに手を入れるための人件費とマニュアルの日本語化の ために2〜3倍の値段になってしまいます。開発ツールなのですからユーザーが英語版でいいと いったら、向こうのに少しプラスαした位でどうして売らないのという気がします。そういう のをユーザーが選択できるようにしてもらいたいものです。アプリは別ですよ。アプリは日本 語化されていないと全然動きがとれませんから。開発ツールは限られた人間だけしか使わない のですから、英語版でいいじゃないかという気がしますね。

松倉会長、横田課長

松倉 そうですね。数も出るわけじゃないですから。WindowsになってからUSのアプリケーショ ン開発ツールも結構使えるようになったというのは大きいと思いますが。
横田 確かに大きいですね。

松倉 テクニカルセミナーとして、VBやVC++などをやっているのですが。
横田 今悩んでいる所です。悩みのネタは何かといいますと、OCXなんです。これが市民権が 得られるかどうかということが見えない、今の段階でOCXを作るというセミナーを受講すると いうことがいいのかどうか、ISVさんがいるでしょう。企業ユーザーがOCXを作るという話はあ りませんよね。OCXとしてどんなものが出てくるのか待って、我々としては使えるのを選んで いけばいいと考えています。

松倉 多分、ライブラリーが揃ってきたら、皆さんが使い始めるのではないでしょうか。
横田 そうですね。OCXがどうなるかということは、しばらく静観していて、今それを作る話 はしなくてもいいと考えています。例えばCrystal ReportsがOCXになり、VB4.0も出たのです が、我々としてはVB4.0の評価は高くありません、こんなことを言うとマイクロソフトさんに 怒られてしまいますが(笑い)、PowerBuilderを見ているとVB4.0でもまだ足りない感じがし て、あまり高い評価はできないのです。逆に今度はDelphiの次のバージョンではOCXを使える ようにするといっていますから、本当にいいとこ取りでCrystal ReportsのOCXをDelphiの上で 使うということもできると考えています。 PowerBuilderの次のバージョンもOCX対応ですか ら、そういう意味でしばらく静観しようとしています。いまセミナーのご案内をいただいても これはISVさん向けであって、自分達向けではないというふうに感じています。いま丁度過渡 期だと思っています。

松倉 OCXもこれからですよね。話が変わりますが、ソリューションプロバイダーという制度 はどうお思いでしょうか。
横田 よくご一緒する日経オープンシステム編集長の稲葉さんも同じことを言われるのですが 「オープンシステムというのは、ハイリスク・ハイリターンだと」と思っています。オープン システムを構成する部品はサーバー、クライアント、LAN OSその他沢山ありますが、それを自 由に選択するのがオープンシステムであると私は思います。ソースが公開されていればオープ ンだとか、そういう話ではありません。UNIXが本当にオープンかというと、A社のUNIXとB社の UNIXが違ったなら、選択の自由がないのですからオープンではないというのが私の意見です。 そうだとすると部品選択の自由を行使して気がついてみたら、世界中に当社にしかないという 組み合わせが有り得るということです。当社がもろにそうです。日本語のWindowsの上に英語 版のPowerBuilderを乗っけて、滅多に使ってないプリンタドライバーでこういうバグが出たと したら誰が悪いんだという話しになりますが(笑い)。問題を判別するだけの大きなリスクを 背負って、ユーザーに迷惑をかけないようにするだけの覚悟があるならどんどん進めた方がき っといいものができると思います。もし、それがそうでなかったなら、自分達がやり切れない とか、人もいない、力がないということだったら、私はISVさんやSIさん、SPさんの力を借り るのが悪いことだとは思わないです。ただ、そこから出てくる解が自分の会社にとってベスト な解だということは期待しない方がいいと思います。どうしても寄らば大樹の陰で、ここは Netware、ここはORACLEで、云々という組み合わせになりがちです。自分たちが提案する以上 実績のあるものを提案したいでしょうから。点数は高くないけれど、合格点のレベルをねらっ てやるのも一つだと思います。私どもは請負業ですからどうしても色々なベンダーさんとお付 き合いしなければいけないし、そういう意味では会社そのものもマルチベンダー指向が強いた め、だったら我々は社内でも立場を強化するためにも、その問題を切り分けて色々なベンダー さんとお付き合いできるようにするというのも、我々にとっていいことだと思っています。あ まり、そういう方々に丸々提案を持ってきてねという活動の仕方はしていません。その代わり コンポーネントを選ぶときは製品の性能だけでは決して選びません。それ以外に提案をしてく ださるベンダーさんの技術的なキーマンの方がどう自分達と応対してくれるかを大きな要素と して見ています。データベース、ネットワークのベンダー各社さんとお付き合いがありますが 、それぞれテクニカルなキーマンの方がとうてい自分たちの問題とは思われないことまで一緒 に追っかけてくれています。ですから、私どもは問題判別に非常に楽をしています。どちらか というと、独立独歩の考え方をしていますから。(笑い)

松倉 いえいえ。本来はそういう対応力がシステムビルダーさんやSPさんにも望まれるのでし ょうね。
横田 来年度は現場のネットワークの準備が全部終わって展開の始まる元年で、ここから3年 か、4年すると多品種のアプリがネットワークに流れる数がどんどん増えていって、現在に比 べれば大分変わったイメージになるのではないかと思われます。

松倉 2000年位ですかね。
横田 建設業でもISO9000を取らないと、公共工事の入札の資格がないとかの話が出ています。 そうしますと現場で作るドキュメントの数は多分今よりもっと沢山作らざるを得ないと思いま す。特に建設業の場合は管理するものの種類が多いですから、ものすごく大変だろうと思いま す。そこはCALS ― 全てを電子化してコンピュータでやる ― 概念を持ち込まない限りはでき ないと思います。現場の中にLANがあって個々の施工管理の担当者がLANにつながったPCで仕事 をしてノーツのようなもので処理することになるのでしょうか。建設業の現場の事務所という のは工事が終ったらなくなってしまいますから、それを保管する仕組みというのもまた必要で す。CABINETの中に電子ファイリングというものがあるのですが、どちらかといえばそうした 目的で作られております。
 これからのCABINETの将来計画として、クライアント/サーバーの見直し、ノーツの評価と 本格的導入、社内サーバーとインターネットを組み合わせたイントラネットの採用など、やら なければならないことがいっぱいあります。

松倉 テクニカルセミナーでも事例の紹介などが求められていますし、ビジネス・インターネ ット委員会の発足なども間近いので、是非ともコンソーシアムの活動にご協力いただけますよ うお願いいたします。長い間、ありがとうございました。

◇ 本対談では、横田課長の社内ネットワーク構築にかけたほとばしり出る情熱をひしひしと感 じました。紙面でその情景を少しでもくんでいただければ幸いです。
 清水建設株式会社情報システム本部の入会は90年8月です。同社は大正4年の創立で、平成3年 4月の芝浦移転を機に、本社社屋の随所には、建築文化を伝えるささやかな『社宝』が展示され ているとのことです。13階の展示コーナーを案内していただき、江戸城御本丸大広間御上棟式の 槌・打盤や文書類などを見せていただきました。小冊子『いすか』により各史料が紹介されて おります。

清水建設株式会社本社(芝浦シーバンスS館)


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